テンサー
僕の名前はテンサー、貴族の父と小人の奴隷の母から産まれた私生児。そのせいで辛い目に会ってきたけど、僕は自分の才能を信じて国一番の魔道具技師になる事ができた。が、僕をバカにする連中は沢山いる。僕の魔道具の価値を知らない馬鹿どもが僕の価値を食い荒らされ、僕は5年前に店を作った。僕の価値を守るために、僕を尊敬してくれている弟子達の為に。
この国は腐っている。感情、知能がある種族を下に見て人間こそが至上のこの国。あー、本当に気持ちが悪い、貴族も腐り、あの勇者教すらも腐っているこの国はいずれ僕が何もしなくても滅びるに違いない。でも、僕はこの地獄の中で生き続けなければいけない。
その時に僕は国を滅ぼせる魔道具を作ることに決めた。だけど、手持ちの魔石で魔道具を動かせる力はない。もっと、純度が高く莫大な魔力量の魔石が無ければ起動する事すらままならない。改良を重ねるにも動かす為の魔石が必要だ。
僕は魔石鉱山を片っ端から調べた。でも、この国付近の鉱山は全て取り尽くされている。亜人種の鉱山は危険なだから手が付けれない。ましてや、魔王と名乗る人物が勝手に採掘をしていた貴族を殺した。そんな危ない奴と戦う気はない。
そんな時だった。彼が現れたのは、彼が持つ魔石は今まで見た中で高純度、高魔力量の魔石だった。
なんとしてでも、その魔石が欲しかった。でも、彼は僕の弟子達の作品を粗悪品とののしり、2個だけ置いていた僕の作品を見ただけで言い当てた。その時、僕は彼なら僕を理解してくれるんじゃないかと考えた。それに、僕に初めてのライバルができたのではないかと、ワクワクもした。
僕は工房でガメツイに申し訳ない提案をした。
「ガメツイ、君の給料払えなくなりそうだけどいいかな?」
ガメツイは平気な顔だった。
「はい、私はきちんと貯蓄しているので一月分の給料が無くても大丈夫です」
「ありがとう。絶対にあの魔石は僕が買い取らなくちゃね」
「あの彼を大層気に入ったのですね」
「だって、彼は絶対に何かを隠している。と僕は思う。それに、なんだろう、ワクワクするんだ」
「そうですか、久しぶりに坊ちゃんの喜ぶ顔が見れて嬉しいです」
「ガメツイ、そろそろ、その、坊ちゃんをやめてくれないかい? 僕と同い年だろ」
「いえ、それはできません。坊ちゃんは坊ちゃんなのですから」
「それ、僕にとってイジメだと思うんだけどなー」
「それを言うなら、私にこの名前をつけた坊ちゃんが悪いのですから、どっちもどっちではないでしょうか」
「うげっ、まだ、気にしているのかよ」
「奴隷の私を買って頂いたのは嬉しいですよ。ですが、この名前の意味を知ったら嬉しくなんて無いですよね。名前をもらった時の感動を返して欲しいぐらいです」
「そうだねー。僕も悪かったねー。だって、僕の大切な母さんの思い出の本を売ろうとするんだもんなー」
「あの時の坊ちゃんがお金に困っていましたら、仕方ないことではないですか、それに、私はきちんと買い戻したじゃないですか」
「それでもなー。やっていいことと悪いことってあるよなー」
「ごっほん、それで、彼は明日やってきますかね」
「やって来るさ、僕以外にあの魔石は使いこなせないからね。多分、彼の場合だと、何店舗か店を回って魔石の取引価格を調べるんじゃないかな。そして、最終的には僕の店しかないと結果がでる」
「そして、提示された額で買い取るという事ですね」
「うん。流石に金貨1万は言ってこないと思うけど、一応、そのぐらいは準備しないとね」
「またしても、金不足になってしまいましたね」
「仕方ないさ、僕の復讐の為なら無一文になってもこれを完成される」
僕は黄金に輝く鍵を手に持った。
「さぁ、明日の為にも、僕はもうそろそろ寝ようかな。それと、あの3人は解雇しといて」
「かしこまりました。傭兵と言ってもただの見掛け倒しの荒くれ者、メイドにやられるなんて雇う必要がなかったぐらいですね」
「いや、彼女が強すぎるんだと思うよ。それじゃ、あとはよろしく」
僕は工房の隣部屋にある僕の寝室に向かい。ベッドに横になって僕はいつの間にか眠った。
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