深淵の神アビーサと魔石精霊ア
「ほう、ここが洞窟の主人の住処か、なかなか良い家じゃのぉ。儂の住処にもこの家を建てて欲しいのぉ」
アビーサはチェルーシルの案内で洞窟の主人の家の庭にいた。
「あ! もしかして、アビーサおじちゃん!」
「おっ! お主は青雷じゃな!」
庭には青雷とラックルがボール遊びをしていた。
「アビーサ、アビーサ。ふぇえええ!!! 魔王様の師匠のアビーサ様!?!?!!!」
「ラックル君急に大きな声をあげてどうしたの?」
ラックルの大声を聞いて洞窟の主人が庭に出た。
「ねぇ、青雷この方は誰?」
「主人様、アビーサおじちゃんだよ!」
「あー! ルービックキューブのおじいちゃんね!」
「お主が作ったるーびっくきゅーぶ。なかなか面白い玩具であった。だが、儂ほどの賢い者であればほぉれ!この通り!全面色を揃えることに成功したのじゃ!」
アビーサは懐からルービックキューブを取り出すと、洞窟の主人に渡した。
「私ルービックキューブ揃えたことないんだよね。ん? アビーサさん、本当に揃えられたのかしらね? もしかして、シール付け替えたりしてないわよね?いや、まさかね。深淵の神と呼ばれている方がそんなズルなんてしないわよね」
アビーサは大量の汗をかきはじめた。
「わ、儂がぁ。そんな、ズル、するわけ、なかろう。儂は深淵の神なのじゃぞ! そんな、事、するわけ」
青雷はルービックキューブを見て赤色のシールが少し削れていることに気が付いた。
「ねぇ、ここのシール剥がれてない?」
「それに、青色のシールも欠けているような」
「ごほん、儂はここへ来たのは古き知り合いに会いにきたのじゃが、すまんが、アの所まで儂を案内してくれんかのぉ」
「ちょっと、話を逸らそうとしないで頂戴。アビーサおじいちゃん。シール、剥がしたの。剥がしてないのどっちなの!」
「儂、はぁ、アに会いに来たのじゃよ」
「青雷、これは黒、白、どっちだと思う」
「これは、黒かな、アビーサおじちゃんずらしちゃダメだよ」
「儂はズルなんてしてないんじゃもーん! たまたま、シールが剥がれただけじゃもーん!」
「あ! やっと白状したわね!!! ここまで揃えられるのも凄いけど、ズルしたら全ての努力が台無しになるのよ! はい、アビーサおじちゃん、こういう時はなんて言うのかな」
「儂、悪くないもーん! 儂頑張ったもーーーん!」
「可愛く言ってもダメよ! ルービックキューブやり直しだからね!!!」
凪は揃えられた? ルービックキューブを混ぜ始めた。
「なんと! そんな、儂の努力がぁ」
「もう一度一からやり直してくださいね」
その時、地面から女性の笑い声が聞こえた。
「アビーサ、何やってるのよ。ほんと、もう、こんなに笑うの久しぶりよ」
地面から美しい女性が現れた。
「地面から美女が生えてきた!?」
「誰!?」
「あら、もうかして初めましてかしらね。そうね。花茶ちゃんとライネルとしか会って話してないわよね。それじゃあ、初めまして、私は豊穣の森の主。魔石精霊のアと申します。それと、氷月のお姉ちゃんです」
「氷月のお姉さん!? 氷月の話ではよく出てたけど、こんな美人さんなんて知らなかったわ」
「あら、美人さんなんて、凪ちゃんとは仲良く慣れそうね」
「すみませんアさん、花茶が言っていたことって本当なんですか? あの氷月が花茶の洋服作りしているんですか?」
「えぇ、私が花茶ちゃんの服を弟に作らせているわ。針に糸を倒すのだけでも1時間かかって大変だったんだから」
アビーサはピョンピョンと跳ねた。
「おーい、儂の事忘れておらんかぁ〜」
「忘れてはないわよ。アビーサ、歳をとったのね。前よりも器が小さくなったわね」
「仕方なかろう、儂だっていつまでも若いわけがないからのぉ。それに比べ、アは若作りし過ぎじゃないのかのぉ。儂よりもばばぁなのに、そんな薄着をしていては腹を壊すのではないのか」
「久しぶりに会ったら、そんな事いうなんて泣き虫提灯が偉くなったものね」
「ふん、儂はお主が星に成れないせいで門をずっと守らなければいけなくなったからのぉ。いつになったら神からの試練を超えられるのやら」
「仕方ないじゃない! 私の力を使った獣はどっか行っちゃうし、何度も育て上げた森は食べ尽くされちゃうし、こっちだって、やれるだけやって、弟と妹を作り出して、弟が不甲斐ないせいで、不本意な契約もしたんだからね!」
「でじゃ、アよ。儂と久しぶりに2人だけで話そうじゃないか。少しばかり、気掛かりな事があったもんでのぉ」
「凪ちゃん達に言えないことなの?」
「この子達にこれは、まだ話すには早すぎるんでな」
「分かったわ。凪ちゃん何処か部屋を貸してもらえないかしら?」
「え、あ、はい。それじゃあ、小さな小屋を庭に建てるので、そこを使ってください」
凪は庭に簡易的な小屋を建てた。
アは周りから聞こえないように小屋に魔法をかけてアビーサと共に小屋へ入ったのでした。
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