蝋梅妃、初めてのお泊まり
「今すぐ穴を埋めて帰りなさい!!!」
「貴方達が来るところではないわ」
私は家の周りが騒がしかったので眠かったけど起きる事にした。
「五月蝿いわよ! 何時だと思っているのよ!」
私はパジャマ姿で勢いよく庭に向かった。
庭には虫籠に居る灰土しかいなかった。
「主人様! お目覚めになられたのですね」
灰土は蛹姿の体をブルンブルンと振っていた。
「灰土! 紫水とか他の子達はどこへ行ったの?」
「それがですね。黄結姫様が言っていたのですが、蟻達がここに繋がる穴を掘っていたので蟻達を追い返すって言っていました」
「え!? どうしてそんな事になっているのよ! 灰土! 黄結姫達がいる場所わかる? あっ! 黄結姫がリボン付けてれば場所分かるか!」
私は黄結姫の居場所を突き止めて慌ててその場に向かった。
その場所は家の近くの湖の反対側だった。そして、私は黄結姫達がいる所に着くと、そこには蝋梅妃と黄結姫、紅姫が睨み合っている最中だった。
「ちょっと! なんでこうなっているか誰か説明してよ!!!」
私はつかさず仲に割って入った。
「主人様、我は主人様との仕事をしやすくする為に、4層目に我等の住処と続く穴を作ったのじゃ。それなのに、1層目の長と3層目の長が勝手に入ってくるなと言われたのじゃが、なぜ2人とも自身の持ち場に戻らずここにあるのじゃ? 我に入ってくるなと言う割にはお主達も勝手に他の層に侵入しているではないか」
「私は主人様をお守りする為にいるので勝手に侵入した事になりません!」
黄結姫が応えた。
「それなら、なぜ3層目の長はここで巣を作ってあるのじゃ」
「主人様を見守る為に主人様の家の真上に巣をつくったのです」
「なら、我も主人様をお守りする為に4層目にやってきたのじゃが、なぜお主達は我を追い出そうとするのじゃ」
「勝手に穴を掘ってきたのが悪いのです!」
「そうですわ。貴方は主人様に許可をとっていないでしょ!」
「はい! それを言うなら紅姫も私の許可なく家の真上に巣を作ったわよね」
「主人様、そんなこと言わないでくださいよ」
「ほれ、見たことがお主も我と同じではないか」
「私の意見言ってもいいかしら」
「はい、どうぞお話しください」
「あのね。深夜に大騒ぎするのはやめなさい! 別に穴を繋げるのは構わないけど、実行に移す前に私に報告しなさいよ! 私に報告しなかったから、喧嘩みたいな事になったのよ。私に会いにきてくれるのは嬉しいけど、まず最初にアポ‥‥。事前に報告しなさい! 分かったわね!」
「申し訳ございません」
蝋梅妃はシュンっとした様子で頭を下げた。
「主人様にいつでも会えるようにしておきたかったのじゃ。それに、話し相手も欲しかったのじゃ。主人様、我はここに来る事はいけないのかじゃ」
「いけなくわないわよ。会いにきてくれようと、してくれたのは嬉しいわ。でも、時間を考えなさい」
「はい」
「そうよ。時間を考えて欲しいわ!」
「黄結姫、お口チャック!」
「ふぇ!? お口チャックってどう言う意味ですか!」
「お口を閉じてなさい!」
黄結姫は口を閉じた。
「はいぃ! でも、口を閉じても思念なので話せますね!」
「思念出さない事!」
「えー。そんなー。あんまりですよ」
「蝋梅妃は寂しくて会いにきたなら今日は私の家に泊まりなさい。でも、他の蟻達は家に帰してあげることが条件よ」
「いいのですか! かしこまりました! 皆の者! 仕事は完了した! 家へと帰るがよい!!!」
蝋梅妃の後ろにいた蟻達が皆一斉に帰宅し始めた。
「蝋梅妃! 私の家に行くわよ!」
「はい! 主人様の家でお泊まり。我、他人の家に泊まるの初めてだから緊張してきたのじゃ」
「はぁあああー! ねむーい」
「主人様! 2人きりになるなど危険です!」
「そうですよ! 勝手にここまで穴を掘ってきたのですよ! 危ないですよ」
「はい。それなら、2人も私の家に来なさい」
「はぁーい」
2人は蝋梅妃が私の家に泊まる事を納得していなかったが、渋々私の家まで付いてきた。
「これが、主人様の家。立派な家じゃ! 我の寝室に座布団欲しいのじゃ」
「明日作ってあげるから、ほら、もう寝るわよ!」
私は蝋梅妃の布団を庭に出してあげて、黄結姫と紅姫の分の布団も準備した。そのせいで、庭は布団で敷き詰められていた。
「それじゃあ、色々言いたいことがあっても明日っていうことで! おやすみなさい!」
私は布団に潜り込み、枕に頭を乗せていつでも寝れる状態になった。そして、いつの間にか、私は爆睡していた。
黄結姫と紅姫それと蝋梅妃は3人で小声で会話をしていた。
「主人様の家、布団、生まれて初めての体験じゃ!」
「しぃー。静かにしてください。主人様が起きちゃいます」
「すまぬ。この布団という物。フカフカして気持ちいいな」
「主人様が作ってくださったのですから当然です」
「お主らと会話できるのも楽しいのじゃ」
彼女達の会話は主人様が起きるまで続いたのでした。
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