解呪方法 前編
俺とオビリオンとイデアは魔蟲の洞窟の主人の家に入り、残りのクティス、カーラー、ゴウライ、ミーライは庭で話し合いが終わるのを待つことになった。
俺は今、魔蟲の洞窟の主人と会っている。彼女の後ろには洞窟の長達が全員参加している。そして、俺は絶賛長達に睨まれている。あの、屈強そうな男はやばい、この中で1番強いんじゃないだろうか。
「俺がさ〜、なんで〜、こんな奴を助けなきゃいけないわけ〜? 助ける義理なんてないよね〜。そもそも〜、魔王がなんでもやってくれるって言っても〜、主人様に魔王の力なんていらないよね〜。主人様なら欲しい物は自分で作れるし〜、俺達が寂しい思いなんてさせないし〜、そもそも〜、目の保養になる程のイケメンなんていないよね〜!」
後ろのヒョロ長は俺を睨んでいた。その、ヒョロ長こそが神龍水を作れる奴らしい。まぁ、そうだよな。あっちからしてみるとラヒートは敵であり、助ける必要がないからな。
「紫水、貴方の気持ちもわかるけどラヒートさんを目覚めさせて今回の事件の真実を聞き出せることが出来るのは重要だと思うわ。あのリリアーナが何故、私達にちょっかいをかけたのか、私はそれが一番知りたいわ」
「でも〜、主人様〜、あの女には〜、もう関わらないほうがいいんじゃない〜」
ヒョロ長の隣にいた緑癒さんが彼に話しかけた。
「紫水、僕はこの呪いを無くしたいと考えています。この世にこんな呪いが存在してはいけないのです。だから、力を魔王に貸すのではなく、僕に貸してくれませんか?」
緑癒さんが前に言った事は理解できるし、呪いを消そうと動いてくれるのはとても心強いな。
「紫水、緑癒様がここまでお願いするなど珍しい事だ、俺もラヒートさんの姿を見た瞬間、背筋が凍りつくような感覚があった。あれはこの世にあってはならぬ呪い、まさに緑癒様の言う通りだと俺は思えた」
「そう〜? 俺は〜、あの炎の方が怖いんだけどな〜」
「あれは、俺の師匠の炎だ、あっ、だから、怖がらなくて大丈夫です」
「お前になんか話しかけてないんだけど黙っててくれないかな〜」
「おい、紫水、客人に対して無礼ではないか!」
「無礼なのはあっちの方じゃない〜、俺が聞いていた話だと〜、ラヒートを助ける為にここにきたのに〜、なんか〜人増えてない〜。しかも増えたことを伝えるのが森へ着く3分前〜、あのさ〜、主人様を馬鹿にしてるってことなのかな〜」
紫水は殺気立っていた。俺がカーラーとゴウライを連れてきてしまった。いや、勝手に着いてきていたが正しいのだが、まぁ、俺でもこんな事されたら怒るよな。
「灰土、一度紫水を庭へ連れて行ってもらえないかしら」
「かしこまりました」
「なんで〜、俺は主人様を為を思って言ってるんだよ〜」
「ほら、少しは頭を冷やせ。怒るのも無理ないが、やり過ぎだぞ」
「うわぁぁぁ〜。主人様〜。やだ〜、離れたくない〜」
紫水は灰土に連れられて庭へ出ていった。
「カーラー、ゴウライの事は本当に申し訳ございません」
俺はカーラーとゴウライを連れてきたことを謝罪した。
「イデアさんからカーラーさんが私に会いたいと言う話を聞いていたからまさかねって思ったけど、今回は仕方ないんじゃないかしら、私は全く気にしていないわ。まぁ、私は気にしてなくても他の子達がどう思うかは分からないけどね」
「ありがとうございます」
「それで、緑癒、ラヒートさんの呪いを解呪できるのかしら?」
「それが、あまりにも強力な呪いの為僕一人の魔力では足りません。僕一人だけで解呪する場合だと、紫水の水があっても解呪までには半年はかからと思います」
「それは、魔力が原因って事かしら?」
「はい、僕の魔力量は長の中で3番目に多いです。まぁ、氷月さんは存在自体が魔力の塊なので規格外だと思うのですが、藍介さんの魔力量があったとしても、3ヶ月はかかります」
「私の魔力を解呪に使えないかしら?」
「それは、できますが、その」
緑癒さんが急に顔を赤らめた。
ん? なんで、緑癒さんの顔が赤いんだ?
「もしかして、緑癒! 主人様と」
後ろにいた男が慌てて会話に割り込んできた。
「主人様の魔力を使うには、主人様の魔力を直接、僕の体に取り込み、僕の魔力として変換しないといけません。ですから、主人様の魔力を僕が使うには、主人様と長い間、キス! しないといけないのです。その他にも、こ、交尾をする事で主人様の魔力を僕の体に直接取り入れることもできます!」
「交尾は却下。そもそも、私じゃなくても氷月の方が魔力があるんだから氷月にお願いしようかしらね」
後ろにいた男はいつの間にかいなくなっていた。
「氷月逃げたわね」
「あの、緑癒さん、凪さんが作った魔石を口に含むと言うのではいけないのでしょうか?」
「それだと時間がかかりすぎて常に魔力を使い続けることが出来ないですね。そもそも、魔石の魔力量にも限度がありますし、交尾よりも効率的に魔力を補給できるのはキス! の方が良いと思います」
「キスかぁ」
「その、紫水もずっと水を作り続けないといけないので紫水にもキスをしないといけません」
「解呪には凪さんのキス、キス、キス」
イデアが呪われたように小さな声でキスを連呼し始め、後ろにいた青色よりも濃い青い髪をした男は放心し、倒れかけ、小さな少女が男を介抱し始めた。
なんだ、この修羅場は!!! 俺はラヒートを助けて欲しいだけなのに、めっちゃくちゃ雰囲気が悪くなってないか!!! 頼んでいる側だが、ここにいたくない!!!
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