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魔石精霊(仮)は神と取引をする。

「シンカ、良かったな。親友が幸せになってくれて俺様は嬉しいぞ」


 連絡を切られた魔石精霊(仮)は推し人形の中で親友の恋が実ったことを喜んでいた。が、ピコン、ピコンと通知は送られ続けていた。


「ちょっと! うるさいからさっさと推し人形になりなさいよ!」


 姉のアから思念が送られた。


「アよ。推し人形なんて名前なりたいと思うか?」


「私は名前を考えるのが面倒だったから、アになったのよ。女神シンカ様に貴方は推し人形と言われたのなら私は快くその名前を受け入れるわよ」


「俺様の名前は俺様で決めたい!!!」


「もう、何年も同じことやってるんだから諦めなさいって、ほら、長達には推し人形って呼ばれちゃってるんでしょ? もう、あんたが推し人形になったってことじゃない」


「やめてくれ! カッコよくない名前なんかになりたくない!!!」


「そう言われてもねぇ」


 その間にも通知は送られていた。


「そうそう、うるさいから思念伝達切っとくわね。名前が決まったら連絡してね」


 アは一方的に思念伝達を切った。


「全てNOだ!!!!!!」


 そして、通知が送られてくること1週間が経った。


「シンカからも連絡できなくなってしまった」


 通知がピコンと送られてきた。


「ここまでしつこいと流石の俺様も怒っちゃうぞ」


 通知がピコンと送られてきた。


「シンカ、あいつと仲良くしているのだろうか」


「お疲れ様です。クエスト管理部、部長クエスと申します。魔石精霊(仮)様にお話したいことがあるので、少々お時間いただいてもよろしいでしょうか」


「クエス!? 急に俺様に何のようだ!!!」


「貴方の妻である清本凪様のダンジョン評価クエストの進捗状況が思わしくないため、貴方様にお願いしたいことがありまして」


「神が俺にお願いだと? 俺様に何をして欲しいんだ?」


「早く名前を決めてもらえないでしょうか」


「なんだ! クエスもシンカと一緒で俺様の名前を推し人形にしようとしてくるのか!!! なんて、ひどいカップルなんだ!!!」


「いえ、推し人形は流石に可哀想だと思うので、名前を200文字程度に減らしてもらえないかと思い連絡いたしました」


「そもそも、俺様の名前が凪のダンジョン評価に関係あるものか?」


「はい。貴方は5層目の長とシステムが判断してしまった為、貴方の名前が決まらない限り、彼女のクエストが達成できない状況となっているのです」


「俺様が5層目の長!? んな、馬鹿な!ステータス」


 魔石精霊(仮)は自身のステータスを確認したら、称号欄に5層目長と書かれていた。


「うそだ、俺様はこの洞窟の管理者で」


「こうなってしまった以上、こちらとしても、早めに名前を決めてもらいたいのです」


「そんな、すぐに決められる訳ないだろ!!! 妻が俺様の名前を決めてくれるのであればその名前になるが、俺様が決める権限を持っているのであれば、俺様は前にシンカに申請した」


「あれは、長過ぎるので、短くしてください」


「いやだ!」


「あのですね。シンカさんの親友だから優しく言ってますが、本来なら、我々は貴方の名前を強制的に推し人形にすることだってできるのですよ」


「くっ、シンカが俺様に名前の権利を与えたのだから、そっちの都合で決められても困るな」


「はぁー、シンカさんがあんなに嬉しがる訳だな、あのな、シンカさんは優しい女神だからこれだけで済んでいるが、他の女神や神相手だったらお前の存在自体消されてもおかしくないんだぞ」


「おい、急に脅しか!」


「ああ、いつまで経っても名前を決められないお前を動かすためにはこれぐらいしないとな」


「それなら、シンカにお前の横暴を話すぞ!」


「それは大丈夫だ。シンカさんには前もって話はつけてあるし、シンカさんは思いっきりやっちゃってとも言っていたからな」


「なんだと! 親友に酷いことするなんて、シンカ!見損なったぞ!!!」


「それで、どうする。推し人形になるか、それとも、存在を消されるか」


「それなら、俺様と取引をしないか?」


「取引?」


「あぁ、俺様が持つ、シンカの情報を全て話す代わりに、俺様が前に申請した名前を通すというのはどうだろうか」


「シンカさんの情報。いや、前の俺なら飛びつくかもしれないが、今の俺はシンカさんと交際しているんだ。そんな、お前が知っているような情報なんて、すぐに知る方ができるさ」


「それなら、シンカの恥ずかしい話は、彼女から聞くのは難しいと思うが、それでも、知りたくないのか?」


「シンカさんの恥ずかしい話? それは、どんな」


「魚に髪を喰われた話だ」


「えー!!!! あのシンカさんが、魚に、髪を喰われた!?」


「あぁ、他にも、通販で買ったマッサージ機が健康食品だったとか、他にも色々あるぞ」


 クエスは迷い始めた。


 シンカが自分から恥ずかしい話をするかといえば、多分、話してくれない。シンカの事をもっと知りたいクエスにとって、魔石精霊(仮)の話は喉から手が出るほどの情報だった。


「もっと、あるのか」


「ああ、シンカは仕事はできる女だが、ドジっ子だからな、よく俺様に仕事や家でしでかした事を聞かされたからな」


「それは、どんな」


「すまないが、これは、取引。これ以上は話せないな」


「分かった。この前申請した名前を通せばいいんだな! 確認しに行くから少し待っていてくれ!」


「分かった。よろしく頼む」


 クエスはシンカに話をしたが、シンカに怒られた。


「すまない。取引の内容を少し変えてくれないか」


「クエス、さては、シンカに怒られたな」


「ど、ど、どうしてわかるんだ!」


「そうだな、それじゃあ、妻である凪が俺様に名前をつけたらその名前を受け入れると言うのもいいんじゃないか?」


「それなら、社長とシンカさんも納得してくれる!」


「じゃあ、取引だ。俺様はシンカの情報を渡す代わりに、妻が俺様に名前を付けたら俺様はその名前を受け入れる」


 魔石精霊(仮)はクエスに取引書類を送った。クエスは取引内容を詳しく見ずに判を押してしまった。


「よし! これで、取引成立だな」


「それと、推し人形の通知を無くす」


「おい! ちょっとまて、最後の一文はさっき話してなかったじゃないか!!!」


「もう、判が押されてしまっているな、これは、このうるさい通知を無くしてもらわないとな」


「はかったな!!!」


「この通知が無くなったらシンカの情報を話そう」


「くそぉ!!!! 俺をはめたな!!!」


「まぁ、まぁ、取引内容を確認しなかったのが悪いんだ」


「分かった。シンカさんに伝えに行ってくる」


「クエス様よろしく頼む!」


「こいつ、シンカさんが頭を抱える訳だ」


 クエスはシンカに通知を無くすようお願いした。


 その後、魔石精霊(仮)を苦しませていた推し人形通知が送られてこなくなった。


 クエスは魔石精霊(仮)が知る、女神シンカの恥ずかしい話を沢山聴いたのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 何でも知りたいお年頃……あれ? さすが!神様相手にここまでするとは♪ [一言] 果たして名前を決められるのか?
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