おまけ 灰土ブートキャンプ
これは、緑癒のダイエットのお話。
緑癒は蚕の時、食事を一切とっていなかった。いや、口がないから食事を摂ることができなかったのである。そして、虫人になって口があることで、幼虫以来の食事を楽しんでいたのであった。
緑癒は藍介の作る料理が美味しくて、3食そして間食、夜食など、沢山の美味しい料理をバクバク食べていた。
そして、ある日、主人様の家の庭で鍛錬をしていた灰土はふと、おやつをもらいに来ていた緑癒の身体を見つめた。
「緑癒様、太りましたね」
「えっ! そんなことありませんって! 私のお尻は完璧です!」
そう、緑癒は太ったのであった。元々、緑癒は普通の蚕より遥かに大きな体格をしていた。それは、幼虫の時、他の人達よりもめちゃくちゃ葉を食べまくっていたからであった。
緑癒の細かった体のラインは無くなり、ズボンに贅肉が乗り、何故かお尻の美しさはそのままだったが、その他がボリュームアップし、顔を若干太くなっていた。
「僕のこのお尻で主人様をメロメロに」
「緑癒、今日のおやつはクッキーですよ」
大量のクッキーを手に持った藍介が緑癒にクッキーを渡した。
「藍介様、そんな大量のクッキーをなぜ緑癒様に渡すのですか?」
「緑癒が私の料理を美味しいと褒めてくれるので、つい、沢山使ってしまうのですよ」
だが、藍介の本音は違った。
藍介は自分よりもイケメンな緑癒に嫉妬をしていた。そして、そのイケメンを陥れるには、太らせる事が簡単だと考え、緑癒に渡す料理は全てハイカロリー、最初はこの量を緑癒は食べ切れるのかと心配していた時もあったが、緑癒はそれをペロリと完食してくれたので、心配する必要が無くなった藍介は緑癒を太らせる料理を作り続けていたのであった。
「それでも、緑癒様の健康を考えたら流石に食べ過ぎですよ」
「僕は健康体そのものですよ!」
「それでしたら、緑癒様、主人様の家の外周を走ってみてくれませんか?」
「良いですとも」
緑癒はいつもよりも重たくなった体のせいで、外周の半分行ったところで力付き、地面に倒れたのであった。
「やはり、緑癒様には痩せてもらわないといけませんね」
「そんな、僕は太ってなんか」
「走れない時点でダメです。食事制限、そしてダイエットメニューを考えますので、明日庭に来てください」
「そんなぁ」
そして、次の日、緑癒は主人様の元へ行くのを悩んでいた。
「主人様に会いたいのに、灰土さんに見つかったら僕は、僕は、灰土さんに殺されちゃうかもしれません。うーん、灰土さんに会わないようにする為にはどうすれば良いのか」
1人教会で悩んでいると、灰土が教会にやってきた。
「緑癒様! さぁ! 運動をしましょう!」
「なっ!!! 庭で待ってるはずじゃ」
「呼びに行かないと絶対に来ない気がしたので、さぁ、やりますよ!」
「嫌だ! 僕は運動したくない!!!」
緑癒は灰土に抵抗したが、灰土の鍛え抜かれた筋肉の前には敵うはずもなかった。
庭には主人様、紫水、花茶、ライネルが横に一列になって並んでいた。そして、DJ蜘蛛も参加していた。
「灰土! 準備できてるわよ!」
「花茶ダイエット頑張る!」
「灰土さん! これはどんな鍛錬なんですかね!」
「俺は〜、ダイエット必要ないと思うんだけどな〜」
「紫水の場合は体が細すぎる。少しは筋肉を付けた方が良いぞ」
「僕にも筋肉ありますから、離して! 離してくださいよ!」
緑癒はふくよかなお腹を灰土に見せた。
「緑癒様、それは筋肉ではなく、脂肪の塊です。今からその不必要な脂肪を燃焼させますよ!」
「ひぇぇええええ」
「ミュージックスタート!」
「オッケー灰土様! 最高に盛り上げていくぜ!!!」
DJ蜘蛛はノリノリで音楽を流した。
灰土は手本になるように緑癒達の前に立った。
「今から、脂肪燃焼鍛錬を開始する。皆、頑張って俺についてきてくれ!」
「おー!」
「それじゃあ、まず最初にウォーミングアップをする。これをすればこの後の鍛錬のパフォーマンスが高まり、怪我の予防にもなる」
「おー!」
ウォーミングアップをして、体を温めた。
「音に合わせてジャンプするぞ」
灰土が小刻みにジャンプしているので、ダイエット参加組は灰土の真似をした。
「ジャンプするだけなら簡単ね」
「花茶は! さいきょー!」
「おい、花茶、腕あっただぞ」
「ふっふっふっ、き、きついですぅ」
「緑癒〜? まだ飛び跳ねてるだけなのに〜、疲れてんの〜?」
「よし次はジャンプをしながら、両手を上げた時に足を開き、両手を下げた時に足を閉じる。それを30秒間繰り返すぞ」
「おー!」
灰土が手本を見せて、その後に続いていった。
「これ、結構きついわね」
「主人様、楽しいね!」
「序盤って感じだな」
「主人様〜、頑張れ〜。緑癒〜、ズボン下がってきてるよ〜」
「はぁっ、はぁっ、ふぅ、はぁっ、はなし、かけ、ないで、くだ、さい!」
そして、15秒のインターバルの後、様々な運動メニューを30秒運動、15秒休憩を繰り返し、30分間やり続けた。
凪は10分で脱落、紫水は20分ぐらいで動かなくなり、最後までついていったのはライネルと花茶だけであった。肝心の緑癒はというと、4分で脱落していた。
「緑癒様、これではダイエットの意味がないじゃないですか」
「僕はダイエットなんか望んでません! 主人様! 僕は今のままがとってもカッコいいですよね!」
「緑癒は前より太ったと思うわよ」
「え」
主人様の太ったと言われた緑癒は何も言えなくなってしまった。
緑癒と灰土以外は庭から離れた。取り残された緑癒は灰土にお願いをした。
「灰土さん、僕のダイエット手伝ってくださいぃい!」
「主人様の一言がやはり、応えたんだな」
「ふぇえええん! 僕、頑張って痩せますから、主人様!!! 僕を見捨てないでぇええ!!!」
一月後、灰土は見事、緑癒を痩せさせたのでした。
「痩せていても、気を抜いてしまったらまた元に戻ってしまいますからね」
「灰土さんありがとうございます! これで、主人様に僕のお尻を愛してもらえます!」
「あのままじゃ、絶対リバウンドするな。よし、俺が緑癒様を見張るとしよう!」
灰土は鍛錬と付け髭収集以外に緑癒の体型監視が新たな趣味になったのであった。
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