カマキリは空を飛ぶ
私は壁の上でイデアさんとゴウライが戦っているところを藍介と一緒に双眼鏡で眺めていた。
「主人様! イデアさんがゴウライに押し負けています!」
「大丈夫かしら? 何か援護するにも、あの中には入りたくないわね」
双眼鏡の先には、ゴウライがイデアに一方的に攻撃をしていた。イデアは致命傷になりそうな攻撃は弾き、他の攻撃は身体で受けていた。
「イデアさんは不死身ですから、私が心配する必要がないと思うのですが、血だらけの姿を見ると、不安になりますね」
「うーーーん。何か、何か、援護できること」
突如、菊姫が飛んできた。
「主人様、成れ果てが壁の下に集まってきています!」
「まだいるのね。もう、めんどくさいな。まとめて一気にぶっ潰してやるわ!!!!」
「それでは、私はイデアさんとゴウライの戦いを観ていますね」
藍介が私の胸から出ようとしたから、私は藍介を抑えた。
「ぶっへぇ」
「私から離れるのは危ないでしょ。もう、成れ果てを連れてきた奴らがまだ分からないんだから、藍介を1人で行動させないからね」
「主人様。分かりました。あぁ、主人様に大切にされていると言うのに、私は、ばく‥‥。私は無!!! 我慢します!!!」
「我慢って、藍介はそんなに私から離れたいの?」
「いえいえ、主人様のお側にいれて私は幸せです! まぁ、紫水に会わなければですけど」
「紫水はネルガルと一緒だから大丈夫よね。花茶にはライネルが付いてるし、紅姫と黄結姫それに、緑癒は洞窟を守って、緑癒がいるから怪我の心配はしなくていいわね」
「壁の下にいる成れ果ては百合姫さん達に任せて主人様は少しだけ休憩なさった方がよろしいのではないですか。ずっと、膨大な魔力を使い続けて体力の限界がきていますよね」
「何言ってるのよ! みんなが戦っている中1人で休むなんて出来ないわ! それに、私はまだまだ戦えるわよ!!! 百合姫! 砲台を成れ果てに向けてセットして! 粘着ピンクちゃんを使って動かないようにして!」
「了解!!! 動ける者は砲台の準備!!! あんた達へばってる場合じゃないのよ。ほら!!! 働きな!!!」
傷を癒したスズメバチ達は砲台を壁の真下にいる成れ果てに向け始めた。
「へい!」
「ヒャッハァー!!!」
砲台の準備が終わると一斉に粘着ピンクを発射した。
「ヒャッハァー!!! ヒャッハァー!!!」
「あいつの分まで俺は負けないぞ!!!!」
「ヒャッハァー!」
成れ果て達は粘着ピンクちゃんによってその場から動けなくなった。
「てぇぇぇすぅぅけぇぇぇーーーーてぇ」
「ごぉぉぉしぃぃぃてぇぇぇぇぇーーー!!!」
「よし! これなら、まとめて一掃できそうね!」
「主人様、一体何を」
「元は人間だったとしても、こんな事したからには死をもって償わせるのよ」
私は拘束された成れ果て達を覆い隠すことができる巨大な魔石を作り出した。
「これは、貴方達の墓石よ。くらいなさぁぁあいいいいいい!!!!」
私は巨大な魔石を成れ果て達の上に落とした。
ドッシィーンと地面を揺らし、成れ果て達は魔石の下敷きになった。
「安らかに眠りなさい」
「主人様、少しだけでもお休みください」
「藍介、私は大丈夫よ」
成れ果てが倒されているところを雲の上でリリアーナと白衣の男が観察していた。
「リリアーナ様、あの女強すぎませんか?」
「何よあれ!!! あんなブスに魔石を作り出す力なんて勿体無いわよ!!! ねぇ、サヘル、あのブスの魔石を作り出すスキル奪えないかしら。ブスが持っているより、この世で最も美しい、この私に相応しいスキルだと思わない」
「あの女と直接戦うのは危険ですね。そもそも、今回は、あの女の胸元にいる『世界の図書館』の保有者を攫う為に来たのに、リリアーナ様が弱いから余裕よって言ったから、私だって実験室でゆっくりと研究していたかったのに、わざわざ外に出たんですよ。それなのに、出来た事は失敗作の廃棄処分。リリアーナ様には私を連れ出した分、実験動物を連れてきてもらいますからね」
「また、人間を誘惑しないといけないの。強い人間が少なくなってきたから、楽しくないのよね。その点、魔王、ゴウライの2人は私を楽しませてくれたわ。ここで、ゴウライがいなくなるのは惜しいけど、終焉の獣相手じゃ分が悪いわね」
「終焉の獣も捕まえてもらえれば、研究も飛躍的に向上出来ると言うのに、いつになったら誘惑できるのですかね。百戦錬磨のリリアーナ様をもってしても誘惑するのは難しいみたいですし、そもそも、不倫のせいで嫌われていますよね」
「まさか、ブス猫がイデアさんにチクるなんて思わないじゃない。はぁ、ゴウライよりも先に攻略しとけば良かったわ」
「今回の件で影武者が動けなくなるのはかなりの損失ですね」
「まぁ、こんなことをして謹慎処分だけになったんだから良かったんじゃないかしらね。軍を勝手に動かしたんだから、普通は極刑ものよね。私の記憶を消して正解ね」
「記憶を改竄するの大変なんですよ。キヒッ、まぁ、脳を弄り回せるのはたのしいですね」
「その笑い嫌いだからやめて、美しくないわ」
「貴方の脳を弄るのはとても楽しく、キヒッ、もう、次回は麻酔は使わずに脳を弄り回したいですね。キヒッ」
「だから、気持ち悪い笑いやめなさいって」
「興奮するとつい」
2人が雲の上で話している時、2人に向かって大小の2匹のカマキリが飛んできていた。
「やっと見つけた!!!! ハァーニィー達の仇!!! 絶対に許さない!!!」
「ゴハン、ゴハン」
「ちょっと、何よあいつ、普通に話せてる!?」
「リリアーナ様、ここで戦うと目立ってしまうので、私は撤退します。そもそも、私は戦えませんからね」
「あなた使えないわね!!! 」
サヘルは魔法陣を自身の後方に展開し、真っ先に1人で逃げようとしていた。
「ちょっと!1人で帰ろうとしているのよ!!! 私も帰るわよ」
リリアーナはすぐにサヘルの魔法陣に入り、2人はその場から去った。
「くそぉ! 逃げられた!!!! 次は絶対に逃さないからな!!!!」
「ゴハン。ユ、ル、サ、ナ、イ」
「ハァーニィー。戻ろうか」
「ゴハン」
2人のカマキリはゆっくりと地面に降りて行った。
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