藍介のアイデア
魔王とイデアは藍介に人間との因縁を全て話した。
「話はわかりました。勇者教、勇者の力。厄介な力なのですね。うーん、勇者の力の攻略方は浮かびませんが、勇者教の攻略方法でしたら、一つ良いアイデアがありますよ」
「それは、どんなアイデアなんだ!」
「簡単です。新たな宗教を誕生させて勇者教の信者を寝返させるのですよ」
「うん、簡単じゃないな。イデア、これは無理だぞ」
「藍介さん、なぜ簡単と言い切れるのですか?」
「勇者教の教えは本で読みましたが、この教えは救いがない。ただ、勇者の英雄譚に乗っかっているだけの中身のない教えですからね。勇者を讃えれば魂が救われる? そんな、事ありませんよ。勇者こそこの世界の汚点なのですから、よくもまぁ、こんな嘘を並べ信じさせましたよね。おっと、脱線してしまいましたかね。なので、それよりも信じれば救われる、自身の為になる宗教が現れたら、簡単に崩れ落ちますよ」
「藍介さんは勇者が悪だと仰るのですね」
「彼が行ったことはこの世界の損失を招きましたからね。神の魔法を消滅させ、そのせいでアンデットが出現、女帝の国を姫と結婚できなかったと言うだけで、滅ぼす愚行。勇者が欲する先には死しかない。暇つぶしに歴史書を読み漁っていた時がありまして、このような事件が起こっているのに、よく勇者教を作ることができましたねと感心しましたからね。多分ですが、信者は勇者の行いを全く知らないのでしょう。この歴史を人間の世に出せば、少なくとも勇者教にダメージを負わすことはできると思いますね」
「それなら、藍介さんが新しい宗教を作ってアスラスムに広めてくれないか?」
「はい? 何故、貴方達の問題に私が関与しなくてはいけないのですが、ましてや、一番危ない行動役とは、嫌です。主人様からお願いされるのでしたら分かりますが、魔王さんにお願いされてはい、やります。とはなりませんよ」
「じゃあ、主人さんにお願いしてみる!」
魔王は主人の家まで走って行った。
「なっ、私はやりませんからね!!!」
イデアは考えた。一番自分にとってライバルとなる存在が彼女から離れる。いや、私達の問題に関わるのは、でも、最初にここへ来た理由は優秀な人材確保のため、藍介さんなら勇者教と並ぶ程の新たな宗教を作りだし、勇者教の権力を脅かすことができるかもしれません。それなら、やはり、藍介さんに頼むしかないのではないでしょうか?
「藍介さん、新しい宗教の名前を考えておいてくださいね」
「私はやりませんって!」
イデアさんは私の家を後にした。
もし、私がやることになったとして、私が不在の間に紫水は暴れ出しますよね? この頃は、緑癒までもが主人様に積極的にアピールしています。ふっ、私は主人様に愛していると言われた男、2人は主人様にとって友人で部下と言った所でしょう。ふっ、私は主人様の恋人! そして、ゆくゆくは夫になる男。そして、イデアさん、彼もまた私が主人様の側から離れたら主人様に積極的に、いえ、普段と代わりないですね。
「でも、彼等を救ってあげたい」
藍介は捕らえられた人達の話を聞くと今まで自分が救ってきた世界を思い出していた。勇者だった頃の自分を全てを思い出すことは出来ないが、それでも、抱いてきた感情が溢れる。
「どの世界においても、人間は何故こんなにも愚かな種族なのでしょうか。いや、高い知能がある生物が愚かなのか」
藍介は身支度をして、家を出た。そして、主人様の家に向かった。
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