ワラン村
黄結姫のお陰で当初予定したよりも早く人間の村につき、私は村の情報を聞き出すことにしました。
私は村の木で出来た門の前に立っていた少年に声をかけました。
「すみません、この村はなんていう名前の村ですか?」
「ん? ここはワラン村だ。えーと、ここにはどうして来たんですか?」
「ワラン村。やはり、この地図は正しいようですね。教えてくれてありがとうございます。この村に少しだけ滞在したいのですか、宿屋とかあったりしますか?」
「宿なら、モンデばぁさんがやってるよ。ほら、あそこの家さ」
「親切にありがとうございます。黄結、チェックインを済まして、今日は早めに休むことにしましょう」
「かしこまりました」
「兄ちゃんは貴族の人か? ここいらでは珍しい服きてるよな」
少年は私の服が気になるようでした。うーん、資料になっていた商人の服装を真似たのですが、資料が古かったのでしょうか? 怪しまれると厄介ですが、話を晒すことにしましょう。
「おや、そうでしょうか? 聡明な君に聞きたいのですが、王都タユナタまでの道を教えてもらえってもいいですか?」
「兄ちゃんは一体何者なんだ? 貴族の人に見えるけど、貴族じゃないんだろ?」
「貴族ではないですよ。私は商人になる為に王都タユタナに向かっているのです。あっ、申し遅れました。私の名前は藍介と申します」
「俺の名前はコンダだ! 王都に行けば大商人になる事もできるって聞くけど、成功するやつなんて一握りしかいないのに兄ちゃんは行くのか?」
「えぇ、行きますとも、例え茨の道だとしても、私は成し遂げなければいけないですからね」
「ふーん、まぁ、兄ちゃん頑張ってね」
「はい、黄結疲れたでしょう。今日は宿をとって休みますよ」
「かしこまりました」
私はコンダ君に教えてもらった宿屋に行き、イデアさんから事前に貰っていた金貨で支払おうとしたら、両替が出来ないから金貨以外でと断られてしまいました。まさか、こんなことになるとは、ある程度のお金があれば余裕で事を進められると考えていたのに、これは大きな誤算でした。
「すみませんねぇ。金貨なんて何年振りに見たかしら。でも、ここで野宿なんて可哀想だし、そうだ。私の手伝いをしてくれないかしら? お手伝いをしてくれた代わりにお部屋をただで貸してあげるわ」
「ほんとですか! 助かります! その、お手伝いとは何をすればよろしいのですか?」
「この頃、腰が悪くて、立っているのも大変なのよ。料理のお手伝いをお願いしたいわ」
「それでしたら、私が手伝いますね」
「あら、私はてっきり貴方のメイドさんが手伝うとばかり」
「彼女は私の護衛なので、料理は下手なんですよね」
「ちょっと、藍介様、私そんなに料理下手じゃないです!」
「じゃあ、藍介さんと黄結さんに3号室の鍵を渡すわね。夕飯の準備をするときにベルを鳴らすから、ベルが鳴ったら食堂に来て頂戴」
「ありがとうございます」
私はモンデさんから鍵を貰い、黄結姫と一緒に3号室に向かいました。
「優しい方で良かったですね」
「まさか、金貨が使えないと言われるなんて驚きましたよ。どうにかして金貨を両替しないといけませんね」
「ふぁーあ、私走り疲れちゃったので先に休んでもいいですか?」
黄結姫は大きな欠伸をして靴を脱ぎ、ベッドに横たわった。
「もう、寝る気じゃないですか。まぁ、危険な事はなさそうですし、夕飯の時間になったら起こしますから休んでください」
「ありがとう、ございますぅ」
黄結姫は疲れていたので、直ぐに熟睡していました。
「あれだけ走ったらそりゃ、疲れますね」
私は主人様から貰ったポーチを鞄から取り出し、無地の半袖と黒いズボンを取り出し、着替えました。
「この姿なら大丈夫ですね。最初からこの服を着れば良かったですね」
そして、私はベルが鳴ったのでモンデさんの料理の手伝いをして、その日は暖かいシチューを食べてゆっくり休みました。
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