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おまけ ハリヌンの楽園

 エルフの王子とマランを抜いた護衛達は朝食の準備をしていた。


 森に少しだけ入り木の枝を拾い、携帯していた食料を焚き火で焼いて食べていた。


 エルフ達の近くの岩の上には小さな家が建てられていた。


 本来であれば精霊は食事が不要なのだが、動物の姿をしている精霊は味覚を持っているため食事を楽しむ個体が存在している。そして、ハリヌンはその食事を楽しむ精霊なのである。


 タキンの趣味はハリヌンの洋服なり、ハリヌンハウスの家具作りなど小道具を作るのが好きな為、野宿していてもハリヌンにはハリヌンサイズの立派な家で寝泊まりし、食事はタキンが毎日準備している。


「ハリヌン、今日のご飯はトカゲのステーキ、ミディアムレアだ」


「きゅっきゅっきゅー」


 ハリヌンは椅子に座り、机の上に皿が置かれ、タキンはトカゲのステーキを皿に乗せた。


 ハリヌンは器用にナイフでトカゲステーキを細かく切り、フォークで刺して上品に食べていた。


「ハリヌン美味しいか?」


「きゅっ、きゅ、きゅ、きゅーうん」


「レアの方が良かったか。今度からはトカゲステーキはレアだな」


「きゅーきゅきゅ!」


「何、まだ食べたいのか。そうだな、さっき森で捕まえたミミズをデザートにするか」


「きゅー!!!」


 ハリヌンはさっきまでの上品な食べ方を忘れ、タキンの手に掴まれているミミズに食らいついた。


「やはり、料理するより生き餌の方が好きなんだな」


「きゅ、きゅう、きゅううん、きゅ」


「たまには野生的な食べ方をしたいか。そうだな、たまには、ん! ハリヌン!」


 タキンはハリヌンのお腹が太っていることに気付いてしまった。


「すまない、ハリヌン、食べさせ過ぎてしまっていたか、これからは食事量を減らさねばならないな」


「きゅ!? きゅうーん、きゅうーん」


 ハリヌンにとって食事量を減らされるのは辛い事だった。


「それなら、食事量を減らす以外だと運動だな」


「きゅ! きゅっきゅーん!」


「歩きたいのか、分かった。運動するのであれば減らさないでおこう」


「きゅーう」


「遠くまでいっちゃダメだぞ」


「きゅ、きゅっきゅーん!」


 ハリヌンは家から出ると、テクテクと森へ向かった。


 魔蟲の森はその名の通り、蟲、そう、大きな虫や小さな虫まで多種多様な虫が生息している。そう、まさに、ハリヌンにとって魔蟲の森はご飯だらけ、運動のつもりで森に入ったが、ハリヌンにとって魔蟲の森は楽園であった。


「きゅ!!!!! きゅきゅきゅきゅうーん!!!」


 ハリヌンは木の葉のしたに隠れているミミズを食べた。


 ハリヌンにとって魔蟲の森に生息しているミミズが今まで食べてきた中で一番美味しかった。


 沢山いるミミズを前に、ハリヌンはミミズを食べ始めた。1匹、2匹、そして、15匹食べたぐらいで、お腹がいっぱいになり、重くなった体で一生懸命タキンの元へ帰った。


 タキンは森から帰ってきたハリヌンを見た瞬間、ハリヌンのお腹がより大きく膨らんでいることに気付いた。


「ハリヌン、もしかして、森でご飯食べてたのか、俺との約束は森を散歩するだけだった筈だぞ」


「ぷげっぷ、ぎゅ、ぎゅうぎゅううん」


 お腹いっぱいのハリヌンは普段の鳴き声よりも低くなっていた。


「昼と夜ご飯は禁止だ。少しは反省しろ」


「ぎゅ、ぎゅうううううん」


 ハリヌンは目を潤ませた。


「くっ、そんな目で見るな。痩せるまで食事量を減らし運動をしてもらう」


「ぎゅううううん」


 ハリヌンは目で訴えた。


 タキンはハリヌンの為と考え、心を鬼にしてハリヌンのつぶらな瞳攻撃を耐え切った。


 その後、マランが帰ってくるまでハリヌンは、タキンが考えた運動メニューにそって運動していたのであった。


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― 新着の感想 ―
目の前にご馳走があったらね(笑) ペット?の体調管理は自分との戦いでもあるのでした。 ……イモリの黒焼きはいかが♪
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