頼もしい助っ人
私は藍介と一緒に黒い化け物と戦っていた。
「しつこい! 何体倒せばいいのよ!!!」
「火玉!!! ふぅー、これで25体目ですかね。魔力は主人様のお陰で有り余ってますが、こうも立て続けに魔法を放つと疲れてきますね」
『主人様! 紫水と合流できました! それで、緑癒さんが主人様に至急お伝えしたいことがあると言っています』
黄結姫から思念が送られてきたが、私は9体の黒い化け物に囲まれているので黄結姫に思念を送る余裕がなかった。
「主人様! 囲まれてしまいました」
「ねぇ、藍介こいつらさっきよりも増えてきてない?」
「雷牢屋 雷牢屋 雷牢屋」
藍介は3体ずつ雷牢屋に拘束した。
「テェゥゥゥススゥゥウェエ」
拘束された化け物達は変な奇声をあげて雷に撃たれていた。
「ホラーゲームじゃないんだし怖過ぎよ!!! 藍介! 私のそばに来なさい!!!」
「はい!」
藍介は私の足元まできた。
「雷光千花」
雷を浴びた花が辺りに咲きほこり、雷牢屋に拘束されていた化け物達はより一層雷に撃たれ続けた。
「よし、これで黄結姫と話せるわね」
私は黄結姫に思念を送った。
『黄結姫! 緑癒の話の前にみんなにこんな化け物は食べないように伝えて! 花茶が食べたらお腹絶対に壊すわよ』
『はーい! それで、緑癒さんに繋げますね』
緑癒から私に思念が送られてきた。
『主人様!!! 僕は紅姫さんと共に洞窟の入り口を守っているのですが、化け物が襲いかかってきて紅姫さんが戦ってくれています!』
『そうなのね。それで、私に伝えたいことって何?』
『それが、この化け物の正体は人間なんですよ!』
『あー、見た目的に人間寄りなのは分かったけど、どうしてこんな姿の化け物になっているの?』
『それは、医神の眼にはドラゴンの呪いの成れの果てと書いてあります』
『成れの果て、ってドラゴンの呪い!? それって、ネルガルとライネルが飲んだやつと同じ呪いってことよね』
『はい。ですが、この僕の浄化の力を持ってしてもここまでの呪いは解呪することは出来なくて、この方達が救われるには殺してあげることしか出来ないのですぅ。僕にもっと力があれば治してあげることもできたのに、とっても悔しいです』
『悔しがっても仕方ないわよ。それにしても、リリアーナは何考えてるのよ!!! あったらこの人たちの分まで思いっきり痛い目に合わせてやるんだから!!!』
『リリアーナ様がこんなこと出来るとは考えられないので、背後に誰かいるのではないでしょうか』
『誰かって誰よ』
『そこまでは、僕にも分かりませんけど、リリアーナ様が気持ち悪いものを作り出すとは考えられないのですよ』
『うーん、それらを考えるのはこの戦いが終わった後にしましょ。今は目の前の敵に集中するのよ!!!』
『 僕だって、頑張って皆さんをサポートします!!! 主人様、負けないでください』
『主人である私が負けるわけないわ。そっちは任せたわよ』
『それでは、失礼します』
緑癒との会話を終わらせて、雷に撃たれていた成れの果て達は灰となっていた。
「藍介、緑癒から聞いたんだけどこの化け物達はドラゴンの呪いの成れの果てなんだって」
「そうなのですね。それでは、彼等を『成れ果て』と呼ぶことにしましょう」
成れ果てを9体倒し終わった後、私と藍介は少しだけ休憩した。
「きつい、きっついわ。ゆっくり湯船に浸かりたい」
「私は読書がしたいです」
『主人様!!! 足止めをしていた魔王軍が動き始めました!!! 百合姫さんと菊姫さん達が壁を壊そうとしている兵士達と戦っているみたいです』
『あー、もう、こっちも成れ果てで大変なのにこっちも動き出すとか、もう!!!! 誰か助けてー!!!!』
『主人様、その、この会話は全ての方に聴かれているので落ち着いてください』
『えっ!? みんなに聴こえちゃってるの!?』
虫籠にいるはずの灰土が私に思念を送ってきた。
「主人様! 俺が魔王軍と戦います」
「蛹の状態じゃ無理に決まってるわ。洞窟にいる子達を守ってあげて」
「今の俺なら戦えます」
すると、森の上空に大きな蝶が現れた。
蝶は力強く羽ばたき、強風をうみだし、蝶は自身の体に鎧のように岩を纏わせていた。
「もしかして!!! 灰土!!!!!」
「主人様! 俺です! やっと外に出ることができました。魔王軍の足止めは俺がやります。だから、他の者達は森の侵入者退治に専念してくれ!」
「灰土さん!? すごいです! カッコいいです!」
別行動をしていた紫水とネルガルは蝶となった灰土を見つめていた。
「やっと来たか〜。遅いんだよ〜」
「うわー!すげーな!」
ネルガルは成れ果てを槍で突き殺し、紫水は水で成れ果ての首を切り落としていた。
ライネルは主人様から貰ったマスクをつけて自身のスキル『怒声』を使い成れ果てを吹き飛ばしていた。
「邪魔だぁぁぁああ!!!」
「テェゥゥゥススゥゥウェエ」
「じゃまだぁ!」
花茶もライネルの真似をして大声を出していた。
「花茶、本当に何もダメージ負ってないよな?」
「うん! ライネルお兄ちゃん声で化け物吹き飛ばせるなんてすごいね!!!」
「本来なら周りも一緒に吹き飛んじまうから、俺の二つ名が獰喉ってついちまったんだよな」
「気に入ってるくせにぃー」
「まぁな! カッコいいからな!」
「うわぁ!!!? ライネルお兄ちゃん上見て!上!」
「上だぁ? ってオイオイ、こいつは敵か味方どっちなんだぁ!?」
上空に岩を纏った大きな蝶が魔王軍の方へ向かって飛んでいた。
「花茶話しかけてみるね!」
「おう、頼むぜ。あんなのとは戦いたくねぇな」
花茶は蝶に向かって思念を送った。
「ねぇ! ねぇ!飛んでる人!!! 花茶の声聞こえる?」
「ん? 花茶ちゃんどうしたんだ、敵に囲まれてしまったのか? それなら、俺が敵を吹き飛ばそう」
「え!? 糸吹きさん!? いつの間に空飛べる様になったの!!!」
「やっと羽化することができたんだ。その、花茶ちゃん。もう、そろそろ、糸吹きと呼ぶのは辞めてもらえないだろうか? あの時は怖い思いをさせてすまなかったと思っているが、あれは君と主人様を危険から遠ざけたい一心でやった訳で」
「それは、知ってるよ。で、糸吹きさんはどこに行くの?」
「魔王軍が動き出したみたいだからな、足止めをしに行って来る」
「そうなんだ! 糸吹きさん頑張ってね! 花茶も化け物沢山倒すね!」
「俺の助けは要らなそうだな、分かった。花茶ちゃんも頑張ってくれ。それじゃあ、俺は行って来る」
「うん! じゃあね!!!」
「おい、花茶、あいつは何だって、敵じゃねぇよな?」
「糸吹きさん、じゃなくて、灰土さんだよ! 虫籠にいた人!」
「あー、あの髭が好きな奴か、あいついい奴なんだよな。漢って感じでよ。って、まじかよ! あの、灰土さんかよ!?」
「そうだよ!」
灰土は真っ直ぐ魔石の壁に向かった。
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