魔王の謝罪
そして、次の日の昼、イデアさんから連絡が来た。
連絡画面にはイデアさんと狼の獣人のオビリオンさん、そして、魔王が映っていた。
「この機会を与えてくださった魔蟲の森、魔蟲の洞窟の主人よ。誠にありがとうございます」
魔王の表情はカッチカチに固まっていた。
「魔王様、まず最初に謝罪です!」
「あぁ、本来、俺自身が話すべき内容を部下に任せてしまい。俺が貴方様を蔑ろにしていると思わせてしまった事を謝罪いたします」
「そんな、形式的な話し方じゃなくていいわよ。話しにくいんだったら普段の話し方で構わないわ。それに、私はそれほど怒ってわないわ。緑癒、彼の謝罪を受け入れられるかしら?」
「受け入れるも何も、あの、魔王と言うのは魔族の頂点にして、亜人族を束ねた偉大な王と伺っていますが、イデアさん、本当に彼が魔王なのですが?」
「緑癒さんがそう思うのも無理はないですね。この戦うことしかできぬ、夢見るこのお馬鹿こそが、私達エンデューブの王なのです」
「イデアさんとオビリオンさんでしだっけ、その、色々とお疲れ様です」
「えー!!! 俺そんなに馬鹿じゃないぞ!!!」
「魔王様の扱いが分かっていますね。是非とも緑癒さんには魔王軍に入っていただきたいものです」
「それって、俺をディスればいいってことなの! 俺王だよ! 魔族を纏め、亜人族を束ねた歴代最強の王だよ!」
「歴代って貴方以外に魔王の座にはいないと言うのに何を言っているのですが」
「緑癒様最高! 魔王様の扱い方手慣れてるね! さすが緑癒様!!!」
3人の後ろにいた青雷が笑うのを堪えていた。
「くっ、弟子までも俺を馬鹿にするなんて」
「魔王様は日頃の行いが悪いのですよ」
「くそっ! 俺を癒してくれるのはクティスぐらいだ!」
魔王はほんの少し涙を流しながらイデアの後ろで肉球を必死に見せていたクティスに抱きついた。
「クティス、クティス、俺をみんなが馬鹿にするんだ!!!」
「ガウガルグルルルガウ。ガウ、ガウグルルガウガ(日頃の行いが悪いからでしょ。今、僕は肉球を見せるのに忙しいから邪魔しないで)」
クティスは魔王の顔に肉球を押し付けて魔王を拒絶していた。
「クティス〜、クティスだけだ、俺に優しくしてくれるのは!」
「いえ、魔王様、クティスは魔王様に優しくなんてしてないですよ。そもそも、邪魔するなと言う感じですね」
「イデアさんが優秀な人材を探し回っている理由が理解できた気がしますね」
「えぇ、部下達が優秀じゃないと国の経営なんてできなそうな人ね」
「凪さんそうなのですよ! そもそも、八翼が国を回していますし、魔王様は面倒な仕事ばかり私に押し付けてきて、いつになったら魔王軍の辞められるのやら」
「イデアさんとオビリオンさんクティスもお疲れ様ね。それじゃ、本題に入りましょうか!」
「そうですね。ほら、魔王様嘆いてないで、凪さんと緑癒さんにお願いしたいことがあるんでしょ。魔王様が言わない限り話が進まないのですからね」
「分かっている。でも、初対面でましてや魔王に向かってあれは不敬だと思うぞ!」
「その前に貴方が相手方に不快な思いをさせたのですから、不敬とか言ってないで、本来の目的を話してください」
「オビリオンもイデアも俺に冷たいな」
魔王は深呼吸をした。
「凪さん、緑癒さん俺の大切な人、ラヒートを助けて欲しい」
「彼女を助けるにあたって私達になんのメリットがあるの?」
「もちろん、見返りは何でもする。だが、国が欲しいなどはできない。あくまでも俺自身が出来ることならなんでも聞くと言うことになる」
「主人様、この方になんでもすると言われても、何ができると思います?」
「緑癒、真剣にお願いしている人を虐めるのは良くないわよ。そうね、魔王さんが自分自身を犠牲にしてまで救いたいのでしたら、私は貴方の願いを承諾します。その見返りは、後でこちらで考えおきますので、ラヒートさんがどのような状態なのか確認したいので彼女を見せてもらえませんか」
「ありがとうございます!!! 今すぐに連れてきます!」
魔王は一旦その場から離れた。
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