表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

405/592

灰土の特別な訓練から逃げ出せ 後編

 紫水とネルガルは何度も何度も灰土の目を掻い潜り訓練から逃げ出していたが、逃げ切ることが出来ずに灰土に見つかり続け、とうとう、灰土は2人から目を離すことをやめて、付ききっきりで監視を始めたのでした。


「これじゃあ〜、逃げれないよ〜!!!」


「ふん! ふん! 俺が今まで甘かった。だから! 残りの2日間はもう逃げることはできんぞ!」


 紫水がネルガルを抱きしめ、寝ていると灰土は隣で腹筋をしていた。


「近いよ〜、近すぎるよ〜。ネルガル〜起きて〜!」


「ん? 紫水、朝っぱらからどうしたんだよ」


 ネルガルは目を覚ますと、隣でものすごい勢いで腹筋を行っている灰土を見て、驚きはしたが、ネルガルはまた目を瞑った。


「朝から男の裸なんて見たくなかったし、男に抱きつかれながら眠れるようになった俺。もう一度寝よう」


「ネルガル〜! 起きて〜。これじゃあ〜逃げれないよ〜」


「俺は無。無だ。男に囲まれてるんじゃない。無を貫くんだ」


「何言ってるんの〜? はぁ〜。後2日は真面目に取り組まないとダメかぁ〜」


「俺は無」


「ネルガルも壊れちゃったし〜。灰土〜。今日は何やるの〜?」


「今日は筋力鍛錬だな。俺が考えた筋力鍛錬メニューを全て行ってもらう」


 灰土は腹筋をやめて、紙を取り出した。


 紙に書かれていたのは基礎的な筋トレメニューだけであった。


「なんだ〜。簡単じゃん〜」


「これを1万回だ」


「ん〜? 灰土〜、今なんて言った〜?」


「1万回だ」


「灰土さーん! 俺やっと成し遂げたぜ!」


 ライネルは前の日からこのメニューを行っていて、今さっき筋力鍛錬メニューを終わらせた。


「おー! ライネルこれを終わらせたんだな。それなら、ライネルはもう俺の訓練卒業だな。それに、花茶ちゃんから苦情が来ていてな。その、糸吹きさん! ライネルお兄ちゃんを返してよ! アお姉ちゃんがライネルお兄ちゃんがいなくなったせいで、お洋服のデザインが決まらずに花茶、ずっーと! お洋服をとっかえ引っ返されて疲れたんだから!!! ってな。花茶ちゃんも俺が知らない鍛錬を行っていたんだな」


「うげっ、俺はまだ筋トレしたいな」


「花茶ちゃんの為にも今日はア様の所へ行ってくれ」


「はぁー、灰土さんが言うなら、行きます」


 そうして、ライネルは1人で灰土の特別な訓練から卒業したのでした。


「俺もさ〜、この後予定があるから〜、卒業させてもらうね〜。俺の残りの分は〜ネルガルが全部やってくれるから〜。よろしく〜」


 紫水はライネルの後を付いて行こうとしたが、灰土に止められた。


「何言ってるんだ、紫水は卒業はまだだ。卒業はこのメニューを全て終わらせたらだな」


「無理〜!!! 1万回なんて無理〜!!!」


「おい! 紫水! 俺になすりつけて行こうとするな!」


 そうして、8日目の朝が始まった。


「逃げたいよ〜。疲れた〜!!!」


「ひ、ひ、干からびる」


「ふん! ふん! ふん! これしき、準備運動だ!」


 灰土は再び腹筋を始めた。


 紫水は渋々筋トレを始め、400回まではやったが、もう、無理と水球の中に引きこもってしまった。


「無理無理無理〜!!! 疲れた〜!!! 1万回ずつって無理だよ〜!!!」


「紫水! このメニューを終わらせない限り主人様に合わせないからな」


「主人様〜!!! もう、1週間以上会ってないよ〜! 寂しいよ〜!!! 主人様〜〜〜!!!」


 主人様は紫水が気になり花茶とこっそり訓練の様子を隠し見ていた。


「主人様、主人様、花茶も筋トレできるよ!」


 花茶は灰土の真似をして腹筋を始めようとした。


「洋服が汚れちゃうからだめよ。もう、紫水はずっと、無理しか言ってないわよね。まぁ、1万回は流石に引くけど、何度も逃げ出そうとしたんだから仕方ないわよね」


 すると、卒業したライネルが岩陰に隠れていた2人に気づいた。


「花茶に主人さんこんな所に隠れて何やってるんだ?」


「きちんと灰土の言うことを聞いているのか確かめに来たのよ」


「ライネルお兄ちゃん! お疲れ様!」


「おう! あー、紫水のやつ何度も逃げ出していたからな、真面目にやればそんなに辛くねぇのに逃げ出すせいで灰土さん余計厳しくなって行ったからな」


「ネルガルも一緒だったんでしょ。銀次と金色丸から聞いたわ」


「俺が知ってるのだと5回逃げ出していたが、多分、もっと逃げてたと思うぜ。まぁ、残り2日は灰土さんが付きっきりで2人を監視するみたいだから逃げようとはしないんじゃないか」


「まぁあんな至近距離で監視されちゃ逃げるなんて無理よね。それにしてもライネルが先に終わらせるなんて驚いたわ。私はてっきりネルガルが先に終わらすとばかり考えていたわ」


「あいつは基礎訓練はそんなに好きじゃねぇんだわ。魔王軍の訓練の時は槍の鍛錬ばかりで俺みたいに走り込みとかはあまりやってなかったからな」


「へぇー、意外だわ」


「まぁ、周りのやつらには気づかれないようにして、サボってたしな」


「あら、そうだったのね」


「そうだせ、それじゃ、俺は汗を流しに風呂に入りに行ってくるぜ」


「花茶も一緒に行くー!」


「私も家に帰ろうかな」


 3人は仲良く家に帰ったのでした。


 紫水とネルガルは灰土が近くにいても逃げ出そうと試みたが何度も失敗をして、最終的に10日間を超えて、15日目で特別訓練を卒業したのでした。


「もう〜、俺は〜、筋トレなんてしない〜!!! 全身筋肉痛で動けない〜!!! 主人様〜!!! 俺もう灰土嫌い〜!!!」


 紫水は主人様に抱きつき、地獄の訓練の話を1日中話したのでした。

ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
遂に達観したか~。そりゃあ、こんな状況では仕方ないよな~(笑) 草葉の陰で観ていたの?それとも野球少年のお姉さんみたいに樹の後ろから覗き見したの? 抱き着きの力が強くなったよね。1万回もしていれば…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