チェルーシルは逃げる
青雷、ラックル、チェルーシルが市場のケーキ屋さんで休憩していた。
「ここのケーキは毎日食べても飽きないね」
「流石に毎日は僕は食べたくないな」
「青雷様、それだと甘党とは言えませんよ。エブリデェイスイーツですわ」
「でも、もうそろそろ出発しないと洞窟に着くの遅くなっちゃうよ」
「それもそうですね。このコーヒーを飲み終わったら行くとしましょうか」
「ねぇ、ねぇ、僕もコーヒー飲んでみてもいい?」
「青雷君は苦いの嫌いじゃなかった?」
「でもさ、2人が飲んでるなら、例え苦くても挑戦してみたいじゃん」
「青雷様は好奇心が旺盛なのですね」
「じゃあ、僕の少しだけ飲んでみる?」
「いいの! やったー! どれどれ」
ラックルはコーヒーに細長いストローを挿して、青雷の口元へストローをかけた。
「ラックル君ありがとう。ちゅーーうー!!! うわっ!? にがぁ!!!!!!」
「やっぱり苦いのはダメか」
「青雷様はまだお子ちゃまですね」
「ヒック!? 僕はぁ、おこちゃまじゃないゾォ! 僕は強いんだゾォ!」
「あれ? 青雷君?」
「これ、苦いけど、ホワホワするねぇ! ちゅーーーうーーー!!! にがぁっ!!! でも、ホワホワするぅ」
青雷の異変に気付いた2人は青雷から少し距離をとった。
「チェルーシルさん、もしかして、青雷君にコーヒーを飲ませちゃダメだったのかな」
「あの様子。もしかして、青雷様は酔っ払っているんじゃ」
「ヒック! ラックル君! もう、コーヒー無くなっちゃったよー! 僕、もっと、飲んでみたいなぁ」
「えっと、コーヒーを飲み終わったら出発するって話だったから、青雷君もうそろそろ洞窟へ向かおうよ」
「えー、僕はぁ、もっと、にがぁいの飲みたいな」
「青雷様、洞窟の主人にお土産を届けに行きましょう」
「うーん、分かったよぉ。今度きた時、僕もコーヒー頼む」
青雷はゆっくりとした歩調で店から出た。
「良かったですわ。お会計は私が払いにいってくるので、ラックル様、青雷様の事をよろしくお願い致しますね」
「うん! 青雷君が暴れないように監視するよ」
青雷は体がホワホワしていい気分になっていた。
すると、1人のエルフの男が青雷の前に立った。
「おい! 化け物よ! 俺のチェルーシルは何処にいるのだ!」
「ん? んー? 化け物!? えっ!? 化け物どこにいるの!!! 僕が倒してあげるよ!」
「何を言っているのだ、化け物はお前じゃないか」
「えーっと、おじさんは僕の事を化け物だって言ってるの?」
「おじっ、おい、俺はまだ200代だぞ」
「200代? 200歳って事なのかな? えーと、200歳なら、おじいちゃん?」
「俺を舐めやがって、おい!この化け物を討ち取らえよ!」
エルフの男の後ろから、全身緑の服に身を纏った5人が現れた。
その瞬間、チェルーシルは大きな声で叫んだ。
「逃げるわよ!!! 風爆発」
「えっ!? なに!? うわあわぁぁぁあわ!!!」
チェルーシルの放った緑色の球は青雷の体の下で破裂し、青雷を空中に飛ばした。
チェルーシルはラックルをお姫様抱っこをして、青雷が空中に飛ぶ瞬間に青雷の背に乗り、市場から脱出した。
「急に、僕を空に飛ばすのはどうかと思うよ!」
「ごめんなさい、逃げるにはこの手しかなくて」
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!! 死んじゃう! 死んじゃう!!!!」
「ラックル君大丈夫、死なないよ。着地は僕に任せて!」
青雷は着地する瞬間に弾性がある蜘蛛の巣を空中に張り、跳ね飛び、そして、地面に近付くと巣を張って何度も跳ね飛び続けた。
「うぷっ、もう、僕、吐きそう」
「ラックル様、堪えてください」
「ねぇねぇ、チェルーシルさん僕を化け物だって言った人って誰なの?」
「あの方は、お恥ずかしながら、エルフの国の王子、でございます」
「へぇー、あの人がエルフの国の王子様かぁ、ん? それって、チェルーシルさんのストーカーだよね?」
青雷はチェルーシルからエルフの国の王子にされてきた事を話で聞いていた。
「えぇ、私はあの人には会いたくないんです。そもそも、私の目に映したくないほど、あの方が嫌いなのです!」
「うぷっ、お願い、少し、休憩、し、よ、うっぷ」
「ラックル様が耐えられなそうなので、あそこの岩場で休憩しましょう」
「分かった!」
青雷は岩場へ向かって飛び跳ね、ラックルは市場で食べたものを全て吐き出したのでした。
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