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魔王とラヒート

 魔王は成れ果てを作り出している女体の成れ果ての姿を見て彼は絶望し、膝から崩れ落ちた。


「そんな、リリアーナ、リリアーナ」


「うわっ! あいつが成れ果てを作ってるだな! ラックル君とお城の人達を傷付けた分僕がやっつけてやる!」


 青雷は襲いかかってくる成れ果てを倒しながら成れ果てを作り出す個体に向かって行こうとした。が、魔王は青雷の足を掴んだ。


「魔王様!? どうして僕の足を掴むの! これじゃあ、戦いにくいでしょ!」


「あれはリリアーナなんだ、だから、彼女を殺さないで」


「何言ってるんだよ! 彼女を倒さなきゃ成れ果てで、お城が溢れかえっちゃうよ! 彼女を思っているならこれ以上罪を重ねられないように倒してあげなきゃ!」


 魔王は青雷の言い分も理解はしていた。理解は、だが、彼にとってのリリアーナとの思い出は彼の人生の中で一番と言ってもいいほど彼は彼女を愛していた。


「お願いだ、俺の力でここを封印する。時間を稼げばフローゼラーがリリアーナを治してくれる」


「フローゼラーさんは会ったことないけど、今ここにいないならリリアーナ様を治すことなんで出来ないよ! 僕はアレと戦うからね! 僕はリリアーナ様を知らないけど、藍介様や母さんからリリアーナ様の事を教わったんだ。自分の美しさに誇りがあり、我儘、傲慢で口が悪いのがリリアーナ様だけど、魔王様、今の彼女の姿を見てあげて、彼女は今の姿で嬉しいと思う? 倒して苦しみから解放してあげるのが魔王様の役目なんじゃないの!」


 魔王は彼女を殺すことを決断することができなかった。


「でも、彼女を殺さなくても、拘束すれば!」


「それなら、拘束できるなら今すぐにやってよ! 床に座ってないで立ち上がってよ!!!」


 青雷は魔王と会話している間に蜘蛛糸を張り周りにいる成れ果てを拘束していた。青雷の糸に拘束された成れ果て達は、雷を全身に浴びて悲鳴を上げていた。


「もう! さっきまでのかっこいい魔王様はどこに行っちゃったんだよ! 戦う気がないなら帰って! 僕は絶対にアレを倒してラックル君とお城の人達を助けるんだから!」


 魔王は彼女との記憶を思い出していた。


 彼女に初めて会った時の胸の高鳴り、彼女にデートに誘われた時の喜び、彼女と愛し合った夜。


 魔王にとってかけがえのない大切な思い出。


 魔王は涙を流しながら立ち上がった。


「魔王様、僕の邪魔しないでよ!」


「それを、言うのは俺の方だ! 青雷! お前は周りの雑魚を処理しろ! リリは俺が叩く」


「倒せないと判断したら僕がリリアーナを倒すからね」


「あぁ、それで構わない。さぁ! いくぞ!」


 魔王は淵冠剣アビスクラウンを構え、成れ果てとなったリリアーナ目掛けて飛び出した。


「うわぁぁ!? びっくりした!」


 魔王が飛び出した時に衝撃波が発生し、青雷は驚いてしまった。


「魔王様! かっこいい! 僕も頑張ろう!」


 青雷は前足4本を使って成れ果てを足で串刺しにして成れ果て体内から雷を浴びせリリアーナを取り囲む成れ果て達を倒し始めた。


 魔王は3度剣を振り目の前に現れる雑魚達を片付け、リリアーナの足元近くまでやってきていた。


「あぁぁぁぁああああ!!!! いやぁぁぁぁあああ!みないで、みないで! お願い、みないでぇぇぇぇ!!!!」


 リリアーナの涙は黒く頬から流れ落ち、二足歩行の成れ果てを生み出していた。


「ケタケタケタケタケタ、てぇぇすぅぅけ」


「雑魚には用がないんだよ!」


 魔王は淵冠剣アビスクラウンで生まれたばかりの成れ果てを斬り殺し、前へ、前へ、彼女の元へ進んだ。


 リリアーナはゆっくりと話し始めた。


「私を見ないで、私は貴方に、こんな姿、見られたく、なかった。私は、貴方を、愛していたの」


「リリ! 俺がリリを助ける! だから、俺を信じて待っていてくれ!」


 魔王は彼女を倒さず、彼女を封印する事を選択した。


「永遠に封印なんてしない。俺が必ず君を元に戻す!だから、俺を待っていてくれ!!!」


「私は、治らない、もう、私はリリアーナ様じゃない、私は、貴方を騙すのが、嫌だった。でも、私には、自由がない。私の、本当の、名前は、ラヒート。リリアーナ様の姿を、真似をした。哀れな妖精」


「え、リリそれはどう言う事」


「貴方が、愛した、リリアーナは、この世にはいない。だから、封印なんてしないで、私を殺して」


 ラヒートは自分が治らないことを知っていた。成れ果てとなったら、治る方法は一つだけと白衣の男から聞いていた。その方法はドラゴンの呪いを解けば良い。簡単に聞こえるが、それはとても難しい事であり、それができた存在はたった一人、昔に強大な神聖力を宿して生まれた人間。彼だけが呪いを解呪する事ができる。と、究極霊薬アルティメットエリクサーを白衣の男に渡された時にラヒートは聞いていた。


 その人間は勇者によって殺され、主神の祝福は継ぐものが居なくなり、消滅した。


「お願い、殺して、私は治らない。だから、殺して、コロシテ、コロシテ、コロシテ、コロシテ、コロシテ」


 ラヒートはゆっくりと自我を無くし始めていた。


「俺が愛した女性は目の前にいる!!! 君がリリアーナという名前ではなくラヒートであったとしても俺は君を愛している!!!」


 魔王はラヒートに聞こえるように大声で叫んだ。


「俺がやると決めたらやり切るのが俺なんだ! この国を創る前には俺のこの夢は鼻で笑われていた! でも、俺はやり切ったんだ! この国を作り魔人と亜人種達との平和な国それが俺が夢見た国! それを俺は叶えた!やり切ったんだ! 俺は君を諦めない! 俺は君を愛しているだ!!! それに、君は俺が神だって事を忘れている。例え半神だとしても、神は神! 神にできないことは無いさ!」


 魔王は剣の刀身を手に掴み、手のひらから床へ自身の血を垂れ流し、封印陣の詠唱を始めた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 知らないからこその正論だけど、だから現実的な意見ですね。 「理想を叶えるなら勇気を持て!夢を叶えるなら現実を見よ!」
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