三翼動く
「零鐘! ピンク色の物体を冷やしなさい!!!」
「ブギィィィイイイ!!!」
零鐘は鼻から冷気を出し、炎燃にくっついていたピンク色の物体を凍らせた。すると、ピンクの物体は固まり、強く叩けば粉々になった。
「姫様、あの物体は炎には強く、冷気には弱くて良かったですね」
「ブッホォ!」
「ブキィイ!」
炎燃が零鐘にお礼を言っていた。
「ピンク色は凍らせばいいみたいだから良いとして、問題はこの壁ね。炎燃の爆発ダメージを負ってもすぐに元に戻っちゃうから厄介ね」
「姫様、ここは一旦引くべきではないでしょうか、この戦いに意味がある様には感じないのです」
「でもぉ、ゴウライ様に任せてって言っちゃったけど、絶華ちゃん達はこの壁を壊すことが出来なくなっちゃったしぃ。それなら、当初のゴウライ様の邪魔に切り替えましょうか」
「今のゴウライ様にはついて行きたくないですよね。それに」
盾護は空を眺めた。
「上空から嫌な気配がしますね」
盾になっている草爛も何かを感じ取っていた。
「ぷきゅうぅ。ぷっきゅ! ぷきゅぅっ!?」
「ん? 空から呪いが降り注いでいるのですか? 私にはそこまでは分かりませんね」
「ぷっきゅきゅ! ぷきゅっきゅう!」
「分かりました。姫様、草爛がここから逃げろと言っています」
「へぇ〜、草爛が逃げろって相当だね。りょうかぁーい。絶華ちゃん達は逃げるとしましょうか!」
「はい! 今すぐに逃げましょう」
絶華は零鐘を抱き抱え炎燃の背に乗り、炎燃は壁と魔王軍から離れた。盾護は、草爛の盾を持ちながら走って後を追った。
「あやつら、逃げたか。まぁ、はなから我の邪魔をすることしか考えてなかったからな。仕方ない、我が直々に壁を破壊するか。兵士達よ! 全身せよ!!!」
ゴウライの号令と共に兵士達は前へ歩み始めた。
「あのー!!! ゴウライ様! 僕はここで援護します!!!」
後方にいたラックルは大きな声でゴウライに伝えた。
「ああ、我の運を上げてくれるだけで良い」
「はい! みなさん! 頑張ってくださいね!!!」
ラックルは大きな旗を振って兵士達を鼓舞した。
「ふぅ、僕は疲れたんで休みます。後のことは任せましたよ」
「承知致しました」
ラックルは部下の一人に後は任せ1人でゆっくりと休むことにした。
リリアーナさんにお願いされてきたけど、エルフに会わずにここに来るなんて後で凄く怒られちゃいそう。嫌だなぁ、魔王様は怖くないけど、オビリオンさんとイデアさんは怖いなぁ。
兵士達は進軍し、虫達の妨害に遭いながらも壁に攻撃を与えていた。そして、虫達は妨害だけでは足止めできないと考え、魔王軍と戦うことを決心した。
「あんた達!!! 主人様が作った壁を壊そうとする不届者達に罰を与えてやるわよ!!!」
「おー!!!!」
「ヒャァッハァ!!!」
「妨害は私達、ミツバチにお任せください。ご武運を」
「そんなに心配することないわよ!!! あたい達ならあんな奴らに遅れを取らないわ!!! 攻撃司令!!! さぁ!あんた達思いっきり暴れてやりな!!!」
百合姫の号令の元、スズメバチ達は一斉に魔王軍の兵士達を攻撃し始めた。
戦況は百合姫が勝っていたが、ゴウライが戦いに参加した瞬間、形勢が逆転されてしまった。
「何なのよ!!! あいつ強すぎよ!!!」
「百合姫さん!!! 撤退してください!!! 何人かはもう」
「くそがぁあ!!! 生き残ってる者は撤退よ!!! 雷を放つ鬼人には戦わないこと!!! 壁の上に逃げなさい!!!」
「ひゃぁはぁ」
羽が傷付いたスズメバチが必死に壁の上に行こうと飛ぼうとしていた。
「おい、頑張れ、こんな所で死ぬな」
仲良しの1人が駆けつけ、彼を抱えながら壁の上を目指した。それに気が付いたもう1人が駆けつた。
「ひゃ」
「大丈夫、後少しだ! 頑張れ! 菊姫様は回復魔法が使えるらしい。お前の怪我なんて菊姫様が治してくれるさ! だから、諦めるな!!!」
3人は壁の上を目指し羽ばたいた。
「なんだ、もう逃げてしまうのか、弱すぎて話にならんな。もう、纏めて殺すか」
ゴウライは槍を天に掲げた。
「天は我の領域。雲よ。我、ゴウライの怒りを現したまえ。『天雷』」
雲が黒くなり、辺りが暗くなった。そして、雷が天から降り注いだ。
「これは!!! 防衛陣 『輝夜の月』」
菊姫の元にいたミツバチは青白い光を放ち、避難していたスズメバチの上を飛び、降り注ぐ雷からスズメバチを護った。
スズメバチの3人組は後少しの所で1人が雷に撃たれた。彼は百合姫の命令に忠実で3人の仲で一番真面目な人だった。
「ヒャァッ!!!!!!!!!」
「くそぉ、くそぉ!!!! ダメだ!もう、あいつは」
2人は無事に壁の上に着くと、菊姫の回復魔法で傷を癒したが、完全には癒しきれなかった。
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