取引 前編
私は主人様との図書館デートを終え、目が覚めました。あーあ、なんて素晴らしいことなんでしょう。主人様と2人きりになれる時間を確保できるなんて、しかも、これからも何度も会うことができる。私は今、最高に幸せです!
「ふぁーあ、あ、藍介さん! おはようございます!」
黄結姫さんが飛び起き、私達は身支度を済ませて当初予定していた魔道具店巡りを開始しました。
最初の店で主人様の魔石を見せると金貨10枚と提示されました。うーん、微妙ですね。次に行きましょう。次のお店では金貨3枚。ぼったくろうとしてますね。3店舗目では、この魔石の出所を言わせようと男達に囲まれましたが、黄結姫が男達を倒してくれたのでもうあの店には行かないことを決意しました。
4店舗目では金貨20枚の提示され、ここは良さそうな店だったので、主人様の魔石ではなく、主人様の結魂したことによって得た魔石生成を使い、私の魔力で作った魔石を売りました。金貨5枚程で売れましたね。やはり、主人様と私の魔力では魔石の純度に違いがあるそうで、主人様との差は歴然でした。鍛錬すれば純度が上がればいいですが、このぐらいの魔石でも金貨5枚を貰えるのですからこのスキルのおかげでお金の心配はしなくて良さそうですね。
その後も10店舗を巡り、最後に行き着いたのは、やはり、昨日行ったあのお店でした。
「藍介様、このお店に戻ってきちゃいましたね」
「まさか、ここまで魔石の価格が店によって違うとは思いもしませんでしたよ。私はてっきり魔力量に応じての価格設定があるとばかり考えていましたよ」
「バラバラすぎてどのぐらいの価値なのかよくわからなかったです」
「やはり、テンサーさんの店が一番マシでしたかね。4店舗目は良かったですが、販売されている魔道具は魔力量がかなり少なく使い切りの商品が多かったですね。魔道具は使いきりよりも、長く使える方が良いと私は思うのですよ」
「それで、藍介様、お店入ります?」
「入りましょう。それに、取引を持ちかけましょうか」
「藍介様頑張ってくださいね!」
「もちろんですとも、さぁ、取引をしますか!」
テンサーの店に入ると、テンサーさんがカウンターにいて私達を歓迎してくれました。彼の後ろにはガメツイさんも居ました。
「やぁ、やっぱり、僕の店に来たね。藍介さんと黄結さん。さぁ、僕にその魔石を買わせてくれないか」
「その前に私はテンサーさんと2人だけでお話をしたいのですが、よろしいでしょうか」
「ん? いいよ。いいよ。楽しそうじゃないか、僕の工房へ招待するよ」
「坊ちゃま、お一人で大丈夫ですか」
「大丈夫さ。ガメツイは黄結さんにお茶でも出してあげてくれ」
「かしこまりました。黄結様はコーヒーか紅茶どちらかお好みでしょうか」
「えっ、私はどっちでも大丈夫です」
「かしこまりました。黄結様、さぁ、こちらへ」
黄結姫さんはガメツイさんの後に続き、店の奥へ入っていきました。
「さぁ、僕達も行くとしようか。僕の工房は地下にあるんだ」
テンサーさんの後に付いていくと、地下へ向かう階段を降り、彼の工房につきました。
彼の工房は綺麗に整頓されており、机にはあらゆる魔石が置かれていて、作りかけの魔道具も置いてありました。
「素敵な工房ですね」
「でしょ、僕の大切な場所だからね。そこのソファに座ってちょっと待ってて、お茶持ってくるね」
テンサーさんに言われた通りに私はソファーに座りました。しばらくすると、テンサーさんから紅茶をもらいました。それでは、話し合いと言う名の買収でもしましょうか。