新たな種族 虫人 前編
私は普通に眠っていた。途中、誰かが私の布団に入ってきたけど、多分、入ってきたのは氷月だから、私は無視をしていた。
私は朝、目覚めると、目の前には知らない美男子が私の布団に潜り込んでいた。
「ぎやぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!?!?」
「ん〜、もう〜、主人様〜、朝からうるさいよぉ〜。でも〜、そんな主人様も可愛い〜」
美男子は私の体を抱き寄せた。彼の体の温もり、いや、ダイレクトに彼の体温が感じられた。そう、彼は真っ裸だったのである。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああ!!! この! 変態! 私の布団から出なさい!!!!」
私は布団を分取り、真っ裸の男から距離を取った。
「もう〜、主人様〜、俺やっと〜、主人様と交尾できる体を手に入れたのに〜、変態呼ばわりは辛いな〜」
「そんなの知らないわよ! 貴方は一体誰なのよ!」
「俺は紫水だよ〜」
「紫水? 何言っているの! 紫水はムカデなのよ! 人間じゃないわ!!!」
「だから〜、俺は進化して〜、新たな種族の〜、虫人になったんだ〜」
「新たな種族、虫人、貴方本当に紫水なの?」
「そうだよ〜。俺のこの姿かっこいい〜? シンカって言う神様に主人様の好みの体にして欲しいってお願いしたんだ〜。どうかな〜?」
私は真っ裸の紫水を観察した。
紫水の体は筋肉質というより細身で、ガリガリとはいかないけど、身長が高いから余計に体が細いのが、目立っていた。紫水、190cm以上あるんじゃないかしらね。髪は紫色で、彼の2本のアホ毛が体の胸まで伸びていた。顔は、ダウナー系のイケメンよね。紫水がもし人間だったらって考えた時にダウナー系が似合うと思ったのよね。
彼のアホ毛が触角のようにぴょこぴょこと動いていた。そして、よく見ると紫水の体が緑色の液体で濡れていた。
虫だった時の特徴が残っていないのよね。
「どう〜、俺かっこいい〜?」
「その前に服を着てちょうだい」
私はパンツと白い半袖と黒の短パンを紫水に渡した。
「え〜、服なんて着たくないよぉ〜、今まで裸で良かったのに急に服着てなんて〜酷いよ〜」
「人の姿になったんだから服きなさい!」
「は〜い。でも〜、これだけ着るね〜」
紫水はパンツだけを履いた。
「まぁ、そこだけ隠してもらえればいいけど、紫水はどうして繭になっていたの?」
「あ〜、それはね〜。急激な〜、進化に俺の〜、体が追いつかなくなっちゃうから〜、繭を使って守ってくれたみたい〜なんだ〜」
「青雷と同じね。分かったわ。他の子達も気になるから会いに行きましょうか」
「いいや〜、多分だけど〜、みんな主人様に会いたいと思ってるからここで待ってればみんな来るんじゃない〜。主人様〜、それまで〜、俺と愛し合おう〜」
紫水はパンイチ姿で私に抱きつこうとしてきた。私はそんな紫水を魔石の壁で私の身を守った。
「ぐへぇっ!? 主人様〜、俺もっと主人様をギューっとしたいよ〜」
「パンツ一丁の人に抱きつかれたくないわ!」
「え〜、そんなぁ〜、それじゃあ〜、服着るからギューしていい〜?」
「服を着てくれるなら良いわよ」
紫水はすぐさま服を着ると私に抱きついてきた。
「主人様〜、はぁ〜、主人様〜、小さくて柔らかくて抱き心地いいね〜、はぁ〜♡ もっと〜、もっと〜、主人様を感じたい〜♡」
人の姿をしていても、中身は紫水のままだった。
紫水に抱き付かれるの懐かしいわね。体が大きいから全身を巻きつかれているあの感覚に近いのかしらね?
私と紫水は庭でみんなが集合するのを待った。
待つよりもみんなに来て欲しいって伝えればいいんじゃないかしら? 黄結姫は繭から出ているのかしら?
