不穏な手紙
凪達がアビーサとアにあっている時、魔王はオビリオンに連れられて泣く泣く帰る支度をしていた。
「師匠が、地上に出てくるなんて何回目だろう? 俺に出会った時、俺を連れ去った時、俺が国を建国した時、うん。それぐらいしかないよな」
「はい、魔王様、手を止めずに荷物を詰める!」
「荷物少なめできたのに何故か鞄がパンパンになってるんだような」
「凪さんからお土産を沢山貰いましたし、高密度の魔石、森の黄金。これだけでも十分なのに、子供達のおもちゃまで貰えるとは思いもしませんでしたよ」
オビリオンの鞄は魔王の鞄よりも膨れ上がり、鞄は限界を超えようとしていた。
「オビリオン、そんなに詰めて鞄が可哀想だろ。イデアの腕時計に収納できるからいいけど、イデアがいなかったらその荷物持つのも苦労しそうだな」
「凪さんにありったけのおもちゃを用意してもらったんですから、このパンパン具合は納得できますよ。これで、パパの好感度爆上がり間違い無しですね!」
「嫁さんのお土産も忘れるんじゃないぞ」
「そんなこともあろうかと、藍介さんに魔石を使ったネックレスを準備してありますので、心配は御無用です」
「あいつアクセサリーまで作れるのかよ。料理も上手いし、頭も良い、そして手先が器用までときた。イデアにとって強敵だよな」
「えぇ、イデアさんは藍介さんを恋敵としてますからね。実際、凪さんと藍介さんの2人の雰囲気はもう、恋人じゃないかと思いますね」
「そうなのか? 俺には分からなかったな」
2人は荷造りをしていると、イデアが焦った表情をして2人の部屋に駆け込んできた。
「魔王様! オビリオンさん! まずいです!」
「ん? とうとう、凪さんが恋人を決めたのか?」
「イケメンに囲まれたらそりゃ、恋人を決めるのも時間の問題ですからね」
2人はイデアをからかっていると、イデアは一通の手紙を魔王に渡した。
「この手紙を読んでください」
「ん? なになに?」
『タユタナ、奴隷商人フレドリック・アスラー、2名の人魚、3名の魚人。王族主催の奴隷市場』
その後の手紙の文字は擦れて読めなくなっていた。
「王族までもが奴隷を推奨するとはほんと腐り切った国だな!!!」
「人間の国アスラスムの王都に潜伏している私の部下からの手紙です。魔王様、私に王都潜入の許可を頂けないでしょうか。ここ、魔蟲の森はアスラスムとは近く、禁足地となっている為、奴隷となった者達をを解放してもここへ逃げることができます」
「だが、あの主人が応じてくれるかにもよるし、お前が1人で乗り込むのは危険だ。例え終焉の獣であっても勇者の力を受け継いでいるアスラスムの王族と戦うことはきついだろ。俺が直接出向いた瞬間、本格的な人間と魔族との戦争になる。俺だってあの国を滅ぼしてやりたいが、今は無理だ。イデアだって分かっているだろ」
「勇者の力さえなければ、あんな国私達が何もしなくても滅ぶというのに、勇者の力を持つ王族そして、勇者教。この二つを攻略しない限り勝利はない」
「魔王様、藍介さんに相談をしてみてもよろしいでしょうか」
「主人さんじゃなくて、藍介さんに聞くのか?」
「えぇ、腹が立ちますが、彼の方の知識量があれば、何かしらのアドバイスは貰えるかと」
「分かった。俺もその話に参加する」
3人は藍介の家に向かったのであった。