魔王城襲撃の元凶
魔王は調子に乗っていた。
オビリオンと青雷が魔法を放つ度に「カッコいい!!!」「魔王様はな! 戦う姿がカッコいいんだよ!」と褒めちぎられ、鼻が天狗のことぐ伸びていった。
「どうだ! 俺はかっこいいだろ!!!」
魔王は淵冠剣アビスクラウンを取り出し、成れ果てを斬り倒すと自分なりにカッコいいと思うポーズをとっていた。
青雷とオビリオンはカッコいい魔王様を見て興奮していた。
「オビリオンさん! 魔王様のあの剣すごいね! 一撃で成れ果てが消滅してるよ!」
青雷のこの言葉でオビリオンの魔王様愛が爆発した。
「あれはな! 淵冠剣アビスクラウン! 青雷君、鍔が冠の形をしているだろ。あれはな、魔王様が幼い頃に深淵に住む神、アビーサ神が渡した剣なんだ! 神から剣をそして、深淵の王として認められたと言うことになるんだ!」
「へぇー! 知らない神様だけど、魔王様かっこいいね!」
「だろ! そして、魔王様の魔力によって刀身が黒く変色したって話もあるそうだ! かっこいいよな!」
「オビリオンさん魔王様の事詳しいんだね!」
「当たり前じゃないか! 魔王様の武勇伝はエンデューブに産まれた子供なら誰しも知っている物語だ。俺もこの話で魔王様に仕えたいと考えたんだよな」
「オビリオンさんは子供の頃の夢を叶えたんだね!」
「あぁ、ここまで上り詰めるのは大変だった、それも、魔王様の勇姿を見たい為に頑張ったもんな、まぁ、仕事面は幻滅したが、それでも魔王様はかっこいいんだ!」
「イデアおじちゃんも言ってた! 魔王様は最終的にはやることはやる男だって!」
「でも、魔王様は嫌いな仕事を後回しにする癖があるんだよなぁ、それがなければどれだけ嬉しいことか、魔王様にやる気を出させるのが大変なんだよ」
「そうなんだね、あっ! 誰か戦ってるよ!」
「ん? 誰かって誰だ?」
先陣を切って戦っていた魔王よりも先にある男が成れ果てと戦っていた。
「嘘だろ、ゴウライ! お前ずっと戦っていたのかよ!」
「ぐぁぁぁぁあああ!!! あああああ!!! あ、の、子、あの子に、会う、会う、会うぅぅう!」
ゴウライは奇声を発しながら成れ果ての身体を豪腕で千切り、蹴り飛ばし、ゴウライは己の筋力だけで成れ果てと戦っていた。
「もうやめろ! 死んじまうぞ! オビリオン! ゴウライを止めるのを手伝ってくれ!」
「はい! ゴウライ、すまない」
オビリオンは口から冷気を放ち、ゴウライの足を凍らせた。
「あの子に、あの子に、死んで、死にたくない」
魔王はゴウライを取り囲む成れ果てを剣で切り裂いた。
「ゴウライ、少しは落ち着け、ここは俺に任せてお前は少し休んでろ」
「あの子に、会う、あの子に」
体が動かせなくなりゴウライは必死に抵抗していた。
「分かった、分かったって、青雷! ゴウライを担いでここから脱出してくれ」
「嫌だね、ゴウライに触るのなんて嫌だ!」
オビリオンは魔法を使いゴウライを気絶させた。
「あの子にぃ」
「青雷君、まぁ、そうだな、あの戦いを引き起こした張本人を助けるのは嫌だよな。俺がゴウライを連れ出しますから青雷君は魔王様のそばにいてくれ」
「我儘言ってごめんなさい。僕はゴウライがたとえみんなを守ろうとしていたとしても、僕はあの時、仲間であるラックル君を殺そうとしたゴウライが許せないんだ」
「青雷君、謝る必要はない。君の気持ちも理解できる。俺が一旦離れるが、スーロとターンを置いておく、それじゃ、ゴウライを連れて行く」
オビリオンは気絶したゴウライを担ぎ地上へ向かった。
オビリオンとゴウライがいなくなり魔王と青雷は奥へ進んだ。魔王が討ち漏らした成れ果てを青雷が倒し、青雷は巣を張りながら奥へ奥へ進んだ。
二人は地下牢の最深部に辿り着いた。
「どうして、どうして」
魔王は急に走り出し、最深部の部屋のドアを力任せに開けた。
「ちょっと、急に走り出さないでよ!」
青雷は魔王の後を慌てて追いかけた。
二人と二匹は最深部にある部屋に入ると、彼らの目の前には今までに見たことのない成れ果てがで迎えた。
スーロは毛並みを逆立ち成れ果てを威嚇していた、ターンは青雷の足元に隠れた。
部屋にいる成れ果ては、女性の人型で体長は5メートル。太もも、腹、首は捻じ曲がり、背中にガラスみたいな半透明な黒い羽が生え、顔は瞳孔が開き、口から黒いドロドロした液体を吐き出していた。そして、頭の上には金色に輝く輪っかが浮いていた。
「アアアアァァァァァアアアア!!! み、な、い、で、み、な、い、で」
女体の成れ果ては魔王の姿を見るや否や顔を隠し叫んだ。
「もしかして、そんな、リリアーナ!!!」
「やめてぇぇぇえええ!!!!!!!!!」
彼女は叫び、その叫びで部屋全体が震えた。
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