絶華ちゃんと3匹お供とお目付役
頭から2本の角を生やした、ピンク色の髪を高い位置でツインテールしている和服の少女が魔王軍幹部3翼ゴウライの元へ向かっていた。
彼女の後ろには3匹の豚とお目付役の1本の角が生えた大柄な男が彼女について行っていた。
豚は大中小と大きさが別れ、大きな豚は1メートル以上もある金砕棒を背中に担ぎ、赤と白のしめ縄を体に身につけていた。中ぐらいの豚は、青と白のしめ縄を身につけていた。最後に小さな豚はお目付役の男の頭の上に乗っかり、緑と白のしめ縄を身につけていた。
男は口を開き、彼女に話しかけた。
「姫様、今回の演習訓練に参加するのですか」
「盾護は今回の演習訓練どう思う」
「エルフとは関わらない方が良いと思います」
「絶華ちゃんはね、今回の件、絶対にあのクソ女が関わっているんだと思うんだよねー。絶華ちゃんの魔王様を独り占めしているだけで殺したいのに、妻のいるゴウライ様と浮気までしてるなんて、最低だよねー。魔王様が可哀想だよ。絶華ちゃんなら、魔王様を一生幸せにしてあげれるのにさぁ」
「はぁ?」
「だから、今回の演習訓練。絶華ちゃんは参加しようと思うの。だって、クソ女が動いたって事は何か裏があるわけ。それなら、クソ女の邪魔したいよね」
「ですが、私達は今回外されていますよ」
「だから、ゴウライ様に直接会いに行くんじゃない」
「危険ではないでしょうか」
「危なかったら絶華ちゃんの事守ってね。盾護」
「かしこまりました」
「ぶぎゅう!!!」
盾護の頭の上にいた緑色の豚が前足を上にあげた。
「草爛も絶華ちゃんの事守ってくれるのね。ありがとう」
「ブギィィィ!!!」
青色の豚は絶華の足に擦り寄った。それを見た赤い豚は絶華の体に頭を擦り付けた。
「ブホォッブボォ!」
「はいはい、零鐘、炎燃絶華ちゃんに甘えたいのね」
「ブギィィギュィィイイイ!!!」
「ブホォォォォ! ブボォッ!」
零鐘と炎燃は絶華に撫でられてご満悦の様子だった。
「ぷきゅう!ぷきゅう!」
盾護の頭の上にいた草爛は盾護の頭を叩き、絶華の側に行きたいと指差した。
「草爛、分かりましたから叩かないで」
「ぶっきゅぅぅ」
「もう、みんな絶華ちゃんの事好きすぎでしょー!」
絶華は草爛を抱き抱えて、ゴウライに会った。
「ゴウライ様ー! 絶華ちゃんも今回の演習訓練行きたいでーす」
「絶華姫。それはできない話だ」
「えー、どうしてー?」
「どうしてと言われてもできぬ。姫に何かあったら我の首が飛ぶからな」
「ゴウライ様は、絶華ちゃんのいう事聞かないって事かぁー。そうかぁー、それなぁらぁ。絶華ちゃんはお父様に言ってー。ゴウライ様は鬼族の面汚しだから首飛ばしてって言おうかなー」
「我が面汚しだと。姫よその言葉は我への侮辱行為とし、姫であっても罰を与えなければいけないな」
ゴウライが絶華を睨んだ。盾護は殺気を察知しすぐさま絶華の前に行き、草爛は絶華の腕から飛び出ると2メートルにもなる盾に変身した。
ドシンと盾が地面につき、盾護は盾を構えた。
「盾護よ。お前はそんな我儘娘のお目付役など面倒な仕事を任されたな」
「ゴウライ様、落ち着いてください。ここで私とやり合えば周りに被害が出てしまう可能性があります」
「絶華ちゃんはいつでもいいよー」
絶華は炎燃の背中に担がれていた大きな金砕棒を手に持ち、彼女の目には殺意が込められていた。
ゴウライは椅子から立ち上がり体から雷を出し、絶華に強打をくりだした。
盾護はゴウライの一撃を盾で防ぎ、盾からは草が生えた。
「くっ!!!」
「ひゃぁはぁはぁ! そっちからやってきたんだから、絶華ちゃんも攻撃しちゃうねー」
絶華は少女の力とは思えない程の力で金砕棒を振り上げゴウライに攻撃した。
「はぁっ! 姫よ。この程度か!」
ゴウライは素手で金砕棒を弾き飛ばした。
突然、部屋の扉が開いた。
「こら!!!! 何やってるんですか!!! 屋内での決闘は禁止ですよ!!!」
扉からイデアとクティスが現れた。
「イデア様!? どうして、ここに」
「絶華さん達がゴウライさんの元へ向かったと、ゴウライさんの部下の方に言われて走ってきたら、何やっているんですか!!!」
「イデア。我の邪魔をするならお前も無事では済まんぞ」
「ゴウライさんとここで戦ったら絶華さん達が巻き添えを喰らって死んでしまうので辞めてください。そもそも、ここは屋内!!! 喧嘩するなら外でやってきなさい!!!」
「外なら、いいんですか」
盾護がイデアに聞いた。
「ええ、人に迷惑をかけないなら喧嘩してもらっても大丈夫です。それか、3人が暴れたいとおっしゃるのなら、私が相手をしてあげてもよろしいですよ。この頃ストレスが溜まって暴れたいなと丁度考えていたのですよ。私のサンドバッグになってくれるなんてありがとうございますね」
イデアは一瞬、殺気を放った。
「なんで、我が負ける前提なんだ」
「げぇー。絶華ちゃんはパスする。イデア様とは戦いたくなーい」
「姫様が引くのでしたら、私は引きます」
「ゴウライさん、貴方は私と戦いたいですか。そもそも、仕事を片付けたから遊んでいるのですよね?」
「仕方ない、我は一月後の部隊編成を終わらせていないから仕事に戻ることにする。絶華姫、今回の演習訓練には参加できぬからな」
「ちぇー。絶華ちゃんがいたら役立つのになぁ。ねぇ、盾護」
「はい、姫様がいれば百人力!いや、1万人力です!」
「ぶゅう!」
「ブギィィ!!」
「ブホォ! ブホォ!」
「ガウ?ガルゥガ? (あれ? 戦わないの?)」
「それでは、皆さん、仕事に戻ってください! でも、絶華さんは王城を5周してきてくださいね」
「なんで絶華ちゃんがそんな面倒なことしないといけないのよ!」
「どうせ、貴方がゴウライさんに挑発したからこうなったのでしょ。反省してください。盾護さん彼女のお目付役ならば、彼女を止めるべきですよ」
「イデア様、すみません」
その後、絶華ちゃんは3匹の豚とお目付役と共にイデアに言われた王城を5周を完走したのでした。