甘党同盟
時は遡り、魔王様達が魔蟲の洞窟へ出立する際、とあるトラブルが発生した。カーラーが無理やり荷車に夫のゴウライとミーライちゃんを乗せようとしていたのである。最初は魔王様が連れて行かないと断り、彼女達はその場から離れたと魔王様は考えていた。しかし、彼女は完全気配遮断を使用してラヒートが封印されていた魔石の後ろで隠れ、荷車に乗っていたのであった。そのことを気づいたのは、魔蟲の森が見えた頃、オビリオンはすぐさまイデアに頼み魔蟲の森の主人に人が増えたことを伝えたのであった。
そして、ラヒートが封印されていた魔石が荷車の大半を締めてしまったこともあり、大きくなった青雷は荷車に乗れずにいた。
「青雷、すまない!」
魔王は青雷に謝った。
「いいよ、それなら僕達は陸路で行くから」
「それも、いいですね! 僕も青雷君が一緒なら大丈夫です!」
ラックルは青雷と一緒に陸路から行くことに同意した。
魔王はもう一度青雷に謝り、先に出発した。
「私は帰らせていただきますね」
チェルーシルは大きな瓶を持っていたが、空路では行けないので屋敷へ帰ることにした。
帰ろうとするチェルーシルを青雷は止めようとした。
「えー! 主人様がチェルーシルさんが来るのを楽しみにしてましたよ」
「そうですよ、歩くのが嫌だったら青雷君の背中に乗せて貰えばいいんですよ!」
「いえ、歩くのは嫌ではないのですが、着くまでにかなりの時間がかかりそうじゃないですか」
「それでも、チェルーシルさん僕達と一緒に行こうよ、主人様がチェルーシルさんが来るならハチミツを沢山用意しておくわねって言ってたんだよ」
「そうですよ! 僕達と魔蟲の洞窟へいきましょう」
「ハチミツ‥‥。わかりました、分かりましたから、それでしたら、少し準備を整えなければいけませんね」
「僕がいれば魔物なんて、楽勝だよ!」
青雷は前足をシュッシュッと前に突き出した。
「いえ、魔物ではなく、準備していた食料が足りないと思うので、市場に行って少し買い出しをしたいのですが、よろしいでしょうか」
「そうだね! ご飯は大切だよね! よし! 僕も市場に行くよ!」
「はぁわぁわ!!! せ、せ、青雷君は市場には行っちゃダメですよ!」
ラックルは慌てて市場に行こうとする青雷を止めた。
「え? どうして僕は市場に行っちゃダメなの?」
「魔王城の人達は青雷君の事を知っているけど、市場にいる人達は青雷君が危険な魔物にしか見えないと思うんだ、青雷君には申し訳ないけど、市場に行くのは我慢して欲しい」
「そっか、そうだよね。最初来た時は小さくてみんな怖がらなかったけど、大きくなって一部の人達から怖がられているのは、僕でも分かっているよ。はぁー、僕は暴れたりしないんだけどな」
「青雷君ごめんね」
「いえ、せっかくですから、青雷君も市場へいきましょう」
「えー!? チェルーシルさん、さっき僕が言ったこと分からなかったの!?」
「いえ、ラックル様の言うことも一理あります。ですが、青雷君はとても大人しく、とても良い子です。なので、ラックル様の使い魔として一時的に契約を交わせば、市場に入場できると思います」
「チェルーシルさん僕は一緒に市場に行ってもいいの?」
「ラックル様の使い魔になってもらわないといけませんが、よろしいですか」
「うん! 僕、ラックル君の使い魔になるね!」
「そんな簡単に使い魔になっていいの!? ほら、使い魔とかになると、なんだろう、友達と言うより従者に近くなるから、僕は、友達を従者にしたくないな」
「ラックル様、一時的な契約ですから、市場から出たら契約を解除すればいいだけです」
「分かったよ。青雷君、ごめんね。少しだねチクッてするかも」
「いいよ! 市場楽しみだな!」
ラックルは使い魔契約陣を発動させ、青雷と使い魔契約をした。
「これが、使い魔契約か! うん、足がチクッてしたね!」
「痛くなかった?」
「大丈夫! それじゃあ! 市場に行こう!!!」
「市場へ行くのですから、食べ歩きでもいたしましょうか」
「うん! いいね!」
「僕いいお店知ってるよ! 海の生物が食べれるお店があるんだよ!」
「海鮮ですか、それも良いですね。私は、流行りのスイーツ店をお教えしますね」
「スイーツ! 甘いの僕好き!」
「僕も好きです! もしかして、この前オープンしたケーキ屋さんではないですか?」
「えぇ、ラックル様はご存知でしたのね」
「そりゃあ、僕はスイーツで体ができていますからね!」
「ラックル君ね、毎日、ケーキ一個は食べないと仕事で頭が回らなくなるんだって、特に仕事で疲れた時なんて、丸い大きなケーキを1人でペロリと食べちゃうんだよ。流石にあのケーキ一個は甘過ぎて食べきれないよ」
「ラックル様は甘党なのですね」
「チェルーシルさんも僕の同志だったという事ですね」
ラックルとチェルーシルは手を握り合った。
「僕も! 僕も!同志になりたい!」
3人は仲良く、市場へ買い物に向かったのでした。
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