なんでもやってやる券 パート1
会議が終わり、魔王城で働く人達は復旧作業に勤しんでいた。
そして、魔王は普段の仕事が増え真面目に仕事に取り組むかと思われていたが、違った。
魔王は封印されたラヒートの部屋に入り浸り、仕事をサボっていたのであった。
「ラヒートはリリアーナの姿より、今の姿の方が落ち着くよな、前は高嶺の花みたいでめちゃくちゃ緊張したけど、なんだろう、彼女を見ると落ち着くなぁ」
すると、オビリオンがドアを強く開けて部屋に入ってきた。
「魔王様!!! この書類の承認と経費書類に判を!」
「はいはい、そこ置いといて後でやるから」
「ダメですってば!!! さぁ! 行きますよ!」
オビリオンは魔王の肩を掴み部屋から出させようとした。
「オビリオン! 俺は今重大な仕事をしている真っ最中なんだ! 後にしてくれ!」
「その重大な仕事とはなんですかね」
「ふっ、それは、ラヒートの封印を確認することさ!」
「はい、仕事行きますよ。これじゃ、子供達に会えなくなるじゃないですか、さぁ、行きますよ」
「うわぁぁぁぁあ!!! 俺はラヒートの側にいるんだぁぁぁぁ!!!!」
魔王の抵抗虚しく、仕事部屋に戻されたが、書類がいつも以上に積まれた机を前にして、魔王は逃げ出した。
オビリオンは逃げ出した魔王を追ったが、彼が本気で逃げてしまったので魔王を見失ってしまった。しかも、オビリオンの鼻が使えないように自身のニオイを消して、魔王は見事にオビリオンから逃げ切ったのであった。
オビリオンは七翼ラックルの部屋の前にいた。
「くそぉ! 逃げられた!!!」
オビリオンの声を聞いた青雷は部屋から出てきた。
「ん? オビリオン様、また魔王様に逃げられちゃったの?」
「青雷、そうだ! 青雷の糸を使って魔王様を椅子に拘束してくれないか?」
「別にいいけど、僕の力じゃ魔王様を長くは拘束できないよ。あんなでも、魔王だもん、力だけは一丁前なんだから」
「そうだよな、他に何かいい方法がないか」
「オビリオンさんも大変だね、あっ! そうだ! この券を使えばいいんだ!」
「この券ってなんだ?」
青雷は一度部屋に戻り、『あるじさまのおくりもの』箱の隣にある『たからもの』と書かれた木箱の中からある券をさがしていた。
「えーと、ここにしまったよね。これじゃない、えーと、あ! あったあった!!!」
青雷は殴り書きで『なんでもやってやる』と書かれた紙を持ってきた。
「これを使えば魔王様に仕事してもらえるよ!」
「これは、魔王様の字だな、なんでもやってやる? 何をやってくれるんだ?」
「なんでもだよ。だから、この券を一枚使って魔王様に仕事をしてもらおうよ!」
「でも、そんな大事な券を自分の為ではなく、他人の為に使うのか?」
「だって、オビリオン様いつも困ってたし、それに、たまには子供達と遊ぶ時間欲しいでしょ? お仕事を頑張るのはいいけど、一番重要なのは家族だよ。オビリオン様は家族との時間をもっと取らなきゃ」
青雷の言葉にオビリオンは目頭を熱くした。
「青雷、ありがとう、本当にありがとう。ほんとお前はいい奴すぎるな!!!」
「いえいえ、よし!オビリオン様、魔王様を見つけ出して仕事をさせよう!」
「おー!!!」
青雷とオビリオンは魔王を探し出た。
「くそぉ! 4人で来るのはずるいぞ!」
魔王の周りには前にオビリオン、右にターン、左にスーロ、後ろに青雷と完全に包囲されていた。
魔王は弱そうなターンの方向に逃げようとしたが、ターンは魔王の足元で甘えていた。
「こんな! こんな事されたら、俺は動けなくなるじゃないか!!!!」
魔王は叫びながらターンを撫で始めた。それを見たスーロはターンと共に魔王に甘え、オビリオンは甘えたい気持ちをぐっと堪えていた。
「スーロ、ターン、羨ましい。ではなく、さぁ! 魔王様! 仕事しますよ!」
「くそぉ! くそぉ!」
魔王は悔しがりながらも、スーロとターンを撫で続けていた。
「それじゃ、僕が運ぶね」
青雷は蜘蛛糸の粘着力で魔王とスーロとターンをそのまま拘束して魔王の仕事部屋まで運んだ。
オビリオンは他の仕事がある為スーロとターンと共に自室に帰っていた。
「魔王様、この券使うね」
青雷は『なんでもやってやる』券を一枚ちぎり魔王に渡した。
「仕方ないな、今日の分の仕事をやればいいんだろ」
「違うよ。僕のお願いは、僕が満足するまで仕事をしてもらう事だよ」
「はぁ!? なんだそりゃ! 普通こう言う券の効力は1日だけだろ!!!」
「いいや、魔王様は1日限定なんて一言も言ってなかったし、これは、僕のお願いをなんでも聞いてくれる券なんでしょ? だから、魔王様は僕が満足するまで仕事をしないといけないんだよ」
「嘘だろ。まじか、まじかよ! この券にこんな使い方されるなんて考えてなかった」
『フォッフォッフォッ、馬鹿弟子は未だに馬鹿のままじゃな!!!!』
「くそぉ、師匠に笑われた」
「アビじぃちゃん! 主人様から貰ったルービックキューブ、って言うおもちゃどう? 楽しい?」
『まだ一面しか揃えられんがこれは面白いぞ! 絶対に全面揃えて見せるのでまっておれ!」
「アビじぃちゃんルービックキューブにハマってるね」
「青雷、師匠と仲良いんだな」
「だって、アビじぃちゃんと僕友達だもん!」
『そうじゃ、わしと青雷はマブダチなのじゃ!』
「マブダチってそんな表現する奴今はいないって」
魔王は渋々仕事を始めた。
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