レッツ! サーフィン!!!
私はゴウライさんが引き篭もる部屋に鍵を使って入りました。
「何だと!? どうやってこの部屋に」
「主人様が作る建物は物理、魔法攻撃不可の魔法陣がかけられているので、物理、魔法でのドア破壊は不可能です。ですが、私はこの施設の管理を任されている身、マスターキーを主人様に渡されているので、私ならどの部屋にも入れるのですよ!」
「それなら、今すぐに出ていってくれ、俺は、1人になりたいんだ」
「そうですね。1人になることも重要ですが、今のあなたの状態ですと、自分自身を追い詰め続け苦しみが増すばかりです。私としては、ゴウライさんには罪を償って欲しいですが、今ではありません。なので、おや、もうそろそろきますね」
「誰が来るんだ?」
「ひゃっほー! 藍介さん! 俺に何の用があるんだ!」
部屋のドアを勢いよく開けてネルガルが部屋に入ってきた。
「って!ゴ、ゴ、ゴウライ様!?」
ネルガルは慌ててサーフボードを体の後ろに隠した。
「ネルガル、ゴウライさんが来ているのは知っていたじゃないですか」
「いや、そうだけどさ、その、あんなことが起こって、正直、対面するのはちょっと、複雑なんだよな」
「それでは、ネルガルが来てくれたので、朝食ができるまで、運動をしましょう!」
「運動って、まさか、ゴウライ様にあれを!」
「そうですとも、ネルガルが得意なスポーツ! そう!サーフィンです!」
「ゴウライ様がサーフィン!? 俺はいいけど、ゴウライ様はそんな乗る気じゃないような」
「俺はサーフィン? とやらは、やらんぞ。俺はここで1人になりたいんだ」
「そんなこと言わず、さぁ、ネルガル、波を作り出して、ゴウライさんを湖まで押し流してください」
「俺が、そんな事やったらゴウライ様に殺されるんじゃ」
「その時は私が守りますから、さぁ! 思い切ってやってください!!!」
「藍介さんに頼まれたんじゃ、仕方ない! ゴウライ様、申し訳ございません!!!」
「何をする!? ぐはぁぁぁ!? どうして、水が俺を!?」
ネルガルは手袋の力を使い水を出して、ゴウライを波を使って押し流し部屋からゴウライを出した。そして、ゴウライは湖までそのまま波に連れて行かれた。
「藍介さん、本当に大丈夫ですかね?」
「大丈夫ですって、気が病んだら、外の空気を吸って体を動かすのが大切です。部屋に引き篭もることも精神を安定させるために大切ですが、今のゴウライさんには逆効果ですし、カーラーさんとミーライちゃんを見たら余計に罪悪感に押し潰されてしまうと思いますからね。そんな時は体を動かす。それしか、無いのですよ」
「で、俺はゴウライ様にサーフィンを教えればいいんですよね?」
「はい、よろしくお願いしますね」
「藍介さん、俺1人だと不安なので一緒に」
「私は他にやることがあるので、ネルガル頑張ってくださいね」
私はゴウライをネルガルに託すと朝食の準備をしているライネルの元へ向かいました。
「あー!ちょっと、藍介さん! って、足はやっ!」
「誰か! 俺を助けてくれー!!!!」
「あー、確かゴウライ様って泳げないんじゃ」
ゴウライの体は筋肉によって体が重く、水に浮かぶのが苦手だった。
ネルガルと遊ぶ約束をしていた金色丸が湖で溺れている人を見つけた。
「ん!? 誰か溺れてるだ!!! 助けんと!」
金色丸は溺れているゴウライを助け出した。
「大丈夫か? オラも初めの時、何度も溺れただ」
「すまない、助かった」
金色丸はネルガルの元へゴウライを運んだ。
「金色丸! 今日新たにサーフィン仲間が増えたぞ」
「ネルガル本当か! それは誰だべ?」
「金色丸が抱えている人だ! ゴウライ様って言って俺の上司だった人なんだ」
「そうなんたべか! あれ? 確か、ゴウライって人は森に侵攻してきた人だよな? まぁ、主人様が怒ってないなら、オラは別にいいだ」
「で、これから、サーフィンをやるんだが、金色丸には俺の補佐をお願いしたい」
「オラ、頑張るだ!」
「俺は何をやらされるんだ」
その後、ゴウライはネルガル指導の元、人生初めてのサーフィンを体験した。そして、1時間が経ち、3人はお腹が減ってきていた。
藍介はその頃合いを見計らって、おにぎりと唐揚げが入ったお弁当を持ってネルガル達の元へお弁当を届けた。
「運動をした後はご飯を食べる。それが、重要なのです。それでは、召し上がってください」
「さぁ、ゴウライ様、落ち込んでないで、食いますよ! いただきまーす!!!」
「オラ、この唐揚げ好きだ。でも、出来れば、樹液も欲しかったなぁ」
「俺は食わん!」
ゴウライはお弁当を食べようとしなかったが、腹の虫は正直だった。
ゴウライの腹から腹の虫が鳴き、恥ずかしさのあまりゴウライは頬をほんの少し赤らめた。
「ゴウライ様お腹空いてるんじゃないですか、これ、美味しいですから食べてください」
「俺は食わん!」
「そんなこと言わずに一口食ってみるだ。頬が落ちるぐらい美味しんだ」
「仕方ない。最終兵器です」
藍介は後ろを向き、大きな声で誰かを呼んだ。
「ミーライちゃーん! パパがご飯食べれないみたいなので、食べさせてあげてください!!!」
「はぁーい!」
ミーライを背に乗せたクティスがゴウライの元へ突進してきた。
「パパ! ご飯たべよ!」
「ミーライ、俺は」
藍介はミーライちゃんに唐揚げを刺したフォークを渡した。
「パパ! ご飯!」
ミーライは唐揚げを刺したフォークを父親の口に何度も当てた。
「ご飯! 食べて! ご飯!」
「分かった、分かった。食べるから」
ゴウライは観念して唐揚げを食べた。
口の中で溢れる肉汁、サーフィンで疲れ切った体に肉汁が染み渡った。
「うまい。これは、うまいぞ!」
「パパ! もっと食べて!食べて!」
ミーライはおにぎりを父親に渡した。
「これも美味いな」
そんな姿を遠くでイデア、オビリオン、カーラーが見守っていた。
「どうやって部屋からここまで連れ出したのでしょうか?」
「藍介さんに聞かなきゃ分からないな」
「でも、ミーライが楽しそうで良かったわ」
ゴウライは運動と食事によって気力を少し取り戻した。
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