私は黄結姫に向けて思念を送った。
『黄結姫! 黄結姫! 繭から出てきてる?』
懐かしい思念が送られてきた。
『はい! 主人様! おはようございます』
『黄結姫! 繭から出られたのね! よかった』
『主人様! 私、虫人と言う新しい種族に進化しました! 今主人様の家に向かってます!』
『黄結姫、申し訳ないんだけど、長のみんなに私の庭へ来るように伝えてもらえないかしら?』
『かしこまりました! みなさんにお伝えしておきますね』
『黄結姫ありがとう』
『いえいえ、少しそちらに着くのに時間がかかるのでもうしばらくお待ちください』
『気をつけてきてね』
『はい!』
黄結姫は会話が終わると長達に思念を送った。
6層目の長である、藍介と花茶は黄結姫の思念によって目覚めた。
「主人様の元へ向かわなくては!!!」
藍介は虫人に進化をして前世の人間だった時の姿になっていた。
藍介は走り出そうとした時、自分が裸なのに気がついた。
「裸じゃないですか!!! 布!布は! 無い! まぁ、そうですよね、今まで裸でしたから必要なかったですよね。いや、この姿じゃ主人様に変態と呼ばれることは確実。せめて下半身を隠せるものは! 本を使って隠しておきます? いや、本が汚れてしまう! 何か、いい物はないですかね」
藍介が下半身をどのように隠すのか考えていると花茶の声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!お兄ちゃん! 見てみて! 花茶! 人間になったよ!!!!」
10歳ぐらいの少女が裸で元気に藍介の元へ駆け寄ってきた。
「花茶!? 花茶なのですか!」
「お兄ちゃん!? お兄ちゃんも人間になってる! うわーい!!! 花茶とお兄ちゃん人間になった!」
「ちょっ、裸ではしゃがないでください! そうだ、花茶、大きな葉っぱを出してくれませんか?」
「大きな葉っぱ? こんな感じ?」
花茶は地面から大きな葉を持つ草を生やした。
「これです! 蔦もあれば服が作れますね!」
藍介は葉と蔦を使い即席の服を作った。
藍介は下半身だけを葉で隠し、花茶には沢山の葉を使ってワンピースを作ってあげた。
「お兄ちゃんすごい! すごい! ねぇ、ねぇ、花茶かわいい?」
「とってもかわいいですよ。それでは、主人様の元へ向かいましょう」
「おー!!!」
藍介と花茶は2人仲良く主人様の家へ向かった。
主人様の家へ向かう最中に花茶は藍介にあるお願いをした。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんが花茶よりも大きくなったから、お兄ちゃんの背中にのりたい!」
「おんぶという事ですね。いいでしょう! さぁ!私の背中に乗ってください」
「うわーい!」
花茶はジャンプして藍介の背中に飛び乗った。
何故か、藍介が歩くたびに藍介の足元からカサカサ、カサカサとゴキブリ特有の足音が鳴っていた。
「おや、私が歩くと足元からカサカサって音がするのですが、どういう事なのでしょうか?」
「うーん、花茶は分からない!」
そして、藍介の体力が少なく、5層目についた時には、藍介は疲れ切っていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「少し、休めば、歩けます」
「うーん、やっぱり前みたいに花茶がお兄ちゃんを運んだほうがいいか」
「そんな、事できませんよ。私は体が花茶よりも大きいのですよ。私を背に乗せるなんて、できないじゃ無いですか」
「それなら、お兄ちゃんを持てばいいんだよ!」
花茶は藍介を両手で軽々と持ち上げると、主人様の家へ走り始めた。
「いやぁぁぁぁああああ!!!! 早い、早い! それに、恥ずかしぃぃぃぃ!!!!」
「花茶は小さくなっても力持ち!!! 花茶は最強!」
藍介は花茶に運ばれている恥ずかしさから手で顔を隠し、花茶は楽しそうにものすごいスピードで走ったのであった。
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