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肉球衝撃波

 一方その頃、氷月に豊穣の森に連れ去られたクティスはと言うと、氷月と戦っていた。


「ガウガァァァアア!!!」


 クティスは右前足で氷月を突き飛ばした。


「ほう! なかなか、やるじゃないか! 俺様と戯れたいのだな!!!」


「ガウガアッ!」


 クティスは何度も前足で氷月を突き飛ばした。だが、氷月は全く効いていない様子だった。


「ふん! 俺様の体は魔石そのもの! このぐらいの打撃で俺様が負けるわけない!」


「ガウガ!? ガウガルルルガウガルルガ!!! (うそ!? 本気出してるのに効いてない!!!)」


「どうた、俺様は強いだろ!」


「ガゥガァ、ガウッ!!! ガウグルルガウガウガ!(どうして、そうだ!!! あの地獄の日々を思い出せば!)」


 クティスはイデアが押し付けた仕事を思い出していた。


 毎日、書類に肉球判子を押す日々、書類に目を通し押しちゃダメそうな書類を弾き、イデアの代わりに貴族に直談判されたりして大変だった。


 その、辛く苦しい日々を耐え抜いたクティスに、新たな力を獲得したのであった。


 クティスは今までのストレスを全て右前足に溜めて一撃を放った。


 その一撃は肉球の形の衝撃波を放ち、真正面から受けた氷月は後へ吹き飛び、3本の木が衝撃波によって倒れた。


「ガウガァ!!!(やったぞ!!!)」


「ぐはぁっ! 獣よ、なかなかやるな、だが、しかし! 俺様はほんの少ししかダメージを負ってないぞ!」


 クティスはもう一度肉球の衝撃波を放った。


 氷月はそれから避けて、クティスとの距離を詰めた。その時、とある女性の声がした。


「貴方達!!! 私の森で何をやっているのよ!!!」


 そして、2人は豊穣の森で怒らせてはいけない人物を怒らせてしまった。


「まずい、アだ!」


「ガウガ? (誰?)」


「って、氷月と駄犬じゃない。で、私の森で暴れているのはどうしてかな? この木を育てるのに何百年かかるか分かるかしら? ねぇ、氷月」


 アは氷月に詰め寄った。


 氷月はアから逃げようとしたが、ここは彼女のテリトリー、地面から蔦が生え、氷月の足に絡みついた。


 クティスは何が起こっているのがよく分かっていない様子だった。


「俺様は獣とただ戯れていただけだ!」


「へぇー、それで、なんで私から逃げようとしたのかしらね? 逃げるってことは、やましい考えがあったからよね? そうわよね」


「いやぁ、まさか、獣があの様な力を持っているとは考えていなかったんだ」


「その前に、私に何か言うことはないかしら?」


「えっ? アに言うことか? えーと、そうだ! ダンスのレッスンに力を入れるのはいいが、花茶の遊ぶ時間が減るのはどうかと思うぞ」


「そんなこと聞いてないわよ!!!」


 アは氷月の耳を掴みながら、自身の本体である巨大な魔石の前まで連れて行こうとした。


 氷月は抵抗したが、姉のアには敵わなかった。


「ガウ、ガゥガグルガ(あの、木倒してごめんなさい)」


「あら、駄犬はきちんと謝れるのね。偉いわよ。そもそも、貴方は氷月から逃げたいから抵抗しただけであって、この原因はこいつよね」


「ガウ!(そう!)」


「うん、それなら、氷月は躾をしないといけないわね。ふふふ、今まで魔石での姿しかなかったから直接的に躾なんて出来なかったけど、今のこの姿なら、沢山躾けることが出来るわね」


「ひぇぇぇ!!!!! 獣よ! 俺様を助けてくれ!」


「ガウガ(嫌だ)」


「そんなぁ、アよ俺様はただ獣と遊んでいただけで」


「さぁ、行くわよ、花茶ちゃんとライネルには申し訳ないけど、今日のレッスンはもう終わりね」


「嫌だぁぁぁぁあああ」


 氷月は必死に抵抗虚しく、アに連れて行かれた。


 クティスは氷月に何が起こるのか考えるのをやめて、イデアの元に帰ることにした。


「ガウガルルルガウ、ガウガウグル!(あまり考えないようにしよう、よし帰ろう!)」


 クティスは新たな力、肉球衝撃波を獲得したのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お~!苦悩の日々を過ごしたのが遂に報われました。後はこの技を鍛えてライバル打倒に役立てましょう。 姉とは偉大です……ホントダヨ。 [一言] この技を提案してみましたが採用されて良かったで…
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