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居間での話し合い

「なぁぎぃさぁぁん!!! 貴方のイデアです!!!」


 イデアさんは私の家に着いた早々、私を抱きしめキスしようと唇を尖らせて駆け寄ってきた。


 私はキスをされる瞬間隣にいた魔王さんを盾にした。


 イデアさんは咄嗟のことで勢い余って魔王の唇にキスをした。


「うげっ!!!」


「うげぇぇぼおぅへぇ!!!」


 2人は直ぐに離れると、イデアさんは必死に唇を拭き、魔王さんは放心状態だった。


「うまくいったわね!」


「何が! うまく行っただ! 俺の心は木っ端微塵に砕け散ったわ!!!」


「凪さん、酷いですよ。ダメ男とキスなんて、今まで人生の中で最大の汚点です」


「おい、誰が、ダメ男だ! そもそも、お前が主人さんにキスをせがんだのが悪いんじゃないか!」


「凪さんと私はキスをしあう仲なのですから! キスをするのは当然です! ねぇー! なぎさぁーん!」


「ねぇ!なぎさぁーん!じゃないわ! もう、藍介この状況をなんとかしてー」


「そう言われましても、あの暴走男を止めるのは私じゃ力不足ですよ」


「灰土! 灰土ぉぉお!!! このストーカーをやっつけて!!!」


 私が灰土を大きな声で呼ぶと、灰土は空から舞い降りてきた。


 灰土は緑癒から羽の出し方を教えてもらい空を飛べるようになっていた。


「主人様! ストーカーとは誰のことでしょうか! もしや、紫水!」


 私の前に灰土が着地すると、辺りを見渡して紫水を探し始めていた。


「紫水じゃないて、イデアさんを懲らしめて欲しいのよ」


「イデアさんですか、俺が戦うよりも、魔王さんとやり合ってますよ」


 私が少しだけ藍介と話している間に魔王さんとイデアさんは喧嘩をしていた。


 喧嘩を眺めながら、20分が経ち、小屋からアビーサさんとアさんが出てきた。


 アビーサさんは魔王さんの頭をぶん殴り、アさんはイデアさんを蔦で拘束した。


「儂の弟子が迷惑をかけてすまないのぉ」


「貴方、獣の理性担当なのに、どうして立場が逆転しちゃってるのよ」


「この、美しい女性は誰でしょうか?」


「氷月のお姉さんのアさんよ」


「あー、この方が、申し遅れました。私は魔王軍最高幹部八翼の1人、二翼のイデア・ラヴァーズと申します。そして、ゆくゆくはこのダンジョンの主人、凪の夫になる男です」


「凪ちゃん、獣をたぶらかすなんて凄いわね」


「たぶらかしてませんって!」


「私の心は凪さんに囚われてしまっているのです!」


「はぁー、うん!現実逃避するのが一番! 魔王さんとイデアさんはアビーサさんとアさんに任せて、藍介! お茶でも飲んでゆっくりしましょ!」


「かしこまりました。茶菓子はお煎餅でよろしいですか?」


「それでいいわ! オビリオンさんも私と一緒にお茶でも飲んで寛ぎましょう」


「それも、そうですね。お茶いただきます」


「準備いたしますので、居間でお待ちください」


 藍介は台所へ向かい、4人を残しオビリオンさんと私は居間で寛いだ。


「それで、オビリオンさんの部下達じゃアスラスムには行かせられないの?」


「私の配下は獣人ですので、見た目で一発でバレてしまいますからね。その点、藍介さんは人間そのもの、結界さえ突破すれば虫人なんて誰もわかりっこないですよ」


「一つだけ藍介に弱点があるのよね」


「それは?」


「藍介の足音を聴いてみて」


「わかりました」


 オビリオンは耳を澄ました。


 藍介が歩くたびに、カサカサ、カサカサ、カサカサカサカサ。


「えーと、藍介さんの足音はその独特ですね」


「ゴキブリの時の足音がそのまま受け継がれたみたいなのよ。まぁ、一種の呪いよね」


「足音なら足を浮かせればならないのでは?」


「それも試したわ。私が作った浮かぶ君って靴を履いて歩いてもらったのよ。浮いているのに、カサカサいうのよね。うん、これは呪いだわ」


「可哀想に、ですが、足音は呪いとすれば人間達に分かってもらえるのではないでしょうか」


「本人が気にしてるからあまり言いたくないみたいなのよね」


 カサカサ音が近付いてきた。


「主人様、私の足音で話を盛り上げようとしないでください!」


「うん、藍介が近付いて来るのすぐに分かるから便利ね」


「もう、私はこの足音が嫌なんですよ。この足音のせいで、皆に藍介がやってきたと気付かれてしまうのですよ」


「まぁまぁ、それで、藍介は人間の国へ行きたい?」


「急に本題に入らないでください!もう、そうですね。私1人では難しいと思います。なので出来れば、もう1人仲間が欲しい所ですね」


「あら、やる気なのね」


「藍介さんありがとうございます!」


「やらないと言ったら何人も犠牲が出てしまいますし、主人様も私が行くことは分かっていましたよね」


「藍介なら行くと思ってたけど、渋ると思ってた」


「主人様の側から離れるのは辛いですが、主人様はお優しい方、奴隷などと低俗な行いをする人間を哀れんでいると考えています。なので、私は奴隷を救い主人様に褒めて貰うために人間の国へ行きます」


「分かったわ。私がお願いするまでもなかったって事ね。でも、藍介は魔法は使えるけど、腕っぷしはダメダメだから、護衛が必要ね」


「えぇ、それに、主人様からお願いされてもここから離れ人間の国へ行ける方がいるのかどうか。出来れば、紫水や灰土さんの2人のうちどちらかが付いてきてくれるのであれば安心なのですが」


「紫水は無理だとして、灰土さんも、頑固な所があるからねぇ。紫水はあの性格だと周りに敵を沢山作っちゃいそうだし、灰土さんは、奴隷市場なんて見たら即ぶち壊そうとしそうね」


「やはり、この2人は無理ですね」


「緑癒は、強さのベクトルが違うし、藍介の盾になるのではなくて、藍介を盾にするからな」


「緑癒は小さな私の後ろに隠れようとした前科がありますからね」


「そうなると、女性陣の中からお願いするしかないわね」


「花茶はだめですよ。危険な目には合わせたくないです」


「それは、分かるわよ」


 オビリオンさんは1人会話に入らず、ゆっくりと茶を啜り、お煎餅を齧り寛いでいた。

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― 新着の感想 ―
素晴らしい回避でした(笑)でも、帰っちゃうと出来ないんだよね~。 「可愛い子?には旅をさせよ!」というけど、それには先ずは自己防衛が出来ないと。お守りとして爆弾みたいな物を50個くらい渡して置く?……
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