謎の休暇申請
私は目覚まし時計の音で起きた。そして、時計の時刻を見ると、朝の9時。
「うわぁぁあ!!! ち、ち、ちこく!?」
私は慌ててベッドから飛び降りた。
「うげぇ!?」
私はベッドの下に横たわっていたクエスさんの背中を踏んでしまった。
「クエスさん!? どうして私の家に!?」
「シンカさん、おもいです」
「あっ、ごめんなさい! うわぁぁぁあ!!! クエスさん目開けないで!!!」
「分かりました」
私は上半身が裸なのに気付き、慌てて手で胸を隠した。その後、私は仕事場に連絡を入れたら、どうしてか、私は休みとなっていた。
「え? 私、休暇申請出してないわよ?」
「そう言われても、今日はシンカ様はお休みってなってますよ」
「あれ? うーん、私申請した覚えないんだけどな」
「まぁ、まぁ、今日はゆっくり休んでください。シンカ様、この頃仕事続きて休めてなかったじゃないですか」
「うん、ありがとう。そうさせてもらうわね」
「はい! 休暇楽しんでくださいね」
連絡水晶を閉じ、私はお風呂に入った。
「クエスさん、どうして、私の家に」
お風呂から上がり、部屋着に着替えた。リビングに向かうと、クエスさんが朝食を作ってくれていた。
「シンカさん、勝手に冷蔵庫の中を見てすみません。お腹空いていると思ったので、台所使ってしまいました」
机の上には茶碗に入った白米、お味噌汁と卵焼きが置かれていた。
「卵焼き上手なんですね」
「一人暮らしなんで、料理をたまに作っているんです。その、誰かに食べてもらえるのは初めてなので、味に自信がないですが、どうぞ食べてください」
「その、クエスさん、聞くのが遅くなってしまったけど、どうして私の家にいるの?」
「昨日、シンカさんがベロンベロンに酔っ払っていたので、酒乱酒造の女将さんにシンカさんの家の住所教えてもらったので、シンカさんを家まで送ったのですが、その、帰るタイミングを見失ってしまって」
「そうだったのね。はぁー。やっちゃったわ。普段ならあんなに酔わないのに、昨日はあいつにやり返せるようになったのが嬉しくてつい、飲んじゃったのよね。クエスさん、私を家まで送ってくれてありがとう」
「いえ、ご飯冷めちゃいますから一緒に食べましょうか」
「それじゃあ、いただきまーす!!!」
私はクエスさんと一緒に朝食を食べた。
「クエスさんは今日お休みなんですか?」
「それが、シンカさんがお風呂に入っている時に職場に連絡したら、俺は休暇の申請出していなかったのに、いつの間にか休暇申請されてて、今日は休んでくださいって部下に言われてしまいました」
「クエスさんも私と一緒ですね。私も身に覚えのない休暇が申請されてて、まぁ、無断欠勤じゃなくなるから良かったけど、誰が申請してくれたんだろう?」
「謎ですよね」
「謎ねぇ」
職場では天使達が上司2人がいない分の仕事をカバーしていた。
シンカの担当している部署、進化管理部で働く天使達は昨日シンカがクエスと飲みにいくと分かると、こっそりシンカの休暇申請を出した。
「シンカ様がやっと、彼氏ができたんだ! 俺達がシンカ様とクエス様を応援してやんなきゃな!!!」
「私はシンカ様とクエス様、推しだったんだけど、推し同士が結ばれてめっちゃ嬉しい、やばい、嬉しすぎる」
「クエス様ならシンカ様と相性良さそうだもんな」
「でも、まさか、クエスト管理部の奴等俺達と同じ考えだったとは考えてなかった」
「クエス様の信頼の賜物よ、シンカ様とクエス様はこの会社で有名な社畜だからね」
「社畜いうなよ」
「仕方ないじゃない、私達の負担を減らすためにいつも残業するんだもん。他の部署なんて上司が仕事し無さすぎて、私達よりも残業してるっていうのに」
「俺達は上司に恵まれたよな」
「その分、今回は私達がシンカ様に楽させてあげなきゃ!!!」
「そうだな! よし! 仕事がんばるぞ!!!」
天使達は上司の幸せを願い、仕事に励むのであった。
普通の会社は部下が勝手に上司の休暇を変えることはできませんが、この会社の社長(面白ければなんでもOKな神)が運営しているので2人の休暇の申請が通ったのです。
「クエスよかったじゃん! あーあ、シンカちゃんに彼氏かぁ、クエスもクエスでモテてるから、この後が大変だよなぁ。まぁ、愛の力でなんとかなるか!」
面白ければなんでもOKの神は書類に囲まれながら、黙々と申請書類を処理するのであった。
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