チェルーシルの精霊
青雷の背に乗って洞窟に侵入したマランはチェルーシルの説得方法を考えていた。だが、1人で考えても王子の日頃の行いのせいで何度も脳内にいるチェルーシルに断られてしまっていた。
「くそぉ、これも絶対無理だ!!!」
「マランさんどうしたの? もうそろそろ朝になると思うけど、マランさんちゃんと寝た?」
「俺は何日か寝なくても動けるように訓練したから大丈夫だ、青雷の方こそあんな時間に1人で森に出ても良かったのか?」
「マランさん凄いね! 僕は大丈夫だよ! 僕強いし、僕に喧嘩売ってきたらやり返すだけだしね!」
「お、おう。なぁ、青雷、俺と一緒にチェルーシルさんの説得をしてくれないか?」
「僕はチェルーシルさんに会わせてあげるだけだよ、それ以上はマランさん次第だよ」
「そこをなんとか、王子のせいでチェルーシルさんを説得できるか不安なんだ」
「チェルーシルさんから話は聞いてるけど、あの王子がチェルーシルさんが大切にしていた精霊を奪ったの?」
「あれか、奪った。まぁ、そう捉えられて仕方ないことをしたからな。少し話が長くなるかいいか?」
「うん、いいよ!」
「じゃあ、エルフにとって精霊は大切な相棒みたいな存在でな、家族とも言えるな。そして、王族と結婚する事になった者達は今まで連れ添ってきた精霊と別れ、王族に仕えている精霊と再契約しないといけないんだ。それで、突っ走った王子が、勝手にチェルーシルさんの精霊との契約を解除して、王族の精霊と再契約させようとしたんだ」
「精霊との契約って本人以外が契約解除できるの?」
「あぁ、王族に仕えている精霊はどれも強力で、普通の精霊じゃ太刀打ちできない。精霊は契約者を守るという事で生まれた時に親が契約させるんだ、そして、成人して親ではなく本人が精霊と再契約する事によってより強い精霊との繋がりを得ることが出来る。が、今回の件では、王子はチェルーシルさんを説得したのではなく、彼女と契約した精霊を説得して、精霊から契約を解除させたんだ」
「どうしてチェルーシルさんの精霊は王子の説得に応えたの?」
「簡単さ、王族の精霊は強大な力を持つ、その力を使えれば彼女は今よりも強くなり、彼女を守ることができる。だから、精霊は自ら身を引いたのさ」
「チェルーシルさん、奪われたって言ってたけど、そういう事だったんだ。もう一度チェルーシルさんの精霊さんと契約はできないの?」
「それは、難しいな。成人して再契約した精霊なのに、自分から契約を解除、いや、破棄が正しいか。精霊としても自身から契約破棄をした場合、罰則がある。確か、あ、そうそう、普通の精霊なら下位精霊になって自我が保てなくなってしまったりするみたいだな」
「自我が保てなくなる? えーと、それは、つまり、ん? どうなるの?」
「今までの記憶がなくなり、話せなくなるって感じかな」
「それじゃあ、もし精霊さんを見つけても」
「チェルーシルさんの記憶は無くなっている可能性があるし、そもそも、話しかけれるかも不明だな」
「そんな、王子はやっぱり最低な奴だな! チェルーシルさんには会わせなくない!」
「そんな、こと言うなって、この問題は当人で解決しないと終わらない問題だ。逃げ回ってばかりじゃ後々面倒が増えるだけだ。それなら、今回でこれを終わらすことができれば、俺もこの面倒なストーカー行為を終わらして、仕事が楽になるかもしれないし」
「チェルーシルさんが逃げ回らずに、実家に帰ることも出来る。って、事だね」
「そういう事だ、だから、青雷には俺の説得を手伝って欲しいんだ」
「分かったよ。後少しで4層目に着くよ」
「ありがとうな」
青雷とマランは4層目の湖に着いたのであった。
そして、マランは運命の出会いがあったのであった。
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