イデアの報告
私が家に帰ると白桜と青雷が玄関に走ってきてお出迎えをしてくれた。
「主人様! お帰りなさい! あたしずっとお勉強してたの! 褒めて!褒めて!」
白桜は私の肩に飛び乗ると私の頬に頬ずりをしてきた。
「白桜偉いわね。どのぐらい勉強進んだか確認しないとね」
「僕はイデアおじちゃんのお仕事のお話聞いてたよ!」
イデアおじちゃん? あっ!!! もう連絡できる日か、すっかり忘れてたわ。
「そうなのね。イデアさんはもう連絡切れちゃった?」
「ううん。まだ、映ってると思うよ」
私と青雷は寝室に向かった。そして、私はイデアに忘れていた事を謝り彼の話を聞くことにした。
「魔王軍幹部会議がありまして、そちらで魔蟲の洞窟での経緯を話しました。ネルガル君とライネル君が死亡したと伝えて。そしたら、リリアーナが自分のせいだと泣き出し、魔王様とゴウライさんとラックル君が敵討ちしたいと言い出したりして大変だったんですよ」
「敵討ちってそっちがちょっかいかけてくるからいけないんじゃない。もし、貴方達の軍隊が来たらその時は容赦なく殺すわよ」
「えぇ、凪さんの言う通りです。まぁ、軍隊派遣は白紙にしましたし、それでもゴウライさんが何度か申請が出されましたが全て却下しましたからね」
「それなら、ネルガルとライネルは実際は死んでいなかったってことにすればいいんじゃない?」
「いえ、究極霊薬をドーレーラムさんにお願いしたのですが、解析には時間がかかる為、仮にネルガル君とライネル君が死んでいなかったとしたら究極霊薬を渡したリリアーナはどう考えると思いますか」
「死んでなくてよかったなんじゃない? 2人が死んだって聞いて泣き出したんでしょ」
「いえ、あれは悲劇のヒロインを気取りたかっただけだと思いますよ。それに、彼女は会議の次の日に私に会いにきて2人の死んだ時の状況を詳しく知りたいと詰め寄ってきましたからね。空瓶が落ちていたと言ったら、その空瓶はどこにあるのと聞かれたので、私は魔蟲の洞窟にあると答えました」
「空瓶を気にするようなら彼女は黒に近いわね。やっぱり、あれには何かあるってことなのね。うん、そうなると2人が生きている事を知られたら、リリアーナなら2人を殺しにくる可能性があるかもしれないと言うことになるわね」
クティスは尻尾を振りながら画面いっぱいに近寄ってきた。
「ガウウガ!!!(僕が殺そうか!!!)」
「クティスはなんて言っているの?」
「えっと、僕が殺そうかと言っていますね」
「リリアーナを殺すってこと?」
「ガウ!(うん!)」
「うんと言っています」
「クティス、それは危ないからやめておきなさい」
「ガウルゥ(分かったよ)」
クティスはショボンと頭と尻尾が下がってしまった。
「イデアさんとクティスには危ない橋を渡せるわけないでしょ。それに、私が直接あいつにギャフンと言わせたいから殺されちゃうと何もできなくなっちゃうじゃない」
「リリアーナに直接会いに行くと言うことですか?」
「それが出来るようになるまで時間がかかると思うけど、それでも、やってやるわよ! 最初はこんな所に置いて行かれて虫達と仲良くなんてできないと思っていたけど、なんやかんやでめっちゃくちゃ仲良くなっちゃったし、今じゃ私にとってあの子達はこの世界の家族にみたいな存在だからね。虫達にした事を思い知らせてやりたいと考えるようになったのよ」
「凪さんは虫達を大切にしているのですね」
「当たり前じゃない、独りで寂しい思いをしている私を笑わそうとしてくれたり、今じゃ一緒に遊んでバカみたいな事をして笑いあっているんだから」
「そうですね。虫達が羨ましいです。私も凪さんと遊んで笑いあいたいです」
「遊びたいなら、イデアさんがこっちに来たら何かパーティーでもしようかしらね。紅姫がパーティーやりたがっているのよ」
「私の為のパーティーを凪さんが主催してくれるのですか!!!」
「うん、そうだけどパーティーは嫌いだった?」
「いえ! パーティー大好きです!!! あの、5日後私は休暇を取る事が出来たので、魔蟲の洞窟に訪問してもよろしいでしょうか」
「いいわよ」
「ありがとうございます! それで、凪さんは何か欲しいものとかありますか?」
「欲しいものね。今は無いかしら」
「そうですか、凪さんはケーキはお好きですか?」
「ケーキ! もちろん好きよ!」
「良かったです。ケーキを買って行こうかと考えていましたので、凪さんはどんなケーキが好きですか?」
「チョコレートケーキが好きよ」
「かしこまりました。チョコレートケーキを多めに買っていきますね」
「ありがとう。この世界に来てケーキを食べる事が出来るなんて嬉しいわ」
「後で給金を上げてあげないといけませんね」
「給金?」
「いえ、何でもありません! あっ、凪さんに謝らないといけないといけない事があったのを忘れていました」
「何を謝るの?」
「凪さんが作ってくれた荷車なんですが、ドーレーラムさんに究極霊薬の解析をしてもらう事を条件にドーレーラムさんに渡してしまったのです」
「謝ることなんてないじゃない、荷車は貴方にあげたものなんだから、自由に使ってもらって大丈夫よ。でも、なんでドーレーラムさんは荷車を欲しがったのかしら?」
「それは、凪さんが作った荷車に付与されている魔法陣を解析したいみたいでして、何でも兵士を乗せて飛行できていたのが今の魔道具では実現不可能と仰っていましたね」
「そうなんだ、私は作りたいものを考えるだけで作れるから仕組みなんて知らないのよね」
「そうなのですね。それでは、他の報告としては」
イデアとは2時間も話をした。こうやって話してみると彼は紳士的なイケメンね。どうしてあの時、変態行動ばっかしてたのかしらね。今の彼が初対面なら、私少しだけの彼にときめいちゃったかもね。でも、あんな事する奴とはお付き合いしたくないわね!
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