緑癒の診断
魔王は魔石の中へ封印されているラヒートを連れてきた。
フヨフヨと浮かぶ魔石の中に黒い涙を溢すそばかすの少女がいた。黒い涙は頬から落ちると漆黒の炎が涙を燃やしていた。
彼女を見た緑癒は驚いていた。
「うわっ、なんですかこれは、うわー、うわー。うーん、よく彼女は生きていますね。即死していてもおかしくないのに、炎の力によって生かされている。いや、呪いの効力を弱めているといった所ですかね」
「で! ラヒートは助かるのか!」
「医神の眼には確かに彼女の呪いを解く方法が書いてありますが、えーと、神龍水と言う珍しい水に彼女を浸し、僕の浄化魔法を使えば解呪可能と書かれています」
「神龍水? なんだそれ? オビリオン何か知っているか?」
オビリオンは首を横に振った。
「魔王様申し訳ございません。俺は知りません」
「イデアは?」
「私も聞いたことがないですね」
「そうかぁ、この水を探さないとラヒートを助けられないんだな」
「いえ、神龍水ならこちらにありますので、ラヒートさんは助かりますが、彼が協力をしてくれるかが、問題ですね」
「ねぇ、緑癒話を聞いていれば神龍水ってここにあるの?」
「はい、紫水が作り出す水こそが神龍水なので」
「紫水の水ね。ん? えっ!? 紫水が作る水ってそんなに凄そうなアイテムなの!?」
「えぇ、紫水が作り出す水は回復能力はありませんが、浄化能力があり、呪いに対して効果があります」
「まさか、紫水の水がまぁ、たまにお水飲ませてもらう時があるけど紫水が作るお水って美味しいのよね! 美味しい理由が理解できたわ」
「ラヒートが助かる! 助かるんだぁぁぁぁああ!!!やったー! やったーぜ!」
「魔王さん喜ぶのは早いですよ。ラヒートさんを解呪出来たとしても、体を動かせるようになるのは1年かかると思います。なので、1年間は魔蟲の洞窟で療養してもらいます」
「分かった! 俺もラヒートと共に1年間はそっちで暮らすことにする!」
「んなっことされたらこっちが、過労死してしまいますって!!!」
「魔王様はここで仕事をしてもらい、私がラヒートさんの療養を手伝いしますので、私が一年、いえ、一生を魔蟲の洞窟に移住すればいいだけの話ですね」
「イデア! 勝手に魔王軍を辞めようとするな! 俺の負担が、負担が、嫌だ! このおじさん誰って子供達に言われたくない!!!」
オビリオンは子供に父親だと忘れられる事に怖がっていた。
「魔王さんとイデアさんがここに泊まることは許可しないわ。そもそも、王が仕事を放棄なんてしちゃいけないわよ。イデアさんもクティスの肉球が真っ赤になっちゃうほど仕事させるなんて酷いわよ。イデアさんクティスに任せっきりにしちゃダメよ! ねぇ、クティス今まで大変だったわよね」
「ガウガ!!! ガウグルルルガウ! (ありがとう!!! 凪の言う通りだよ!)」
「凪さん、私は貴方のお側で貴方を愛したいのです」
「自分がやらなきゃいけない仕事を他人に押し付ける人は私嫌いよ」
「嫌い、私の事がき、ら、い」
イデアはその場で座り込んだ。
「なぁぎぃぃさぁぁん!!! そんな事言わないでください!!!! 私は、私は貴方を愛したいだけなのです!!!!」
「ガウガグルルガウバウガ(仕事を終わらせたら、褒めてもらえるのに辞表ばっかり書いているのが悪いんだよ)」
「くぅぅう、クティスの言う通りです」
「まぁ、ラヒートさんはこっちで預かるって事で、2日後に来る時に彼女の着替えとか色々必要な物を準備しておいてね。もうそろそろ、おやつの時間だから切るわね。魔王さん、オビリオンさんを困らせることをしたらラヒートさんを助けないからね。イデアさん、クティスに仕事を押し付けないこと、分かったかしら」
「はい。もう、クティスに仕事を押し付けません」
「魔蟲の洞窟の主人様はなんていい人なんだ」
「オビリオン、今までごめんな、俺ちゃんと仕事するよ」
「魔王様! 魔蟲の洞窟の主人様、本当にありがとうございます!!!」
「それじゃ、2日後ね!」
私は連絡を切って藍介の作ってくれたホットケーキを緑癒と一緒に食べた。
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