魔王からの提案
魔王は藍介からのアイデアを元に主人さんにお願いをする事にした。
「魔王さん、慌ててどうしたのよ?」
魔王は主人の家に辿り着き、彼女の両肩を掴んだ。
「お願いだ! 藍介さんを俺に貸してくれないか! 彼の力が俺には必要なんだ!」
「急に何よ! ちょっと、痛いから手を離して」
「すまない」
魔王は彼女に言われるがまま手を離した。
「それで、藍介の力を借りたいのは分かったけど、どうして藍介の力を借りたいの?」
「それがだな」
魔王は藍介と話したことを全て彼女に話した。
「そういうことね。藍介なら出来るかもしれないわね。藍介の知識を貸すことは良いわ。でも、藍介を危険な目には合わせられないわ」
「選りすぐりの護衛を藍介さんにつける。それなら、どうだ?」
「そもそも、魔人が人間の国に侵入するのが大変なんでしょ? 藍介は人間の姿をしているけど、人間ではなく虫人なのよ。危険すぎるわ」
「だよなぁ。でも、藍介さんなら出来るって謎の確信が持てちゃうんだよな」
「それは、私も同じ気持ちよ。どうしてか分からないけど、藍介なら捕えられた人々を救う事ができる。って思えちゃうのよね」
「主人さんもそう思うだろ!」
「藍介なら救える。でも、ごめんなさい。少し考えさせて、それに、本人がやりたいのであれば私は止めないけど、やりたくなかったら、彼の意思を尊重したいわ」
「で、話が少し変わるが、庭にこんな小屋あったか?」
魔王は庭に建てられた小屋を指差した。
「アビーサさんとアさんが2人だけで話したいって言ってたから、小屋を建てたのよ」
「アさん? どっかで聞いたことあるな」
「アビーサさんの古い友人みたいよ」
「師匠のねぇ。ん? ちょっと、待て、師匠がラヒートの側にいないのなら、俺がラヒートを見てなきゃ!」
すると、家の中で黄結姫にメイドの心得を教えていたチェルーシルが庭へやってきた。
「魔王様その心配はございません。アビーサ様の使い魔の方が彼女を見守っています」
「そう言うことか、チェルーシル教えてくれてありがとう」
「いえ、それでは私は黄結姫さんに掃除の基本を教えますので失礼させていただきます」
チェルーシルは黄結姫の元に戻った。
「ねぇ、藍介を人間の国へ行かせた場合、私達になんのメリットがあるのかしら?」
「メリットかぁ、リリアーナの情報を教えるのは当然だしな、その他のメリット。そもそも、本来なら俺が考え行動しないといけないのに、そちらに任せっぱなしだな」
「でしょ、私はそんなにお人好しじゃないんだけどね。もし、藍介がやると言うのであれば、こちらとしては、そうね。貴方の国との貿易をしてみたいわね」
「貿易ならイデアの管轄だな。魔道具が関わるのであればドーレーラムに話を通さなければならないな」
「そういえば、あなたの国の通貨と人間の国の通貨は違うのかしら?」
「そりゃあ、人間達の通貨と俺の国の通貨は違うさ、俺の国の通貨は亜人種の国なら基本的に何処でも使えるぞ。人間の国の金が欲しいのであれば、唯一亜人種と共存している人間の国『コウイグ』なら調達可能だ。実際、アスラスムに潜入している影にそこで調達した金を渡したからな」
「コウイグね。ねぇ、私が作る魔石って高く売れるかしら?」
「ん、急にどうして金の話になるんだ?」
「いいから、教えなさいよ」
「高く売れると思うぞ、高純度の魔石なんて滅多にお目にかからないし、フローゼラーなら詳し値段を提示できるけど、俺には値段までは分からないな」
「ふーん、人間の国でも売れるかしら?」
「俺の国よりも高く売れるんじゃないか? 人間の国では魔石不足が深刻化しているって話だし、まぁ、俺が採掘場を破壊した事があって、そのせいでより魔石不足が深刻化したみたいだけどな」
「どうして採掘場を破壊したのよ」
「簡単さ、俺の国民が何人も奴隷として働かされていたからな、そんなことされていたら誰でも怒るだろ」
「そんな事をして戦争にはならなかったの?」
「ならないというより、採掘場は亜人種の国の国境沿いにあって、人間側が勝手に権利を主張していたからな。人間側も流石に何も言えなかったんじゃないか?」
「難しい話は私は分からないけど。自分たちの領土じゃないのに勝手に採掘してたからやり返せなかったって事ね」
「まぁ、そういう感じじゃないか?」
私は魔王と話していると藍介とイデアさんが庭へやってきた。
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