マランと化け物 後編
マランは今までの愚痴を全て青雷に話した。仲間が自分に対する扱い、王子のストーカー行為の手助け、精霊が自分を有能に仕立て上げゆっくりと布団の中で眠れない事を自分が抱えていたストレスを全て吐き出した。
「うんうん、そんなことがあったんだね。マランさん大変だったね。僕もね、仕事をしない魔王様を拘束したり、仕事から逃げ出した魔王様をオビリオンさんと2人で探したり、大変だったんだよ」
「青雷も大変だな。なぁ、本当に青雷は魔王様と関わりがあるのか?」
「僕の話を疑うの? マランさん酷いな僕が嘘つくように見える?」
「いや、青雷が良い奴なのは分かったけど、一国のましてや、魔王だぞ、そんな強大な存在が青雷の言うだらしない男なんて信じられないんだよな」
「僕も初めは魔王って聞いてかっこいい! って思ってたんだけど、会って話してみると、残念な人でね。いや、力が強いのは分かるんだよ。でも、詰めが甘いというが、どこか抜けてるんだよねあの人。オビリオンさんが毎日頭を抱える理由も魔王様を見てたら納得できたんだよね」
「俺もさ、王子付きの護衛になれて王子のそばにいれば金が入るとばかり考えてたら、あの王子、女の尻を追いかけ続けてここまで来たっていうな。まさか、こんなに遠出するなんて思わなかったし、俺は楽して金を稼げるとばかり考えてたのに、俺が有能だとわかると、馬車馬みたいにこき使うんだぜ。酷いよな」
「マランさんお疲れ様、このジュース美味しいから飲んで」
青雷は青い水筒をマランに渡した。
「これ、どうやって使うんだ?」
「それはね、そこのボタンを押すと蓋が開くんだよ」
マランは水筒のボタンを押すと、蓋が上に開いた。
「うわっ! こんな水筒初めて見たぜ!」
水筒の中にはぶどうのジュースが入っていた。
「うま! めっちゃうまいなこれ! 唐揚げといい、焼きおにぎりもめっちゃ美味かったのに、このジュースもうまい! 俺、ここで暮らしたいわ」
「ここで暮らしたいの? それなら、僕が主人様にお願いしてみようか? マランさんすごく良い人だし、面白い人だから主人様気に入ってくれると思うよ」
「それは本当か! 青雷お願いだ! 俺はもう働きたくない!」
マランは青雷の足に縋りついた。
「うわっ! もう、働きたくないはダメだよ。主人様がいつも言ってるよ働かざる者食うべからずってね! 今は穴掘りの仕事があるからマランさんを雇ってくれるんじゃないかな?」
「穴掘りか、死ぬことはないよな?」
「死ぬなんて、ただ穴を掘るだけだよ。お風呂もあってご飯も寝床もそれに、主人様にお願いしたらなんでも欲しい物をくれるんだよ」
「欲しいものか、本当になんでも手に入るのか?」
「主人様の力ならなんでも作れるよ!」
「本当に? じゃあ、風の精霊をぶっ飛ばす事ができる道具って作れるのか?」
「風の精霊、あっ、シェーフさんか、マランさん、女性をぶっ飛ばそうとするのはいけない事だよ。主人様なら作れると思うけど、女性をぶっ飛ばすことに使うってわかると絶対に作らないと思うな」
「くそっ、思いっきりどっかに飛ばしたかったんだけどな」
『マラン? わたしを、どっかに飛ばすとか、どうゆう事なのかな? そうね。そうなのね。マランは今、空を飛びたいのね!』
シェーフは怒りに任せてマランを遥か上空まで彼をぶっ飛ばした。
「うわー、僕はいけないよって言ったのに、シェーフさんが怒るのも無理ないよ。これは、マランさんが悪いね」
『あら、この子本当に良い子ね。私の眷属つけちゃいましょうか』
シェーフはこっそり風の精霊を青雷に付けた。
「なんだろう、体がムズムズするな? あっ、マランさんやっと落ちてきた。死なないように巣を張ってあげよう」
マランは雲よりも高く飛ばされ、そして、落下した。地面に落下する直後に青雷の巣によってマランの命は助かった。
「ぜってぇ! 契約解除してやるからな!!! 覚えとけ!!!」
「女性に優しくだよ。母さんがマランさんをみたら、一発殴られちゃうよ」
「ふん! 俺はやられたことをやり返す男だ。女でも子供でも同じ事をされたら同じ分やり返すことこそが、真の公平ってもんだ!」
「マランさんって、イケメンで、要領よく器用で、良い人なのに、残念だよね」
「残念っていうな! 俺は楽して生きていける人生を目標としているんだ!」
「そっか、僕の目標は虫人になることかな。うん、マランさんは悪い人じゃないし、首飛ぶのは可哀想だから、チェルーシルさんに会わせてあげるよ。僕の背中に乗って、温泉まで案内してあげる」
「温泉? 温泉ってなんだ? まぁ、でも、青雷のおかげで首は飛ばずに済むな」
マランは青雷の背に乗って魔蟲の洞窟の中へ潜入したのでした。
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