魔王と雷蜘蛛
僕はスーロの後を追ってオビリオンさんと魔王様と合流した。
「うわっ!? あのチビ助がおっきくなってやがる!」
「魔王様、俺がさっき言ったじゃないですか強くなって青雷君が戻ってきたと」
「いや、ラックルの肩に4ヶ月ほど前まで乗っかっていたチビ助だったのに、急に俺よりもデカくなるとかあるのかよ!」
「さぁ、繭が元の体より大きかったので、俺は繭の大きさになるかと考えていましたが、スーロの眼を借りて彼をみなかったら、俺は彼に声かけなんてしませんでしたよ」
「そりゃ、ここを守る人員が欲しいって言ったけど、まさか、虫がここを守るなんてな」
「彼はここに来るまでに黒いモンスターを倒してきてますから、戦力としては申し分ないですね」
「はぁー、あまり虫とは関わりたくなかったんだよな、関わるとイデアのやつがめんどくさくなるし」
「まぁ、まぁ、イデアは現在屋敷で引き篭もって仕事と辞表届けを書いているので当分の間、彼は屋敷から出てこれませんからね」
「イデアがいたら楽だったんだけどな」
「魔王様はイデアに頼り過ぎです。こう言う時に王らしく戦ってください」
「いや、本来王を守るのが家臣の役目だと思うんだけど!」
「俺達の王は前線に立ち、誰よりも先陣を切って戦うお人こそが我らの王! さぁ! 仕事の鬱憤をここで晴らせるチャンスですよ! 思いっきり暴れてください!」
「おい、オビリオン。お前この状況楽しんでないか?」
「いえ、久しぶりに魔王様が戦うお姿を観ることができるのは嬉しいですが、緊急事態なので、俺は至って冷静です」
「嘘だな。お前の尻尾は正直なんだぞ」
オビリオンは久しぶりに魔王の戦う姿を観れると興奮して尻尾を揺らしていた。
「わーぐる!」
スーロはオビリオンの足元に駆け寄り、オビリオンの足に体を擦り寄せていた。
「スーロ、ターンは何処にいるんだ?」
「オビリオンさん! ターンは僕の背中にいるよ!」
「青雷君、すまないね。ターン降りて来い!」
「くぅぅぅーん」
ターンは僕の背中から降りようとしたが、高すぎて体を震わせていた。
「ほら、ターン俺がキャッチするからおいで」
「わんぐる!」
「くぅぅぅん」
ターンは勢いよく僕の背中から飛び降り、オビリオンさんがターンをキャッチした。
「よぉしよぉし! お前達よく頑張ったな! 偉いぞ!」
「ヘッヘッヘ」
「くぅん、くうぅぅぅん」
オビリオンさんが2匹を撫でると2匹は嬉しそうに尻尾をブンブンと振っていた。
「俺はリリアーナを助けるために先に行くからな!」
魔王様は痺れを切らして地下へ向かう階段を下ろうとした。
「青雷君、俺と魔王様で地下牢を確認しに行きます。なので、地下牢から逃げ出した黒いモンスターを退治して欲しいんだが、青雷君、1人でお願いできるか?」
「地下牢にはもっと成れ果てがいるんでしょ? それなら、僕はオビリオンさんと一緒に行くよ!」
「俺としては、青雷君にはこれ以上被害が出ないようにここを守って欲しいんだけどな」
「それなら、成れ果てがここから出られない様にすればいいんでしょ? 簡単だよ! 僕が沢山巣を張ってとおせんぼすればいいんだよ!」
「そしたら、俺達が出れなくなっちまうだろ!」
「巣の回収なんて簡単だよ! ブチっと切ればいいんだもん!」
「そんな簡単に切れるなら巣の意味なんてないじゃないか!」
「もう、魔王様は本当に強いの? イデアおじちゃんの方が強い様な気がするな」
「青雷君、普段の魔王様は仕事から逃げ出したり、美しい女性をみると鼻の下を伸ばしたり、正直に言うと魔王様がいなくても、イデアと俺が居れば国を運営することができる」
魔王は成れ果てとの戦闘ではなく、オビリオンの精神攻撃によってダメージを受けた。
「お、オビリオン、そんなこと言うなって〜。俺だって頑張ってるじゃないか」
「鼻の下を伸ばしてるだけでしょ!」
青雷の一言で魔王のHPが減った。
「ぐはぁっ!!!」
「それに、前にイデアおじちゃんから聞いたけど、魔王様の力で魔王城は守られているって話だったけど、どうして成れ果てが侵入しているの!」
「それはな、俺にもわからん! 結界は発動しているし、綻びも感じない、いやー! どうしてかなー! 俺はちゃーんと結界張ったのになー! こいつらを知ったのも俺の部屋に侵入されたからなんだよな」
「結界の意味ないじゃん」
「ぐはぁっ!!!!!!!!」
「青雷君! これ以上の精神攻撃はやめてください! 戦う前に魔王様倒れちゃう!」
「オビリオンさんは魔王様を甘やかし過ぎなんだよ、こう言う時は、お尻を思いっきり蹴っ飛ばしてあげないといけないんだよ!」
青雷は魔王の尻を叩いた。
「いって! え? うわぁぁぁぁあああ!!!」
「てぇえぇぇぇえすぅぅぅけぇぇぇ!?」
「ケタケタケタケタケタ、てぇすっけ!!!」
魔王は地下牢へ行く階段で成れ果てを巻き込みながら転がって落ちていった。
「魔王様!!!」
「おー! 沢山成れ果てを押し返してる! 魔王様やる時はやる男だね! よし! 魔王様に続いてオビリオンさん行こうか!」
オビリオンは自身の尻を手で隠した。
「いや、僕はオビリオンさんのお尻は叩かないよ。僕は巣を張りながら進むから、オビリオンは前をよろしくね!」
「こりゃ、青雷君は大物になるな。いや、もう、大物か」
オビリオンは転がり落ちた魔王様を追いかけ、青雷は巣を張りながらオビリオンの後を追った。
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