ガウガ、ガウディ、ガウエスト!!!
青雷はエルフの王子達が無事? に帰った事を主人様に伝えた。そして、取り残されたマランは紅姫に贈るための指輪と花束を買いに、自力で国へ帰ったのでした。
凪はイデアに抱きつかれながら、居間でチェルーシルと話をしていた。クティスは庭で紫水の布団の上で寝転がって遊んでいた。
「エルフの王子様ってクソなのね」
「はい、クソ野郎です」
「で、そういえば、チェルーシルさんイデアさんの事が好きだったの? チェルーシルさんの場合、私が好きなのはハチミツですって言うと思ってた」
「私も驚きました。チェルーシルすみませんが、私が愛しているのは凪さんなのです。貴方はとても素晴らしい女性ですが、貴方の気持ちを受け取ることはできません」
「いえ、私はイデア様の事を愛していませんし、こう言えばイデア様に王子の怒りの矛先が向かうと思ったので」
「え? チェルーシル、なぜ私を巻き込んだのですか?」
「それは、今までクティス様に仕事を押し付けて自室でずっと辞表ばかり書いていたではないですか、クティス様は、毎日肉球判子を押し続けて肉球が真っ赤になって、洗ってもなかなか落ちなくなってしまったのですよ。それに、仕事ができると分かるとクティス様に何でもかんでも押し付け初めて、クティス様が可哀想です。なので、王子の相手はよろしくお願いしますね」
「なっ! 嫌ですよ。あいつ面倒なんです。凪さぁぁん私、これからここに住んでも宜しいでしょうか?」
「国に帰って仕事してきなさい」
「嫌です!嫌ですぅうううう! チェルーシル今回の件で減給は確定ですからね!」
「それじゃあ、私がその減給分のハチミツあげるわね」
「イデア様、減給とは言わずに無給でお願いします。そしたら、ハチミツを沢山手に入る」
「やっぱり、ハチミツに恋してるわね」
「いえ、凪さんこれは、ハチミツに取り憑かれているのですよ」
「それで、チェルーシルさんにお願いしたいことがあるのよ」
「お願いですか?」
「ラヒートさんのお世話をしてもらいたいの」
「魔王様の恋人ですね。かしこまりました」
「了承してくれてありがとう。ここの子達はリリアーナにいい思い出がないみたいで、ラヒートさんのお世話を嫌がるのよね」
「まぁ、敵対していますし、仕方ないことなのではないですかね」
「それで、イデアさんにはゴウライさんの記憶で現れた白衣の男の素性を調べて欲しいのよ」
「えぇ、オビリオンさんとも話したのですが、白衣の男を指名手配する事になりました」
「まぁ、そうなるわよね。藍介の話だとここに居た精霊ではないみたいよ」
「リリアーナは何処であの男と出会ったのでしょうか?」
「分からないわ。ラヒートさんが目覚めたら少しは情報を聞き出せると思うけど、緑癒が言うにまだ数日は目を覚さないみたいだし、こればがりは、気長に待つしかないわね」
凪はチェルーシルとの話を終わらせて、イデアと二人で居間で寛いでいた。
「凪さん、はぁあ、凪さん」
イデアは凪にくっついたままであった。
「イデアさん、離れてください。私に触れていいのは仕事を頑張ったクティスだけですよ」
「ガウガ!(がんばった!)」
庭にいたクティスは肉球を凪に見せた。
「クティスは偉いわね。よぉーしよしよし」
凪は立ち上がり、クティスを撫でた。
「ガウガ!(頑張った!)」
クティスは両手の肉球をまた見せた。
「はいはい。偉いわね」
「ガウディ!(もっと頑張ったよ!)」
クティスはさっきよりも両手を少し上げて肉球を見せた。
「ガウエスト!!!(とっても頑張ったよ!)」
クティスは両手をより高く上げた。
「うんうん、沢山頑張ったのね」
「ガウガ! ガウディ! ガウエストォォオ!!!」
クティスは3つのこの言葉を何度も繰り返した。
「イデアさん、クティスは私に何を伝えたいのかしら?」
「えーと、ガウガ! は普通に頑張った。ガウディがガウガよりも頑張ったで、ガウエストがとっても頑張った意味だそうですね。疲れ切った時にこれを言うとなんか頑張れたみたいですね」
「じゃあ、私も今回の件とっても頑張ったから、ガウエスト!!! ね!」
「ガウ、ガウ」
クティスは首を横に振り、肉球を前に出した。
「ガウエスト!!!」
クティスは両手を高く上げた。
「あ、両手を上げないといけないのね。ガウエスト!!!」
凪はクティスの真似をしてあげた。
「ガウ!」
クティスは満足そうに凪の体に顔を摺り寄せた。
「これから、頑張ったらクティス語使わせてもらうわね」
「ガウ!(うん!)」
クティスは嬉しくて尻尾をブンブンと振ったのでした。
おまけ『森のピクニック』
蝋梅妃は菊姫と百合姫に誘われて、花畑で2人とピクニックをしていた。主人様から貰ったレジャーシートで3人は座っていた。
「それじゃあ、ピクニックを始めましょう」
「ピクニックって何をすればいいんだ?」
「食べて、話すると我は主人様から聞いたが、茶会と変わらないんじゃないか?」
「ふふふ、私は主人様からピクニックで定番の料理を作ってきたの! サンドイッチ!」
「おー!」
でも、出てきたのはパンではなく、お米で具材を挟んだ料理だった。
「これが、サンドイッチ!」
「本当はパンで挟むみたいなんだけど、パンがなくて、代わりにお米でやってみたの」
「どれどれ」
蝋梅妃がお米で作られたサンドイッチを食べた。
「うん! うまい! これは、唐揚げが挟まれているな!」
「あたしのは焼き魚! うまいな!」
「ほんと! 藍介さんに教わったかいがあったわ。どんどん食べてね! 朝早く起きて沢山作ったの! 玉子焼きも上手くできたの!食べて!」
菊姫の作った料理を沢山食べた2人だが、それでも、料理はまだ半分以上残っていた。
「なぁ、菊姫、あたいはこれ以上入らない」
「我も、その、うっ、頑張って食べたぞ」
「そんな、2人は少食なのね。もっと食べなきゃダメよ」
「これ以上、勘弁してくれ!!!」
「我ももう無理じゃ!!!!!」
2人は食べれないと叫んだが、菊姫は2人に残った料理を無理やり食べさせたのでした。そして、本当に食べきれずに残った料理は森の虫達が美味しく頂いたのでした。
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