灰土とゴウライ
「ん、急に空が暗く、雷だと!?」
灰土は壁の上を目指していた。
「ヒャッハァ!!!!!」
「今、兵士達が負傷者を助けに行っているので、ここで待っていてください」
「落ち着けよ! もう、あいつは」
「あのバカ! あんた達!!! メソメソしてるんじゃないわよ!!! 戦いは始まったばかりだ、森にも侵入がいる状態であたい達が負けちまったら共倒れになっちまう。あんた達、悲しむのはこの戦いが終わった後にしな!!! 菊姫、負傷者を癒し、動ける者は大砲の準備、少しでも時間を稼ぐわよ!!!」
百合姫は兵士達を鼓舞し、兵士達は大砲の準備を始めた。
菊姫の元に兵士が慌てながら来た。
「あの、菊姫様、森側からこちらへ物凄い速さで飛んでくる者がいるのですが、あの方は一体誰なのでしょうか?」
「確認します」
菊姫は森を見ると、大きな羽を羽ばたかせて岩の鎧を身に纏った蝶が向かってきていた。
「私は知りませんわ。あの大きさなら森にいたら分かるはずなのに、あの方は初めて見ました」
「では、撃ち落とした方がよろしいのでしょうか」
「いいえ、あの方をこちら側に引き込む方が良さそうね。そうね。ハチミツで交渉できないかしら?」
岩鎧の蝶は壁を上り、菊姫と百合姫と対面した。
「俺は魔蟲の森、4層目の長、灰土!!! 魔王軍達は俺に任せてくれ。出来れば、兵士達を壁の上に避難してくれると助かる」
「え!? 灰土さんって確か、歓迎会で緑癒さんと漫才していた方ですよね?」
「ああ、あの時は蛹の状態だったからな、やっと羽化することが出来たんだ」
「そうなのですね。それでは、私達は体勢を持ち直す事に専念いたします。みなさん!!! 負傷者を連れて今すぐに壁の上に避難してください!!!」
「あの雷を防ぐとは凄いな。だが、兵士達が消耗してしまっている。それなら」
灰土は風を使い、地面の土を巻き上げ、壁の上空に浮遊する岩の盾を設置した。
「雷から守ってくれたのですね。ありがとうございます」
「あんた、凄く強いじゃない。変な髭って言ってごめんなさい」
歓迎会で灰土は漫才をしている間付け髭を付けて上機嫌で漫才を披露していた。漫才が終わった後、百合姫に直接「あんた何で変な髭つけてるのよ。似合ってないわよ」と言われていたのであった。
「いや、いいさ、似合ってないと言われるのはよくあることだからな!」
「そうなんだ」
「で、この雷を操っているのはあの男で間違いないか?」
「はい、確かゴウライという名前らしくこの軍の指揮官みたいです」
「承知した。俺はあいつを牽制しながらほかの兵士達の足止めをしよう」
「足止めならあたい達も参加」
「いや、危険だから壁を登ってこようとする者達の対処を頼む」
「分かったわよ。でも、あんた1人で大丈夫なの?」
「俺は今とっても気分がいいんだ。それに、今の俺を止められるのは紫水しかいないと思うからな。それでは、俺は思う存分暴れてくる」
「思う存分やってきな!!!」
「私達の分までよろしくお願いします」
灰土は壁から急降下し、ゴウライの後ろにいた魔王軍の上空に一時止まった。
灰土はその場で旋回すると、中央に土が混ざった竜巻が発生し、灰土は土を岩へと変えた。そして、3つの岩が入った竜巻を発生させ、魔王軍の方向へゆっくりと竜巻が動き始めた。
魔王軍の兵士達は目の前の光景が信じられなかった。3つの竜巻がゆっくりと迫り、竜巻に飲み込まれた者達は強風によって体が地面から浮かび、しまいには浮遊している岩に強打し負傷した者、そして、岩と岩に挟まれ絶命する者がいた。
「何だよ。あれは、何なんだよ!!!!」
「撤退!!! 撤退!!!」
「にげろー!!!!!」
兵士達は後方へ逃げ帰った。
「これで、指揮官と兵士達を分断できたな」
すると、上空から雷が灰土目掛けて降った。だが、岩の鎧を身に纏った灰土にとって雷を喰らったとしても痛くも痒くもなかった。
「あいつが雷の元凶のゴウライという奴か。前より、目が悪くなったのか、人型の見分けがつかないんだよな。今度主人様に、相談してみるとするか」
「ほお、あいつ我の雷を喰らってもダメージを負ってなさそうだな。こいつは、我を楽しませてくれそうだな。だが、まず最初に兵士達を助けなければいかんな」
ゴウライは3つある竜巻の一つの前に行くと、槍を構え、竜巻を両断した。
「竜巻を切ったか。あいつに苦戦する理由が分かった。だけど、イデアさんよりかは弱そうだが、強敵と言える強さを持ち合わせているようだ。気を引き締めないとな」
ゴウライはもう一つの竜巻を両断しようとした瞬間灰土は大きな羽を力強く羽ばたかせ強風を発生させ、ゴウライに攻撃した。ゴウライの巨体が浮きそうになり、彼は槍を地面に突き刺し強風を耐え忍んだ。
「流石に止めにくるか、ならば、討つまで」
ゴウライの体が青白く光だし、地面を強く蹴って高く跳躍し、灰土の羽目掛けて槍を振った。
灰土はひらりとゴウライの攻撃を交わすと、岩を瞬時に作り出し、ゴウライ目掛けて岩を飛ばした。
「フンッ!」
ゴウライは落下しながらも槍を振り自身に当たりそうな岩を粉砕した。そして、当たらない岩を踏み台にし灰土に詰め寄った。
「あの体勢でも槍を振るえるのか。って、あいつの移動の仕方かっこいいな! 敵ながら天晴れだ!」
灰土は岩を使った攻撃を止め、風を使った攻撃に切り替えた。
「早くも切り替えてきたか。虫のくせに知能が高い」
「決定的なダメージにはなっていないな。なら、地面に着いた時を狙うか」
ゴウライが地面に着いた時、地面から尖った岩がゴウライの体を突き刺そうとしてきた。ゴウライは体を捻りながら、地面の尖った岩を粉砕した。
「地面も動かせるのか、あいつは風と岩を操る力を持っているということだな。実に厄介な相手だ!!! 我は楽しいぞ!!! こんなに楽しいのはいつ以来だ!!!」
ゴウライは自分が不利な状況を楽しんでいた。
「兵士達は全員後方へ下がったな。あとはこいつだけか。直接やりあうしかないな」
灰土はゴウライの目の前まで降りた。
「ほぉ、我に決定打が出せないとわかると、直接戦いに来たか。お主実に良い! 面白いぞ!!! 我は魔王軍陸軍大将にして、幹部八翼の1人。雷狂のゴウライだ!!!」
「ゴウライ。俺は魔蟲の森4層目の長! 灰土! なぜお前は俺達を攻撃するんだ」
「敵討ちだが、我は暴れられればいい。久しぶりに面白いやつに出会え我は今回の遠征満足している」
「自身が暴れたいが為に軍を動かしたの言うのか!!!」
「そう言うことだ。それでは、始めようではないか」
ゴウライは槍を構えた。灰土は羽にも岩の鎧を纏わせ、灰土の周りには小さな竜巻が5つ発生していた。
そして、ゴウライと灰土は戦い始めた。
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