ミーライの大冒険 後編
黒いムカデと白いムカデに助けられたミーライは2匹のおかげで無事に教会に着いた。
「パパ! たしゅける!」
「はいはい、助けるんだよな、もうそろそろ俺を離してくれないか?」
「やだ! ミーライくろ好き!」
「クスクス、くろ、女の子にモテて良かったね」
しろは笑いながら、くろを茶化した。
「嬉しくない!!!」
2匹と1人は教会のドアの前まで着くと、ドアが勝手に開いた。
「やっと解放されたわ!!!!! 疲れたー!」
教会から出てきたのは洞窟の主人、そして、その後ろを紫水、緑癒、そして、魔王は解呪に成功したラヒートを抱き抱えていた。
「あれ? なんで、ミーライちゃんがここにいるの?」
「あれれ〜、ちっちゃいのがいるよ〜? パパとママはどこにいるのかな〜?」
「パパたしゅけて!」
ミーライはくろを抱き抱えたまま、洞窟の主人の手を握った。
「パパ! たしゅけて!!!」
「ミーライちゃんどうしたの、ゴウライさんに何かあったの?」
主人はミーライの目線に合わせるために屈んだ。
「あのね、パパね、苦しいって、だからね、ミーライ、パパたしゅけたいの」
「ゴウライが苦しんでいるのね。藍介の力で記憶を取り戻せられなかったのかしら? いや、藍介は一応成功したと聞いたんだけどな?」
「パパ、たしゅけて!」
ズボンを履いた緑癒が主人に提案した。
「主人様、ゴウライさんをもう一度診てみてもよろしいですか?」
「そうね、診てもらってもいいかしら?」
「かしこまりました」
「それで、気になってたんだけど、ミーライちゃんはどうして、ムカデを抱きしめているのかな?」
「くろ! ミーライ、たしゅけてくれたの!」
「くろって名前を付けたのね。あれ? 白い子は何度かあってるけど、確か貴方は弟さんだっけ?」
「あ、はい。しろの弟のくろと申します。名前は仮なので、正式な名は持っていませんが、この名前で名乗らせていただきます」
「別に自分がつけたい名前を付けるのは良いことよ。うーん、仮って言うなら、私が貴方達2人に名前をつけてあげようかしら、ミーライちゃんを無事に連れてきてくれたお礼ってね!」
白いムカデは体をクネクネとくねらせ喜んだ。
「いいんですか!!! くろ! やったね!」
「その前に、俺は、解放されたい」
「まぁまぁ、くろはミーライちゃんのお気に入りだから、ミーライちゃんが気が様までそのままでいてくれないかしら?」
「主人様のご命令とあれば」
「2人の名前を考えるからちょっとだけ待っててね」
「はーい!」
「くろ、名前よかったね!」
ミーライはくろを思いっきり抱きしめた。
「その前に俺を解放してくれ!!!」
その30分ほど前の事、カーラーとゴウライが眠っている温泉施設では、カーラーの悲鳴が響き渡った。
「あなた!!! ミーライが、ミーライがいないの!」
「なんだって!?」
ゴウライは驚いて飛び上がった。
「ミーライはどこへ行ったんだ!!!」
ゴウライはすぐさま部屋から出て温泉施設内を高速で走り回った。
「いないぞ、女湯も見てきたが、ミーライがどこにもいない!!!!」
「藍介さんに話してみましょう」
「そうだな、俺はもう一回探しに行ってくる」
ゴウライは何度も温泉施設内を探し回ったが、ミーライはいなかった。
そして、カーラーは藍介の家に向かい、藍介に事情を説明した。
「ミーライちゃんが!? 今すぐに黄結姫さんに思念を飛ばしますね!」
藍介は黄結姫に思念を送り、ミーライちゃんの捜索をお願いした。すると、5分足らずでミーライちゃんの行方が判明した。
『藍介さん、ミーライちゃんは狩場に行き、ムカデに襲われたみたいです』
『ふぇっ!? それでは、ミーライちゃんは今、そのムカデのお腹の中ってことですか!?』
『いえ、ミーライちゃんは真っ黒なムカデと白いムカデの兄弟に助けてもらったみたいで、今は教会にいるそうです』
『よかった、お腹の中ですって言われたら、ここが戦場へと化しますからね。危なかった。ですが、ミーライちゃんが部屋から出た時にクティスさんは側にいなかったんですかね?』
『さぁ、クティスさんの情報も聞いてみますね』
『よろしくお願いします』
藍介は黄結姫との思念のやり取りを終え、情報をカーラーとゴウライに話した。
「よかった。ミーライは無事なのね」
「俺が、眠ってしまったから、ミーライが怖い目に」
「眠ることは仕方ないんだから、自分を追い詰めないで、それなら、私もミーライの側で寝ていたのに気づかなかった私も悪いわ」
「カーラー、すまない」
「謝るより、教会へ向かいましょう」
「教会はこちらです」
藍介はカーラーとゴウライを教会まで案内した。
「パパ! ママ!」
ミーライは父親と母親を見るなり、2人に駆け寄った。
「もう、ミーライ1人で出歩いちゃダメで、ねぇ、ミーライ、どうしてムカデさんを抱き抱えてるのかな?」
「ミーライ! 怪我はしてないか、痛いところは無いか!」
「パパ、ママ、ミーライね、くろと結婚しゅるの!」
「え?」
「けっこん!? ミーライがけっこん!?」
2人はミーライの発言に固まった。そして、ゴウライはその場で気絶してしまった。
「あなた!? 結婚って、ミーライ、くろって誰なの?」
「むしさん!」
ミーライは抱きしめていたムカデを母親に見せた。
「くろと結婚しゅるの!」
「ちょっと待て! 俺は結婚しないぞ!!!」
「貴方が、くろね。私の娘を拐かすなんで、許さないわ!!!」
「誤解だ!!!! 主人様、すみません!!! 助けてください!!!」
くろは必死に主人様に頼み込んだ。
しろはというと、主人様の腕に体を巻きつけていた。
「主人様、くろ、大事になってますね」
「そうね、まさか、ミーライちゃんがあんなこと言うなんて、親として驚くわよね。私も驚いたわ」
「しろいの早くそこからどいてくれないかな〜? お前なんで〜、主人様の体に触れてるのかな〜?触れていいわけないからね〜。ねぇ〜、なに勝手に主人様の腕にいるの〜? 主人様、俺〜、こいつのこと殺していいかな〜?」
「紫水、そこで座ってなさい」
「なんで〜、俺は主人様を守るために〜!」
「お座り!!!」
紫水は渋々その場に座った。
「そこで待ってなさい」
「そんなぁ〜」
「もう、白怖くなかったかしら?」
「主人様、紫水様の殺気が怖かったです」
「あら、震えてるじゃない。紫水、そこで反省しなさい」
「なんで〜! なんでこうなるの〜!!!」
ミーライの大冒険はゴウライ、カーラーにとって衝撃的な結果となったのでした。
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