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魔道具店

 仲間から教えてもらった魔道具店に入ると、男の店員が現れました。


「ここは、高級な魔道具が売られている店ですので、その身なりの方はご来店できませんので、お引き取りください」


「そうなのですか、高級魔道具店と噂で聞きまして見てみたいと思っていたのですが、ここに置いてあるのはゴミばかりですね」


「はい? ここにある魔道具は全て有名魔道具技師テンサーの作品なのですよ。田舎者にはこの価値が分からないのですね」


「いえ、貴方の目が節穴なんですよ。本物は2個程度、殆どが偽物ですね。魔石からの放出魔力が抑えられてませんし、その、有名な魔道具技師が得意としているのは不要な魔力放出を抑える技術の筈ですが」


 私は飾られている2つの魔道具を指差しました。


「あの2つだけは本物ですね。魔力放出があまり感じられない。ですが、他は全くダメですね。私の目から見ても魔力が溢れ出てしまってますし、あー、こんなに放出させてしまっていたら、1年使えるものがたった2ヶ月足らずで買い替えないといけない粗悪品ですね」


 店員は驚いたかのように目を見開いていました。


『あの、藍介さん、魔石を売りに来たのに、店員さんと喧嘩しても大丈夫なのですか?』


『こんな、粗悪品を高級魔道具など言って無知な客に売ろうとしている時点で、この店に主人様から頂いた大切な魔石を売るのは絶対に嫌ですからね。あっちが喧嘩腰ならこっちも受けて立つまでです』


『藍介さんって結構血の気が多いのですね』


『やられたらやり返すのが凪教の教えですから』


『それも、そうですね! もし、殴りかかってきたら私が思いっきりぶん殴りますね!』


『ぶん殴ってもいいですが、殺さないでくださいね』


『力加減はできますとも!』


『ほんとかな?』


「貴方の目は節穴なんですね。この店にはふさわしくないのでお引き取りを」


「えぇ、王都一の魔道具店と聞いてここを訪れた私が馬鹿でした。この魔石に相応しい店を探しに行かなければいけませんね」


 私は主人様が作り出した、大きな魔石を店員に見せつけました。


 すると、奥の方から店主らしき男が現れました。


「なんだ、この魔石は! 一体、どうやって、この魔石を手に入れたんだ!」


「おや、貴方はここの店の方ですか?」


「私が、この店のオーナーのガメツイと申します。従業員が粗相をしてしまい申し訳ございません。それで、お客様はその魔石をどうやって入手したのですか? それほどの大きさでその高純度の魔力、こんな魔石を見たのは初めてです」


「すみませんが、偽の魔道具を売っているこの店に売る気はもうありませんので、貴方に教える筋合いもありませんね」


「ふっ、それなら、教えてもらえるまで痛い目にあって貰いましょうか」


 男がそういうと、後ろのドアからイカつい男が3名現れました。


『藍介さん、これは私の出番なのでは!』


『暴れてもいいですが、私がさっき指で刺した魔道具は壊さないようにしてください。あと、殺さないでくださいね』


『わかってます。わかってますとも! やっと、私が活躍できます!』


「なぁ、ねぇちゃん、いい女だな。こんなヒョロヒョロより、俺達に支えた方が、良い思いできるぜ」


「俺がたっぷり楽しませてやるよ」


 男が黄結姫さんの肩に触れようとした瞬間、黄結姫さんの髪がその男の手を貫通し、男は手の真ん中に穴が空き、痛みで叫び始めました。


「ぎゃぁぁああああ!!!!」


「あら、髪でつんと突いただけなのに、手に穴が空いてしまいましたね。あらあら、痛そうに、藍介様、布ってありますか? この人の手が私の髪より弱すぎて血が沢山出ちゃってますぅ」


「てめぇ! 殺してやる!」


 もう1人の男が黄結姫さんに襲い掛かり、黄結姫さんは男を回し蹴りで吹き飛ばしました。


「はぁー、私が応急処置しときますね」


 悶え苦しむ男の手に村で買った薬草を塗り、布を巻いてあげました。


「黄結の息子がいたら貴方は即殺されていましたよ。死ななかっただけ良かったと考えてくださいね」


「なんだよ、お前らなんなんだよ」


「私は魔石を売りに来たごく普通の客です。で、彼女とごく普通の私の付き人のメイドです」


 すると、またもう1人少年が奥のドアから出てきました。


「あははは!!! 面白い! 面白いぞ! ガメツイ、こいつらを引かせろ、この2人の相手は僕がする!」


「ですが、坊ちゃま。1人で相手するのは危険ですよ」


「ガメツイ、あの2人はお前なんかじゃ相手にならないし、俺の作った本物と偽物を放出魔力量だけで見分けられるやつだ。お前が商談の相手になれるわけないだろ」


「力及ばず申し訳ございません」


「いいから下がってろ、お前らももう帰っていいぞ」


「所で貴方は一体誰なのですか?」


「あー、僕の名前はテンサー、この国1番の魔道具技師さ! で、君の名前を教えてもらえないか」


「藍介と申します。そして、私のメイドの」


「黄結と申します」


「藍介さんと黄結さんか、さっきはごめんね。僕の従業員が粗相をしてしまって、そうそう、偽物を置いている理由は、僕が言わなくても賢い君ならわかったそうだけど、僕の口から言った方がいいかな?」


「いえ、貴方が本物のテンサーさんなら、この偽物達がある理由は、買いに来た客を選別する目的ですかね」


「いいや、違うさ! バカな客は僕が作った失敗作だろうが、高く買ってくれるからね! それに、弟子たちの粗悪品も僕の名前で売れば高く売れるし、弟子たちの懐が潤うってわけさ!」


「おや、深読みし過ぎてしまいましたか」


「でも、君の客を選別するって発想いいね! 面白い! 僕は君を気に入ってしまったよ!」


「有名な魔道具技師様に気に入ってもらえて光栄です。ですが、私はこの店にこの魔石を売る気は無くなったので、帰らせてもらいますね」


「ふぇっ!? 僕が出てきたのに、帰るっていうのかい! 僕に会いたくて大金を払う客もいるって言うのに、本当にさっきの態度は悪かったね。本当にごめんなさい。だから、ね。帰らないで、その魔石を僕に売ってくれよ。それがあれば、僕が作りたいアレを作れるかもしれないんだ」


「すみませんが、お断りします。黄結、帰りますよ」


「え! 藍介様、帰っちゃっていいのですか?」


「待ってくれ! 分かった。君の提示する金額でいいから、僕にその魔石を譲ってくれ!」


「1日、考えるので、明日ここで売る気になったら来ますよ。それでは」


 私は店を後にして、宿へ向かいました。


「あー!!!! 行っちゃったよ。ガメツイ! どうしてくれるんだ、これは大損だそ!」


「申し訳ございません。いつものクソ客だとばかり」


「おい、ガメツイ、口が悪いぞ」


「おや、申し訳ございません」


「あーあ、明日までお預けか、でも、今日の損失はデカいけど、藍介、面白そうな人に出会えただけでも儲かりものかな」

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― 新着の感想 ―
「おお!私の友達!よく来てくださいました」が普通に思えるほどの絵に描いた商人ですね。 顔を売ることが出来ました。次は引き抜き?それとも乗っ取る?或いはつぶす?
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