ストーカープリンス 魔石精霊と出会う
青雷達が魔蟲の森に到着し、魔蟲の洞窟へ向かっている最中、エルフの王子と護衛達は風の大精霊シェーフの力によって魔蟲の森の手前まで辿り着いていた。
「もう、私、動けません」
ヘイルは地面に倒れた。
「ハリヌン、大丈夫か?」
「きゅぅ、きゅっ、きゅぅーうぅーん」
タキンの手の中でハリヌンは疲れ果て、丸くなる事ができずに大の字姿で頭を横に振っていた。
「空飛ぶのは楽しいですね! 亀吉を呼べば良かったな」
ヨーサは空を飛んだ事に満足していた。
「王子、大丈夫ですか?」
エビルは王子を心配し、マランはと言うと。
「もう、俺はお前と契約しない! 解約!解約!解約だ! 俺はもう帰る! チェルーシルさんを助け出すのはお前達でやってくれ!」
マランは怒り、1人で帰ろうとしていた。
『ふふふ、怒ってる姿も面白くて良いわ。でも、帰っちゃうと減給されちゃうから、私が働いてあげなきゃね』
シェーフが一人で森へ向かうとしていたので、マランは彼女を必死に止めた。
「やめてくれ、シェーフお前はもう、何もしないでくれ!!!」
「ここが、あの化け物の住処か、洞窟はこの森の先か?」
エビルの心配をよそに王子はピンピンしていた。
「ナーヴァ様って体力化け物かよ」
「さすが、大精霊と契約している方ですね」
すると、頭上から女性の声が響き渡った。
「あんた達! 一体何もんだい!!!」
王子達の目の前に現れたのは、鋭い目つきの女性、彼女の姿は蜂の特徴的なお尻の針と、体は黒と黄色、女性的な体つきをしていた。
「女!? て、翅が生えてる!? その姿もしかして、蜂か!」
「あんた達は何者だと聞いているんだ、返答次第ではあんた達を殺さなきゃいけないからね」
蜂女から発せられる強力な殺気を前に、護衛達は気を引き締めた。王子は殺気に臆せず、蜂女に話した。
「その前に人の名前を聞くのであれば、自身の名を言うのが通りではないか」
「分かった。あたいは魔蟲の森の北女王、百合姫。ほら、あたいは名乗ったからあんたの名前を教えな」
「俺はエルフの国王子、ナーヴァ」
「エルフ、そうか、あの女の連れって事だね。なんだい、また人が増えているじゃないか。主人様にお伝えしなければいけないな。分かった、ここであんた達を殺すのはやめよう。あたいの主人様に確認をとるから少し待っていてくれ」
「確認?」
百合姫と呼ばれる蜂女はその場から少し離れ何やら誰かと話している様子だった。
森から爆速で誰が王子達の元に走ってきていた。
「ふはははは!!! 俺様はアの魔の手から逃げ切ったぞ!!! とぉー!」
男は森から出るなり、エルフ達を見つけた。
「ん? 何故、エルフがここにいるのだ? おやおや、精霊が沢山いるな。同族と対話するのも楽しそうだな」
男は精霊と話すためにエルフ達に近付いた。
「あっ、どうして、氷月がここに!?」
百合姫は驚きのあまり声を出してしまった。
「初めましてだな! 同胞よ! 俺様は氷月! 魔蟲の洞窟の5層目の長であり、魔蟲の洞窟の主人、凪の夫である! そして、この世界に3体しかいない魔石精霊である! さぁ! 俺様の同胞達よ! 俺様と語り合おうではないか!!!」
神秘的な淡い光を放つ髪を靡かせた屈強な男はエルフには目をくれず、白蛇を見つめていた。
「なんと、本物の魔石精霊に会えるとは、申し遅れました。私はエルフの国を守護しています。名をヘルダイルと申します」
「ほぉ、なかなか強そうだな、俺様と手合わせをしようじゃないか!」
氷月と名乗る魔石精霊は魔力を解放し、その膨大な魔力にエルフ達は恐れ慄いた。
『氷月!!! 何やっているの!!! 今すぐに私の森へ帰ってきなさい!!! まだ、躾は終わってないわよ!!!』
氷月の側にいた者達全員に女性の美声が頭の中で響いた。
「何故、俺様の居場所が分かったのだ!?」
『花茶ちゃんにお願いをして、凪ちゃんに貴方の居場所を探させたのよ!』
「はぁっ! 百合姫の奴か!」
氷月は後ろに振り向き百合姫を見た。
「あたいのせいにしないでくれないかしら。そもそも、勝手に木を倒す貴方の方が悪いのよ」
「くぅ、それは、獣と遊びたくてつい」
氷月の足元から蔦が生えた氷月の体に巻きついた。
「アよ! やめてくれ! 俺様は反省したのだ!見逃してくれ!!!」
『無駄よ。氷月は5日間、花茶ちゃんのダンスレッスン、ボイスレッスンそして、洋服作りを手伝うのよ』
「俺様がそんな事できるわけないだろ!!! 嫌だ、俺様は遊びたいのだ!!!!! ぐぁぁぁああ!!! こんな退場の仕方があるのぐはぁっ! ぺっ!ぺっ! 土が、口に入るぅううう」
氷月は逃げようと必死にもがいたが、そのまま地面の中へ消えていった。
エルフ達と精霊達は目の前の光景に頭の処理がついていけなかった。
「こほん、えーと、主人様に確認をした所、あんた達はこの森に入ることを禁じられているわ。さぁ、帰った! 帰った! 本来なら殺すけど、主人様が生かせとの命だからね、あんた達命拾いしたな、ほら、帰れ、帰れ」
「すまないが、ここにチェルーシルがいるのか」
「いるけど、あんた達には関係ないわ。帰らないと言うのなら、一日だけ猶予をあげるわ。一日経って帰ってなかったら、あたいがあんた達を殺すわ。それじゃね、森へ入ったら問答無用で殺すから」
百合姫はそう言い放つとエルフ達に背を向けて森の中へ帰った。
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