もしも、藍介の悪夢が現実だったら 前編
凪と藍介は幸せそうに結魂式を教会で行っていた。
洞窟の長達と森の長達が教会の椅子に座り、2人を祝福していた。ただ1人を除いて。
俺は何を見せられているのだろう、愛してやまない大切な人が俺の友達でもあり、ライバルの妻となった。悔しい、とっても悔しい、どうして、俺じゃないんだ? どうして、弱いあいつが彼女と結ばれるんだ? 俺のほうがあいつより彼女を愛しているのに、どうして? どうして、俺は彼女の隣にいらないんだ?
憎い、憎い、羨ましい、その場所を俺によこせ、俺こそが相応しい場所だ。俺は、俺こそが主人様の夫に相応しい。なのに、どうして、彼女はあいつを選んだんだ。苦しい、苦しい、心臓が握りつぶされたように苦しい。どうやったらこの痛みから解放されるのか、どうやったら彼女を俺の物にできるのか、あぁあ! 苦しい、憎い、羨ましい!
「あっ、そっか、殺せばいいんだ」
母さんは心配そうに俺を見つめていた。
「紫水? 大丈夫? 顔色が悪いわよ」
「母さん、俺ね〜。やっと、分かったんだ〜。取られたものは殺して取り替えなさいといけないんだ〜」
「紫水、どうしたの?」
俺は席から立ち上がり、藍介と主人様の元へ歩いた。
「紫水、まだ式の途中なのですから席から立ち上がらないでください!」
「紫水? 顔色悪いけど、気分悪いの? 藍介、具合悪そうにしている紫水にそんな言い方ないんじゃないの!」
「だって、折角の私と主人様の結魂式なのに、邪魔をされたくないのですよ」
藍介は俺の主人様に抱きついた。その時、俺の中で何かが壊れた音がした。
「死ね」
俺が一言、発した瞬間、藍介の首が胴体と離れた。
「きやぁあぁあああああ!!! 藍介!!! 藍介!!!」
主人様の悲鳴、俺は主人様を水の膜で覆った。
「あー、あー、俺の主人様を奪ったのが悪いんだよ」
「紫水!!! よくも、お兄ちゃんを!!!」
花茶ちゃんは泣きながら俺に殴りかかってきた。俺は花茶ちゃんを藍介と同じように殺した。
「まだ、今でしたら治せます!」
緑癒が藍介と花茶ちゃんを生き返らせようとしたから、緑癒を殺した。
「紫水!!! お前はどうして、こんなことを!!!」
灰土は俺をぶん殴ってこようとしたが、俺は灰土を右足を水で切断した。
「ぐはぁっ、ぐっ、これしき」
灰土は右足強く掴み止血をしていた。
「なんて、ことを、紫水!!! 貴方はなんで、こんな事をしたの!!!」
母さんと紅姫さん、金色丸と銀次が一斉に俺に攻撃をしてきた。が、そんな攻撃は今の俺には効かない。
涙が、紫の涙が俺の頬を伝い、外では空が紫の雲に覆われ、雲から紫の雨が降り始めた。
「主人様、俺と2人きりになろうね」
俺は辺り一体に紫の水をばら撒いた。
その紫の水に触れたものは肉体が溶け出す、猛毒であった。
金色丸、銀次は一番水を浴びたから溶けて死んだ。
母さんは髪を使って水を避けたが、水が教会内に溜まり、逃げ場無くなり、洞窟の長と森の長達が死んでいった。だけど、灰土だけは教会から逃げることに成功したみたいだった。
でも、1人が逃げただけで俺を止めることなんてできない、もうこの世で俺を止められる人なんていない。この世の全ての生物を殺そう。そして、俺と主人様の2人だけの世界を作るんだ。だから、みんな、俺と主人様の未来のために死んでくれ。
紫雲は世界に広がり、そこから降る猛毒の雨によって、植物、小動物、人間、魔族、亜人、全ての生き物が死んでいった。
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