ストーカープリンス 護衛と精霊
風の精霊シェーフの力によって空へ飛ばされた王子一行は青雷達が休憩している岩場まで飛び、王子達は自身の魔法を使い無事着地をした。
「ここが、化け物のいる岩場だな、チェルーシル!!!」
「あっ! ちょっ!? ナーヴァ様、お静かに大声を出されてしまったら気付かれてしまいます」
エビルは慌ててナーヴァの口を抑えた。
「それも、そうか。よし、お前達であの化け物は倒せるか?」
「いいえ、あれは強すぎます。魔力量も高く、あの巨体、我等が束になっても勝てるかどうか」
「そうそう、俺達は隠密には長けているが、真正面からの戦いには向いてないしな」
すると、5人の護衛の中の唯一の女性であるヘイルが話した。
「マランの精霊の力を使い、上から攻撃するのはどうでしょうか?」
「おい、ヘイル俺じゃなくてお前の精霊を使えば良いじゃないか」
「私の精霊はキレやすいので、扱いがちょっと。そうだ、ヨーサ、貴方の水の精霊であれば、あの化け物を拘束できるんじゃない?」
ヘイルは隣にいた男に話しかけた。
「水がなければ呼べれないから無理だ。そもそも、ここは岩場、エビルの精霊なら存分に力を奮うことができるんじゃないか」
エビルの首元にいる小さなリスを手に持ち、リスが目を回しているのを皆に見せた。
「私の精霊は、この通り、飛んでいる時に目を回してしまい、動けなくなってしまっています」
「あら、リーちゃん可哀想に」
「この状態じゃ動けないな」
「そうなると、残りは、タキンお前の精霊は使えそうか?」
ナーヴァは今まで沈黙だった男に話しかけた。
「あの化け物と俺は同属性、俺の精霊はあの化け物の力に怯え、丸まってしまった」
「きゅーぅ、きゅぅーぅ」
タキンはハリネズミの姿をした精霊は丸まっている姿を皆に見せた。
「ハーちゃんも可愛い。どうして、私の精霊はあんなに怖くて暴れん坊なのかしら」
「いや、お前がバーニンを怒らせているんだろ」
「私はバーニンちゃんを可愛くしたいの!」
「おい、お前達、話が少しずつズレていってないか? 精霊自慢をしているわけじゃないだろ」
「それなら、ナーヴァ様の精霊を使えばよろしいのではないでしょうか、ナーヴァ様の精霊、ヘルダイル。王家一の強さを誇ると噂で聞いた事があります」
ヘイルはナーヴァに聞いた。
「あー、あいつはな、その、うん。正直に話す。ヘルダイルと喧嘩をしてしまったので奴を呼び出すことは出来ない」
「精霊と喧嘩してたのかよ!」
「ふん! あいつが悪いんだ、チェルーシルが可哀想だからこれ以上付き纏うのはやめろとか、仕事が疎かになるのは良くない。彼女を思うのは良いが、少しは国を見てくれだの、俺に説教を始めてな」
「ヘルダイルさん、あんたがどれだけ大変だったか、俺にもわかるぜ」
マランは王子の話を聞いて、ヘルダイルに好感を持った。
「だが、仕方ない。ヘルダイルを呼ぶしかないようだな」
王子は懐から短剣を取り出すと、手のひらを切り、自身の血を地面に落とした。
「王家に仕える精霊、ヘルダイルよ、我との血の契約によってここへ現れたまえ」
地面に落ちた血は魔法陣を形成して、そこから、白い蛇が現れた。
「王子よ、やっと仕事をしてくれ、あれ? ここはどこでしょうか?」
白蛇は辺りをキョロキョロと見渡すと、首を傾げていた。
「王子よ、ここは一体? 確か、公務で魔王城へ向かい、先の件を終わらすと言っていたのではなかったのですか?」
「それは、後だ、先に俺の愛しの妻であるチェルーシルを助けるのだ」
「いや、チェルーシルは王子の妻ではありませんし、チェルーシルを助けると言っても誰から助けるのでしょうか? そもそも、私との喧嘩忘れたとは言わせませんよ。また、チェルーシルを困らせているのであれば、私は王子の言うことを聞きませんから」
護衛達は大精霊ヘルダイルがあんなに可愛らしい白蛇だとは考えていなかった。
護衛達は王子とヘルダイルに聞こえないように小声で話し始めた。
「ねぇ、ヘルダイル様って可愛い白蛇ちゃんだったのね」
「おい、ヘイル、ヘルダイル様の前でそんな事言うなよな」
「俺のハリヌンの方が可愛いぞ」
タキンは丸まっているハリヌンを4人に見せた。
「ハーちゃんが可愛いのは分かってるわよ」
「水さえあれば、僕の亀吉を見せてあげれたのに」
「お前だけ精霊の名前が変なんだよな」
「亀吉の何が悪いって言うんだ! 吉は鬼鏡国では、幸運って意味なんだぞ!」
「分かった、分かった、お前の大好きな鬼の国の言葉だな」
「僕の名前をヨーサではなく、与作って名前に変えたいな」
「母親が絶対に怒るぞ」
護衛達が話している間に王子とヘルダイルは喧嘩が始まり、ヘルダイルが王子の手を噛み、王子は驚いて手をぶんぶんと振っていた。
「喧嘩始まっちゃったよ。エビル、俺帰りたいんだけど」
「私達は王からナーヴァ様の護衛を任されている。だから、今、私達がやるべきことは、ナーヴァ様とヘルダイル様の喧嘩を仲裁する事だ!」
「まじかよ!俺は嫌だ!」
マランはエビルにフードを掴まれ強制的に王子と精霊の喧嘩の仲裁をする羽目になった。
残された護衛の3名は、タキンの精霊ハリヌンのお腹を触って暇つぶしをしていたのであった。
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