魔王の師匠参上!
魔王は解呪が成功したラヒートの側で彼女が目覚めるのを待っていた。
「ラヒート、目覚めてくれないか。俺はまだ君のそばにいたい」
部屋には魔王様とラヒート以外に2人いた。その2人というのが、チェルーシルとオビリオンであった。
「魔王様、ラヒート様の事は私にお任せください。さぁ! 国へ戻り仕事にお戻りください」
「やだ! ラヒートが目覚めるまで俺はここにいるんだーい!」
「魔王様、流石にもうそろそろ帰らないと国の運営に支障をきたします。それに、エルフの王子のあの様子じゃ、めんどくさい事を吹っ掛けて来るに違いません。さぁ、国へ戻りその対応を議論しなくては」
「嫌だ!嫌だ嫌だ!!!!」
魔王がラヒートの側で駄々を捏ねていると、老人の声が部屋に鳴り響いた。
『何やったらんじゃ馬鹿弟子! お前さんの国へはよ戻らんかい!!!』
「師匠!?」
魔王が声に驚いた瞬間、寝ているラヒートから黒い魔法陣が出現し、小さな老人が現れ、魔王の顔面をぶん殴った。
「ぐへっほぉ!!!」
老人は背丈が小さく、通常の男性の腰の位置までしかなく、立派に生えた白い髭、身長に合わない長い棒、その棒の先端には青白い光を放つ提灯が付いていた。
「し、し、師匠!? 出てきちゃダメじゃないですか! だれが、深淵を見守るのですか! 早く帰ってください!」
「んな、寂しいこと言うとは、師匠泣かせなやつだな、儂わな、1人で寂しくて、寂しくて、温泉入りたいんじゃ!!!」
「温泉目当てかよ!」
「だまらっしゃい!!!」
小さな老人は魔王の腹に飛び蹴りをした。
「ぶっふぁはっ!」
魔王は吹き飛ばされ、襖が一枚ダメになってしまった。
「まぁ、これは、凪様がお怒りになってしまいますわね」
「あの、アビーサ様。どうして、深淵から離れたのですか?」
オビリオンはアビーサに質問をした。
「それはのぉ、お前達ばかり楽しい思いをしているのを見ていて、儂も体験したくなったのじゃ。それに、青雷にもお願いしたらいつでも遊びに来ていいと行っておったし、儂は温泉に入りたいのじゃ。それに、馬鹿弟子が帰らないのは女が心配だからじゃろ、それなら、儂がその女を守れば安心して帰れるじゃろ」
「ラヒートのお世話を師匠が!? 絶対にダメ! それなら、チェルーシルだけに任せた方があんし」
「黙らっしゃい!!!」
魔王はまた腹に一撃を喰らった。
「こ、こんな、暴力ジジイが、ラヒートの側になんか、いさせるかぁ!!!」
魔王は老人に掴み掛かろうとしたが、提灯の付いた棒で軽くあしらわれてしまった。
「こやつ、鍛錬を怠っておるな。オビリオン、儂はお主にこの馬鹿を甘やかすなと言ったのを覚えているか? その甘やかしがこの馬鹿を弱くしてしまっている」
「申し訳ございません。アビーサ様、魔王様はこの100年ほど国務に追われていたので」
「はぁー、ほら、この馬鹿を連れて国へ帰るのじゃ、この女は儂が見よう。儂もこの女から聞きたいことがあるのでな、儂が側についていれば安心じゃろうて」
「はい、アビーサ様がラヒートをお守りしたいだたけるのでしたら、とても心強いです」
「じゃろ!そうじゃろ! さぁ、帰れ。後は儂に任せるのじゃ」
「魔王様、帰りますよ」
「俺は、ラヒートの側に」
「さぁ! 帰るのです!」
オビリオンはボロボロになった魔王を連れて部屋から出ていった。
「チェルーシルは初めましてじゃな、儂の名前はアビーサ。深淵の司るあの馬鹿弟子の師匠じゃ。これから、よろしくなのじゃ」
「はい、よろしくお願いいたします」
「それで、この洞窟の主人さんに話がしたいのじゃか、彼女の所まで案内してくれないかのぉ?」
「それでは、ラヒート様の側を離れてしまうことになってしまいますが」
「構わん、儂の炎に彼女を守らせよう」
提灯が青白い光を強く放ち、丸い青い炎と黒い炎が浮かび上がった。
「お主立ち2人に彼女の護衛を任せる。何かあったらすぐに儂を呼ぶのじゃぞ」
青い炎と黒い炎はアビーサの言葉に反応してラヒートの上でプカプカ浮かび始めた。
「これで大丈夫じゃろ、さぁ、儂を主人の元へ案内してくれ」
「かしこまりました。洞窟の主人凪様はご自宅にいらっしゃいます」
「主人の家に出発じゃあ! 久しぶりの地上。我ながらワクワクしてきたのぉ!」
アビーサはチェルーシルの後について行きながら、洞窟の主人の元へ向かった。
ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。