ラックルの奇跡
僕は警備兵さん達と共に黒い人型モンスターと戦っていた。
「えい! ひぇぇぇ! えい!」
旗を掲げ僕は必死に警備兵さんの幸運をあげた。それでも、数の暴力の前には僕の幸運なんて意味がなかった。
3人いた警備兵、応援に駆けつけた兵士5人が黒い人型モンスターに殺された。また1人、また1人、今残っているのは僕と1人の警備兵さんだけ、僕に逃げて欲しいと兵士達は言っていた。でも、逃げ場なんてなかった。窓から突き破ってくる黒いモンスター、変な奇声を発して、黒い液体を口から吐き出すと新たな黒いモンスターが生まれ、最初戦っていた数よりも5倍の数に増殖していた。
僕は生き残った兵士と共に部屋に逃げた。
僕と兵士はドアを押さえた。
「ラックル様、もう、これ以上は」
「僕が弱いから、僕のせいで」
「ラックル様! 俺を囮にして逃げてください!」
「そんなこと出来ません!」
急にどぉぉーんとドアが壊れてドアを押さえていた僕達は後ろに吹き飛び、僕は青雷君の繭の前に飛ばされ、兵士さんは飛ばされた拍子に机の角に頭をぶつけて気絶してしまった。
「てぇぇすぅけぇ? ケタケタケタケタケタ」
ドアを破ったモンスターは、今まで戦っていたモンスターより一回り大きく、四つん這いだったモンスターが2足歩行で歩き、首と腕が捻じ曲がっていた。
「ケタケタケタケタケタ」
「僕は、ここで」
僕は立ち上がり机の上に置いてあったカチューシャを頭につけた。
どうしよう、幸運星は青雷君の繭が壊れちゃうかもしれないから使えない。でも、僕が使える攻撃手段はこれしかない。
僕は兄さんとの会話を思い出した。
それは、僕がまだ学生だった頃、その時の僕は学校に行かずに引きこもりになっていた。兄さんはそんな僕を心配して支援魔法を教えると言って僕を家の外に出そうとしていた時だった。
「ラックル! お前の運は最強だ! 俺が一族の最強支援魔法を伝授しよう!」
「兄さん、僕は家でゆっくりしたいの、お金は簡単に手に入るし、面倒なことなんて絶対に僕はしないから!」
「そんなこと言うな! 行くぞラックル! 修行の旅の始まりだ!」
「僕は兄さんみたいになれないんだからやめてよ!」
「そうだな、ラックル! もし、俺がそばにいない時に敵と遭遇したらどうする」
「そりゃあ、幸運あげて逃げるよ」
「それでも、逃げれない時はどうする」
「そんなことないさ! 僕の幸運はこの世界で一番なんだから!」
「それもそうだな! ラックルの幸運値は歴代最強だからな!でもな、幸運値だけを過信するのは良くない。一番信じされるものは自分の経験それだけさ! さぁ! 俺と一緒に一族最強の支援魔法を完成させるぞ!」
「いやだぁぁぁぁぁ!!!」
あの時の兄さんは僕を家から引き摺り出して、この旗を僕に渡してくれたんだっけ、そして、魔王軍最高幹部になった時にこのカチューシャをくれた。
僕達の一族は必ずステータス欄に幸運値という珍しいステータスが存在している。そして、僕は歴代最強の幸運値を持って産まれた。
僕の幸運値は約10万、通常の人の幸運値は100あるかないか、僕は通常の人よりも1000倍の幸運値を持っている。だから、兄さんはこの僕の幸運を分け与える一族最強の支援魔法を教えてくれた。
「僕は全ての幸運を解放する。お願い誰か助けて」
僕は全てのカチューシャに貯めた幸運を解放した。6つ残っていた黒い星が砕け散り、僕は助けを求めたが、何も起こらなかった。
ゆっくりと、ケタケタと笑いながら僕に向かって黒いモンスターは歩いてくる。
「どうして、何も起こらないんだ!!!」
黒いモンスターは伸縮くる腕を伸ばして僕の顔を叩いた。
「ぐえへっ」
僕は青雷君の繭に叩きつけられ。ドスンと床に倒れた。
痛い、痛いよ。どうして、カチューシャの幸運を全て解放したのに何も起こらないんだ、どうして。
黒いモンスターは青雷君の繭を僕を顔を叩いた時みたいに攻撃した。
「くそぉがぁ!!!!」
僕はすぐに立ち上がり、黒いモンスターの攻撃を旗で受けた。
「く、僕が守るんだ、僕が! 青雷君を守るのは僕なんだぁぁぁあああ!!!!!!」
僕が叫ぶと、青雷君の繭が光った。
繭は2メートルの大きな蜘蛛へと姿を変えた。
「ラックル君! 助けに来たよ!!!」
そう、青雷君がやっと目覚めたんだ。
「せい、らい君、よかった」
「うわぁぁあわ! 僕おっきくなってる!!! 成れ果てめ! 僕の親友になんてことするんだ! 」
青雷君は僕に攻撃した2足歩行の黒いモンスターに糸を吐き、拘束した。
この時のラックルは全ての幸運を使って青雷を目覚めさせたと考えていた。だが、事実は違った、彼の幸運は神へと届き、神を動かした。彼は幸運の極致、奇跡を起こしたのだ。
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