獣は話す
凪さんから貰った懐中時計を言われた通りに使ってみたのですが、何故でしょう。あの時はすぐに凪さんの顔が現れたのですが、今は何も映っていません。壊れてしまった? もしかして、遠過ぎて連絡できないという可能性。あり得ますね。はぁー、凪さんに会えるのを心待ちにしていたのに、はぁー。
イデアはクティスの胴に体を埋めた。
一方、魔蟲の洞窟にある凪の家では寝室のタンスの中からバイブ音がなっていた。
青雷は音が気になり主人様の寝室に向かうとタンスから音がででいた。
「ねぇちゃん! タンスが鳴いてるよ!!!」
弟に呼ばれ白桜は数学の勉強を中断して主人様の寝室に向かった。
「タンスが鳴いてるってそんなわけないじゃない」
「ほら! タンスが鳴いてるんじゃん!」
「何で鳴いているの? ここから音が聞こえるわね」
白桜はタンスの右側の引き出しを開けてみた。すると、月の模様の懐中時計がブルブル震え続けていた。
白桜と青雷はタンスから懐中時計を取り出すと机の上に置いて観察していた。
「ねぇちゃん何だろうこれ?」
「分からないわよ。それにしても、五月蝿いわね。止めるにも主人様は森へ行っちゃったし、適当に触ってみる?」
「主人様に怒られないかな?」
「このままなり続けたら、勉強の邪魔になるじゃない仕方ないことなのよ。という事で、適当に触ってみましょうか」
「ただ単にねぇちゃんが触りたいだけなんじゃないの」
白桜は懐中時計を触り始めた。数分間触っていたら突如、懐中時計から光だし、誰かの部屋の風景が現れた。
「何これ!?」
「すごい!!! 誰かの家なのかな?」
映し出された部屋の奥にはクティスがクッションの上で眠っていた。
「ねぇちゃん!奥にいるのクティスさんじゃない?」
「そういえば、主人様イデアにこれと同じの渡してたわよね。もしかして、通信機!? 主人様は本当に凄いお方だわ!!!」
そして、イデアはクティスの胴に体を埋めていたところ聞き覚えのある声に気が付き、声の方向を確認した。懐中時計から映し出された映像は白い蜘蛛と青い蜘蛛がデカデカと映し出されていた。
「うわっ!!! ビックリしましたよ。えーと、白桜ちゃんと青雷君で間違い無いでしょうか?」
「そうよ」
「あってるよ!」
「あの、凪さんはどちらにいらっしゃいますか? 凪さんと話したいのですが」
「主人様なら森へ探検しに行ったよ」
「多分、夕方になるまで帰って来ないんじゃ無いかしら?」
「森へ探検‥‥。凪さんは私の事を忘れてしまっていたのでしょうか」
やっと凪さんに会えると思っていたのにこれはあんまりですよ!!!
「タンスの中に入ってたから忘れられてたんじゃない? あんたもしかして、あんな真似しておいて主人様に好かれていると勘違いしてるわけじゃないわよね」
白桜ちゃんの言葉は棘がありすぎるのですよ。私だって、第一印象が悪いことぐらいわかっていますよ。それを挽回する為に、プレゼントを選びに帰ったのですから、勘違いなんてしていませんよ。
「勘違いなどしていません。今回の連絡では幹部会議の内容を話したかったので連絡したのです」
「へぇー、あたしはてっきり遠く離れてしまっても主人様に会あると思ってルンルンで連絡してきたんだと思ってわ」
なんと、私の心理を見透かすとは、彼女はなかなか手強いですね。そもそも、彼女は凪さんに執着しているような気がしますし、凪さんがいる時といない時とで人に対する態度が全く違いますね。
「それもありますが、重要なのは会議の内容を伝えることなので凪さんを連れてきていただけないでしょうか?」
「あたし達になんのメリットがあるのよ」
「それでしたら、貴方達が欲しい物を買ってきてあげますよ」
「欲しいものは主人様にお願いすれば何でも手に入るから報酬としては微妙よね」
「それなら、主人様が帰ってくるまで色々なお話聞かせてよ!!! 魔王軍幹部ってどんな仕事するの!」
青雷君は私の仕事内容が気になるようですね。ん、これは、2人の遊び相手になってあげたら凪さんの私の評価は上がるのではないでしょうか!!! それに、友好関係を築く事で凪さんの情報を聞き出すこともできるようになるかもしれなませんね。白桜ちゃんはガードが固い印象ですが、まだ子供、欲しい物があるなら凪さんにいえば何でも手に入ると仰っていたので、これは凪さんの力の情報を伝えてしまったとなってしまいます。白桜ちゃん、詰めが甘いですね。青雷君は純粋そうな子なので懐柔する余地はありますね。
「青雷君が私の仕事が気になるのでしたら、仕事内容を話しましょうか?」
「いいの! 魔王軍幹部ってなんかカッコいいよね! 僕達にとっては長ってことになるんでしょ!」
「えぇ、そうですね。それでは、私の仕事の話をいたしますね」
「やったー!!!! イデアおじちゃんありがとう!」
「ぷっ!!! イデアおじちゃんだって、そうよね。おじちゃんよね!!!!!!」
「青雷君、イデアおじちゃんではなくイデアお兄さんと呼んでください」
「でも、イデアおじちゃんはとっても長く生きてるんでしょ?」
「えぇ、まぁ、巨人がいた時代から生きてますからね」
「巨人!!! それって母さんよりも大きい?」
「そうですね、紅姫さんと同じぐらい大きい人間と言ったところですね」
「そうなんだね! それならやっぱり! イデアおじちゃんだよ!」
白桜は机でしょうか? 机の上で笑い転げていました。そんなに、笑わなくてもいいじゃないですか!
「青雷あんた最高ね!!! 笑い過ぎてお腹痛くなってきちゃったわ」
「それでは、仕事内容を話しますね!」
「イデアおじちゃんはどんな仕事をしているのかな! 僕楽しみ!」
「あたしは勉強あるから戻るわね」
「ねぇちゃんイデアおじちゃんの話聞かないの?」
「興味ないもの、それじゃあ」
白桜はどこかへ行ってしまいました。その後、凪さんが帰ってくるまで、私は青雷君に普段私が行っている仕事内容を教えてあげました。
ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。