獣には恋のライバルが多過ぎる
私は自室にて1万5枚目の辞表を書いています。私が辞表を書いている間に、仕事はクティスが代わりにこなしてくれました。
「ふぅ、これだけ書けば辞められるでしょう。もうそろそろ、凪さんに連絡でもしましょうか」
すると、クティスが右足の肉球を見せながら、私の部屋に入ってきました。
クティスの両足の肉球は元々黒かったのに、今は見事に真っ赤になっていました。
「ガウガァ〜、ガウグルルガウガァ〜。ガウガァウルガァ〜。(頑張ったよ〜、凪に連絡するんでしょ〜。頑張ったから褒めてもらおう〜)」
「クティスお疲れ様です。私もほら、この通り! これだけ書けば辞められますよね!」
「ガウグルルガウ(そんな事より仕事手伝ってよ)」
「クティス、凪さんの元へ行く為には魔王軍を辞めなくてはいけません。ましてや、ライバルが増えてしまった以上、ライバルと戦うにも、まず最初に凪さんのそばにいなくてはいけないのです!」
「ガウ、ガウグルルガウガ(分かってるけど、仕事はしなしなきゃね)」
「まぁ、まぁ、それでは凪さんに連絡しますか!」
「ガウ!ガウガウグルガウ!(うん! 凪に沢山褒めてもらう!)」
私は腕時計を使い凪さんへ連絡をしました。
私は身なりを整え、クティスは仕事を頑張った証である赤くなった肉球を上に掲げて頑張ったアピールをして凪さんを待ちました。
透明な画面から現れたのは、初めて見る2名の男性の顔でした。
「主人様、イデアさんから連絡きていますよ」
「おやおや〜、獣君お久しぶり〜。なんで〜、赤い肉球見せてるの〜? てか、肉球黒かったのに赤くなっているわけ〜?」
1人の男は割烹着を着ていて、もう1人は紫色の半袖を着ていました。
「貴方達は一体誰なのですか!!! 凪さん、もしや新たな襲撃者が、こうしてはいられません。クティス、今すぐに凪さんの元へ行きますよ!!!」
「ガウガルルルガウ、ガウグゥガウガウルルガ?(イデア待って、この魂って藍介と紫水じゃない?)」
「ん、この人間が藍介さんと紫水君ですか?」
「はい、虫人として進化した藍介です」
「お〜! 俺が〜紫水だってよく分かったね〜」
「え、あの、二人は本当に藍介さんと紫水君なんですか?」
「もちろんです」
「当たっり〜」
「凪さん! 凪さん! これはどういう事なのですか!」
「ガウガ、ルルルガウガ?(もしかして、ライバル増えったってこと?)」
「おや、イデアさんとクティスさんですね久しぶりです」
もう二人の男性がやってきた。一人は聖職者が着るローブを纏い、もう1人は両手に物を持ちながら腕を上下に動かしてきました。
「主人様、このダンベルもう少し重くしてもらえないでしょうか、そうですね。200キロが欲しいですね」
男の後ろから凪さんの声が聞こえました。
「200キロ!? そんなに重たいの作るのは危ないでしょ。うーん、それなら、危なくないように灰土にはトレーニング部屋でも作ってあげようかしらね」
「主人様! ありがとうございます!」
凪さんはやっと、私の事を見てくれました。
「あっ、イデアさん急に藍介達にあって驚いたでしょ、色々あって伝えてなかったわよね。繭になっていた長達がやっと羽化して、みんな虫人って言う新しい種族として進化したのよ」
「ガウガ!ガウ!ガウ!ガウガァ!(凪だ! 見て!見て! 頑張った!)」
「虫人ですか」
クティスは凪さんを見てはしゃぎだし、肉球を必死にアピールしていました。
私はと言うと、新たなライバル達の登場、いえ、前からライバルでしたが、人型ではなかった為、彼らを敵視していませんでした。そもそも、私の方がイケメンなので負ける訳がないのですが、それでも、急なライバルの登場に私は内心焦りました。
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