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藍介の夢 後編

 私は愛之助と梛子さんの愛の行方を見届ける事に決めました。そして、時が進み、愛之助さんは意を決して梛子さんをデートに誘ったのです。


「やっと! やっとです! ここまでくるのに長かった」


 私はガッツポーズで喜んでしまいました。あの、前世の私、奥手過ぎますよ。


 そして、2人はお祭りデートをしていたのですが、何やら、梛子さんの様子がいつもよりおかしかったのです。いつもは、笑顔で愛之助と話していたのに、今回のデートでは悲しい表情を時折見せていました。


「梛子さん、どうしたのでしょうか? もしかして、前世の私が何かしたんじゃ!!! やはり、デートに誘うのが遅かったんですよ!!!」


 愛之助と梛子は祭りで賑わっている通りから離れ、暗い道へ向かった。


「梛子さん、急にどうしたんだい?」


「あのね、愛之助さん、私、愛之助さんに伝えたい事があるの」


「その、伝えたいことって?」


「お父様がお侍様との縁談を決めたの」


「えっ」


 愛之助さんは梛子さんの言う事が信じられないと言った顔で悲しみに満ち溢れていました。ちょっと、まって、ください!!! これは、前世の主人様と前世の私が結ばれる運命じゃないって事なのですか!!!


「私は行きたくないと言ったわ。でも、家の為に縁談を断る事ができないって」


「そ、そ、そんな」


「あのね、私、ずぅーっと愛之助さんの事が好きだったの」


「えっ」


「愛之助さんが子供の時に道に迷った私を助けてくれた時、あの時から私は、あなたの事を好きになったの。でも、愛之助さんに自分の気持ちを伝えるのが怖くて。お花ちゃんを育てないといけないのに、愛之助さんの負担になりたくなかったから、私、今まで自分の気持ちを隠してきたの」


 愛之助さんは涙を流していた。そして、彼の姿をまた梛子さんも涙を流した。


「私も、梛子さんが好きです!!!」


 愛之助は梛子を抱きしめた。


「私は! 私は! 梛子さん、貴方のことが大好きなんです!!! いやだ、いやだ、貴方が私以外の誰かと結婚するなんて、嫌だ!!!」


「愛之助さん、私、愛之助さんの妻になりたい」


 2人は抱き合って泣いていた。


「梛子さん、私と2人でどこか遠くに行き2人で暮らしませんか」


「でも、お父様とお母様が」


「私が貴方を誘拐した事にすれば良い。梛子さんと暮らせるなら私は罪を犯しても構わない」


「だめよ! それなら、私がお父様に話をつけてくるわ! 私には愛之助さんという素敵な恋人がいるんだって言うわ!!!」


「梛子さん、いえ、それでしたら、私も一緒にお話をさせてください」


「それは、危険よ!お父様が何をするか分からないわ」


「いえ、私だって男なんです。やる時はやってやりますよ」


「ふっふっふっ。ふはぁはぁはぁは!!!」


 梛子は急に笑い始めた。


「どうして、笑うのですか!」


「だって、似合わないなって、仕方ないわ。お父様に何かされそうになったら私が助けてあげる」


「そんなに、私は頼らないですかね?」


「手先が器用でなんでも作れちゃう愛之助さんでも、男気が全くないからね!」


「そこまで言わなくても。でも、やっと梛子さんに気持ちを伝えられることができ、まさか梛子さんに告白されるとは思いもしませんでした」


「女の子に告白させるなんて、愛之助さんぐらいなんじゃない。あの、明日私の家に来てもらえないかしら?」


「そんなに早くですか!」


「嫌なの?」


「心の準備が」


「さっきの威勢はどこに行ったのよ! もう。でも、そこが愛之助さんらしいわね」


「明日、梛子さんのお父さんと、が、が、が、頑張ります」


「もう、今日はもう遅いし帰ろうか」


「家まで送ります」


「うん、帰ろ」


「はい!」


 2人は仲良く夜道を歩いて帰って行きました。


「ふぅ、危なかった。これで、結ばれなかったら、起きた時に、この本の日記の部分だけ切り取りましょう!」


 愛之助は梛子さんのお父様と対面しましたが、梛子さんのお父様は激怒して、愛之助さんを刀で斬りかかろうとした時に、梛子さんが木刀で抑え、梛子さんのお母様がお父様を怒り、その場はお母様のおかげで収まりました。


「ひぇぇぇえ!!! 梛子さんのお母様強い!」


 その後、頭を冷やせた言われたお父様が井戸水を浴びに行かされ、梛子さんと梛子さんのお母様、そして、愛之助さん3人で話し合う事になりました。


 話し合いの結果、お侍様との縁談はお母様の方でお断りを伝えると言ってくださり、晴れて2人は本格的に付き合う事になったのです。


「お母様! ありがとう!!!」


 梛子は母親に抱きついた。


「いいのよ。前々から貴方が愛之助さんの事が好きなのは知っていたし、お父さんもあんなこと言ったけど愛之助さんの事を気に入っていたのよ。あいつは誠実で器用な男だとね」


「お父様が」


「えぇ、貴方1人でお花ちゃんを立派に育て上げるなんて相当大変だったでしょ」


「いえ、逆にお花が私を助けてくれていたので」


「ふふふ」


 すると、井戸水を浴び終わった梛子さんのお父様が帰ってきました。


「儂は、梛子をお前なんかに嫁に渡したくない!」


「あなた、駄々をこねないでください。そもそも、あなたも梛子の結婚相手は愛之助さんだとおっしゃっていたじゃあないですか」


「ふん! 20になる前に結婚するかと思ったら、もう22だそ!本来なら14で結婚していてもおかしく無かったのに、何年待たせたと思っているだ」


「あなた! 愛之助さんにはお花ちゃんがいたのですから、これ以上言うなら、次は薪割りに行ってきてください」


「なっ!!!」


「お父様、私が不甲斐ないせいで、不安にさせてしまい申し訳ございません。ですが、梛子さん、いや、梛子を必ず幸せにして見せます。だから、梛子さんを私にください」


「やらん!!! 今すぐに出ていけ!!! もう、澤川さんと話がついているんだ、出ていけ!」


「あなた! 仕方ありませんね」


 梛子さんのお母様が立ち上がり、お父様の首袖を掴むと、お父様を引きずりながら部屋から追い出した。


「ふぅ、これでうるさいのは消えたわね」


「あの、そんな事をしても大丈夫なのですか?」


「大丈夫よ。で、これからなんだけど、結婚式はいつにしようかしら。お寺をおさえておかないとね」


「お母様、話が早いんじゃ」


「いいえ、縁談を断るならこれしかないわ。それに、私は今回の縁談ノリ気じゃなかったのよ。澤川様って悪い噂が絶えなくて、女遊びを酷いって話なのよ。そんな所に大切な娘を嫁になんて行かせたくないわよ」


「そうだったのですね」


 話が終わり、愛之助は家に帰った。


 次の日、梛子さんのお母様とお父様が縁談を断りに澤川というお侍様の家に行った。


「ふぅ、お母様さすがです!!! これで、愛之助と梛子さんは晴れて恋人、いや、夫婦! 主人様と私が夫婦。ぐふふふふふふふぅ。紫水、緑癒、私こそが主人様の真の運命の相手なのですよ!!! 後は、私の体が人間になりさえすれば、主人様とあんなことこんな事が出来てしまうのですね!!! これは、人間になる方法をもっと調べなくてはいけませんね!!! やる気でてきたぁぁぁー!!!!!」


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