獣の湯浴み
私は凪さんに連絡できるまでに自身の仕事を終わらせました。他にも、ネルガル君とライネルくんの両親に話をつけ2人の葬式を行ってもらったり、ドーレーラムさんに荷車を奪われてしまいましたが、究極霊薬の分析をお願いすることができました。あの引きこもりの彼が、私の屋敷まで来て荷車を取りに来るなんて驚きましたよ。まぁ、これで究極霊薬の本当の正体が分かればいいのですが、分析には時間がかかりそうですね。
イデアは寝巻きを着て寝室で寛いでいた。部屋には豪華な家具が揃えられ、ベッドの隣の机には横並びの透明な箱の中には人間の頭蓋骨が5つが入っていた。
朝日を浴びながら、イデアは箱から頭蓋骨を取り出すと優しく柔らかい布で頭蓋骨を拭いていた。
すると、コンコンと寝室のドアを叩く音がした。その後、女性の声が室内に響き渡った。
「イデア様湯浴みの準備ができました」
「今行きます」
イデアは寝室から出ると体を洗いに大浴場に向かった。イデアは大浴場に着くと、更衣室で寝巻きから濡れてもいい服に着替えた。
大浴場にはイデアが雇っているメイド計10人が揃っていた。メイド達にとって大変な仕事をしなければならない。
イデアは右目に付いている仮面を取り外すと、仮面は姿を変え5つ眼の顔が頭蓋骨の獣が現れた。
「ガウガウガバァ!!!!(お風呂なんか入らないから!!!!)」
「凪さんと連絡する時、貴方の体が汚いままでいいのですか!!! メルト! エーデル! クティスの頭を持っていてください! 」
「はい!」
ウサギの人獣のエーデルと羊の人獣のメルトはクティスの頭を両手で掴むとクティスは暴れ始めた。
尻尾を振ってイデアを攻撃し、メイド達には手加減をしていたが、メイド達にとっては手加減されていたとしても、彼女達にとっては命懸けの戦いを繰り広げていた。
「サファイ! こちらに石鹸水を!!!」
魔人のメイドはエルフのメイドに石鹸水を渡した。エルフのメイドはクティスの体に石鹸水をかけた。
クティスは体を振るわせ石鹸水を辺りに飛ばしていた。そしたら、桶でお湯を運んでいた魚人のメイドがバッシャーンと桶を豪快に飛ばしながら転んだ。
「あっ! メテラールトなに転んでいるの!」
「ごめんなさーい」
「クティス!!! 暴れないでください!!!」
「エーデル! メルト! 踏ん張りなさい!!!」
クティスは石鹸水を浴びメイド達に体を洗われていると、クティスは全身泡だらけになった。メイド達は必死に体を洗っていたが、小人のメイドが泡泡状態のクティスの泡の中に埋もれてしまった。
「ふぇええええ!!!! 誰かー! たすけてぇ!!!」
「ターレが泡の中に入ってしまったみたいだわ!」
「何やっているんですか! 皆さんターレさんを見つけてください!」
「もう、これしかないですわ! 水玉!!!」
エルフのメイドが水魔法である水玉をクティスにぶつけた。
水玉がクティスの体に触れると弾けて水玉から大量の水が飛び出た。
「ハックション!!! うぅ、寒い」
救出された小人のメイドは豪快なクシャミをした。
1時間の激闘の末、クティスの体を洗うことに成功したのであった。
「皆さんありがとうございます。クティスがいつも以上に暴れたので特別手当を出しますね」
特別手当が貰えると10人のメイド達は喜んでいた。
エーデルはイデアに質問をした。
「イデア様! 今日はイデア様が待ち望んでいた日ですよね! 魔蟲の洞窟の主人様ってどんな素敵な方なのですか!!!」
「彼女はとても強く、そして、優しい心と美しい魂の持ち主なのですよ」
「洞窟の主人に一度お話をしてみたいですわね」
「チェルねぇどうして話してみたいの?」
エルフのメイドに魚人のメイドが首を傾げながら聞いた。
「イデア様の奥様になっていただくお方。私達は彼女に仕えなくてはいけません。なので、どんな女性なのか知っておく為にお話がしたいのですわ」
「それもそうかー。イデア様が言う優しい人ならいいなー」
「それでは、私はお風呂に入るので皆さんは元の業務に戻ってください」
「かしこまりました」
10人のメイドはそれぞれの担当している仕事に戻っていった。
イデアは体を洗い、仕事着に着替え執務室に向かった。そして、姿見の前に向かい自身の服装を観察していた。クティスはというと、クティス専用クッションで体を丸めて寛いでいた。
うーん、これは普通すぎますかね? もっと、かっこいい服の方がいいのでしょうか? 色気があった方がいいですかね? 胸元開いた服とか着てみますか? 着飾り過ぎは禁物。凪さんの服の好みが分からない以上、冒険するのは危険ですよね。今回は、普段通りでいいですね!
朝一番に凪さんに連絡をしたかったのですが、メイド達に朝一で連絡するのは迷惑だと言われてしまい、仕方なく午後まで待ちました。そして、やっと凪さんの姿を見ることができる!!! はぁー!!!! なぎさーん!!!! 早く凪さんの声が聴きたい!!!
お昼は過ぎましたね。よし、凪さんに連絡しましょう!!!
10日間の有休も申請済みですし、直接凪さんに欲しいものを聞くのもいいかもしれませんね。それにプラスしてケーキを沢山持っていけば、凪さんの好感度が上がること間違いなし!!!!
「クティス、凪さんに連絡しますよ!」
「ガウ! ガウ!(早く! 早く!)」
「それでは」
イデアは凪から貰った懐中時計の月の模様を押した。すると、懐中時計から透明のスクリーンが出現したのであった。
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