藍介と黄結姫の旅立ち
とうとう、私は人間の国へ向かう日となりました。黄結姫さんも遠出の準備も終わり、現在、森で皆が集まっている所です。
「母さん〜、ちゃんと藍介の言うことを聞くんだよ〜、変なことはしない〜。あとは〜、そうだな〜、本当に危ない時は俺を呼んでね〜」
紫水は黄結姫に抱きついた。
「紫水分かってますよ。藍介さんの側から私は離れませんし、変なことなんて私はしませんよ。もう、紫水は甘えん坊ですね」
黄結姫は紫水を優しく抱きしめ、頭を撫でてあげていた。
「お兄ちゃん! 花茶応援してるからね!」
「花茶ありがとうございます!」
藍介は花茶を高く持ち上げて抱きしめた。
「ライネルさん、花茶を頼みましたよ」
「おうよ! 藍介さんも気をつけて」
花茶を降ろし、花茶はライネルの元へ戻った。
「藍介、黄結姫、気を付けてね。何かあったらすぐに連絡してね」
「はい、何かあったらすぐに主人様にお伝えします」
主人様は私を抱きしめ、その後、黄結姫にも抱きつき、私と黄結姫は森から旅だったのでした。
森から随分と離れ、辺りを見渡すと岩ばかりでした。
「藍介さん、ここをずっと真っ直ぐ行くと人間の国へ着くんですよね?」
「はい、考えていたよりも、実際に歩くとなかなか遠いものですね」
「うーん、このままのペースだと人間の国へ着くには10日以上かかるのでは?」
「いいえ、もっとかかりますよ。私の計算だと近くの村に着くのには2週間ほど掛かりますね」
「えっ! あれ? そんなに遠かったのですか!?」
「元の姿より足が遅くなりましたし、体力を温存しながら進むので時間がかかるのは当然です」
「それなら、私が藍介さんを担ぎながら走った方が早く着きますね。よし、藍介さんは私の髪の中に入っていてください」
「髪の中にって、うわっ! 黄結姫さん!? 私の体に髪が絡みついてきますよ!」
私の体に黄結姫さんのとても長い髪が巻きついてきて、1分も足らずに私は簀巻き状態になりました。
「私が歩けなくなったじゃないですか!!!」
黄結姫さんは簀巻き状態の私をおんぶすると、とてつもないスピードで走り出しました。
「ぐえっ!? 早い!? うげっ、早すぎます!!!」
「藍介さん、これなら2日走れば村に着きますよね!」
「ぎゃぁぁぁあああ!!! 黄結姫さん、このスピードを維持し続けるのは大変じゃないですか!!! そんなに急かさなくても、村は待っていてくれますよ」
「早く着いて、私は早く主人様のお役に立ちたいんです」
「それは、私も同じ考えですか、わかりました。黄結姫、私は休憩するので移動はよろしくお願いしますね」
「はい! 任せてください! きゃ!」
私が黄結姫の髪の中でゆっくりしようと決意した時、黄結姫さんは豪快に転んでしまったのです。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫です! ほら、怪我してません! よぉし! いくぞぉ!!!!」
黄結姫さんはまた走り出し、黄結姫さんのお陰で、2日で、近くの人間の村に着いたのでした。
「野宿って楽かったです。それで、村にこのまま入って大丈夫なのですか?」
「えぇ、結界があるのは王都と大きな町のみ、このような小さな村には結界が無いのです。少しだけ彼らを交流をし、人間の国の情報を少しずつ収集しますよ」
「はい、私頑張りますね!」
「頑張るのはいいですが、肩の力を落としてくださいね。黄結姫は私のメイドと言うことになってますし」
「はい、旦那様。私きちんとチェルーシルさんにメイドの心得を教わったんですから、大船に乗った気でいてください!」
「それが、泥舟じゃなきゃいいのですが。黄結姫、人間の国では黄結と呼びます。私の事は藍介様と読んでくださいね」
「はい、かしこまりました。藍介様、それでは、藍介様、村に入りましょうか」
「はい、変なことは言わないでくださいね」
「分かってますって」
黄結姫さんは初めての人間の村に興味津々で、何か変なことをしないかと私はヒヤヒヤしました。
そして、私達は村に入り、辺りを見渡すと、ここの村は落ちぶれていて、女と子供、老人達がいて、働き手である男がいない村だったのです。
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