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獣は仕事に明け暮れる

 私が魔王軍に帰ると待ってましたとばかりに仕事が大量に流れ込み、私一人では処理しきれなかったので、クティスの手を借りる事になりました。


「ガゥガウグルゥ〜(終わらないぁ〜)」


 クティスは山積みにされた書類に肉球判を押してきた。


 書類をメイドのサファイがクティスの前に置き、クティスは手を朱肉に付け、サファイが置いた書類にポンッと置き、書類にはクティスの肉球がくっきりと押されていた。


「クティス様、頑張ってくださいね」


「ガウ、ガゥガァ〜(うん、頑張る〜)」


 私はと言うと、エルフの国への謝罪文作成、鬼の国、鬼鏡ききょう国との外交問題書類の作成。

それと、クティスに押してもらう書類の確認。私、ずっと手を動かし続け、このままじゃ、腱鞘炎になっちゃいますよ!


「クティス、この書類もよろしくお願いします」


「ガウッ! ガゥガァ〜(うえっ! 頑張る〜)」


 クティスは片手だけだと時間がかかると考え、両手で判を押し始めた。


 ペッタン、ペッタンと手を交互に書類に押し当て、今までの効率が格段に上がった。


「ガウル、グルルガウガル! ガゥガァ!(これなら、早く終われるかも! 頑張るぞ!)」


 ペッタン、ペッタン、ペッタン、ペッタン、3時間、クティスは書類に判を押し続けた。


 メイドのサファイはメイドのエーデルと交代した。


「さぁ! クティス様! 沢山ペタペタしましょうね!」


「ガゥガァ〜(がんばってるよ〜)」


 そうして、イデアとクティスは仕事に明け暮れていた。そして、ゴウライ記憶喪失事件が起き、より一層イデアは仕事に拘束されてしまった。


「どうして、次から次に、面倒事が来るのですか! やっと、裁判日程を決めれたと言うのに、こんな事って! 犯人はすぐさま極刑ですよ!」


 クティスの肉球が朱肉によって赤く染まり、クティスは疲れ切っていた。


「ガゥガァ〜。ガゥ、グルゥ〜(がんばる〜。でも、疲れたぁ〜)」


「クソ! 今すぐに総動員してゴウライの記憶を無くした犯人を捕まえてやる!!!」


 魔王軍はゴウライの犯人を探す為に人員を犯人捜索に費やした。が、一月が経った現在でも犯人の目星がついていなかった。


「凪さんが、魔石精霊というよくわからない精霊と結魂し、私は、なぜ! 凪さんのそばにいられないのですか!!! あんな男よりも私の方が美男で、知的で、知名度、富、権力まで持っていると言うのに、どうして、あんな、俺様野郎と、結魂。うわぁぁぁぁ!!!! なぁぎぃぃぃさぁぁぁんんんん!!!」


 ベッドの枕がイデアの涙でずぶ濡れになっていた。


 イデアが寝室に引きこもり、オビリオンが心配してイデアの屋敷にやってきた。


「オビリオン様、イデア様にはお会いしない方がよろしいかと」


 メイド長のチェルーシルがオビリオンをイデアの寝室に案内をしていた。


「そう言われてもな、急に報告が来なくなったら心配するだろ。で、今回は女関係って事だな」


「はい。イデア様が愛していらっしゃる魔蟲の洞窟の主人、凪様が、魔石精霊の氷月と名乗る方と結魂をしていることが判明し、イデア様が暴れに暴れ」


「愛している女に男がいたんだ、そりゃ暴れるだろうよ」


「ですが、凪様は氷月さんの妻になった覚えはないと否定をしているのです」


「まぁ、イデアの事は俺に任せてくれ。案内ありがとう」


「いえ、イデア様をよろしくお願いいたします。それでは、失礼します」


 チェルーシルは元の業務に戻った。


「よし、いっちょ、やるかね」


 オビリオンは首を鳴らし、ドアをノックし、返事がなかったが、イデアの寝室へ入った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 肉球のハンコ……これでいいのだ!(あのお父さん風に) 因みに私は実家のネコで寅年の時にやりました(ご褒美にチュールをあげて機嫌を直してもらったけどね♪) [一言] 写真を使えば釣れませんか…
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