夢の中の男
私は灰土の強烈な思念で起きて、2人から悪夢を見たと言われた。紫水と紅姫、白桜も悪夢を見たなんて、なんか怖くなるのわかる気がするわ。
緑癒と灰土を撫でてあげていると、黄結姫が庭へやってきた。
「主人様、おはようございます。灰土さんが大声をあげていましたが、何かあったのですか?」
「それが、緑癒と灰土、他にも紫水、紅姫、白桜が悪夢を見たらしいのよ」
「悪夢ですか」
「黄結姫は悪夢みた?」
「いいえ、私は夢を見ませんでしたよ」
緑癒が私と黄結姫の会話に入ってきた。
「黄結姫さんは悪夢を見ていないのですね。藍介さんと黄結姫さん、悪夢を見ない共通点があるのでしょうか?」
「それなら、逆を考えた方がいいんじゃない? ほら、貴方達の悪夢を見た共通点を探すのよ。そう言うことなら、共通点は夢の中の人間が死ぬことなんじゃない?」
「それも、そうなのですが、灰土さんが見た人間は鎧を着た騎士だったみたいで、僕の夢には騎士という単語は出ましたが、騎士本人は登場していないのですよね。それに、さっき主人時にお話ししましたが、紅姫さんは国が滅ぶ夢。白桜ちゃんは汚い人に殺される夢。共通点があるのか分からないですよね」
「それなら、前に緑癒が言っていた自分の前世夢ってことなんじゃないかな?」
「そうですね。僕の夢は前に話した人物のその後の夢でした。でも、僕1人が見るならまだしも皆さんが見るのはおかしくないですか?」
「まぁ、それも分かるけどさ。でも、それしか無いんじゃない?」
「俺の前世かぁ、あんな終わり方なのは、腹が立つな。今の俺なら、あいつらを徹底的に叩きのめす事ができるというのに、夢の中の俺は貧弱すぎるぞ!」
「そういえば、生き埋めで死んだと言っていましたが、具体的にどんな最後だったのですか?」
「確か、騎士が丘の上で人間を何人が剣で切り裂いた時に、町が燃えているのが見えて急いで街に戻ろうとしたんだ、その時に彼の足元に穴が現れ、彼はそのまま穴に落ちてしまったんだ、戦っていた時には穴なんてなかったのに、急にだ、急に穴の中に落ちたんだ。それで、1人の男が笑いながら彼にこう言った『これが、人類最強の騎士の最後。こんな古典的な罠にかかるなんてお前バカだろ。まじ、ウケるわ!』と、思い出すと余計に腹が立ってくるな。それで、彼は土属性魔法によって生き埋めにされ、死んでしまったんだ」
「うわっ、嫌な男ね」
「主人様、こんな人間ぶん殴ってやりたいです」
「まぁまぁ、これは夢の話ですから灰土さんの夢に出てきた人間をぶん殴ることは出来ませんよ。そうだ、その人どんな顔していましたか?」
「えーと、顔かぁ、俺の場合はいけすけない男の顔はよく見えなかったんだ、声は少し低い感じの男の声だった事しか分からないな」
「うーん、夢の中の僕を殺した人の可能性も考えたのですが、それだけじゃ分からないですね。あの、夢の中の僕を殺した人間の名前はバーラーガと言うみたいなのですか、この名前を聞いて何か心当たりはありませんか?」
「バーラーガ、俺は知らないな」
「バーラーガねぇ」
すると、紅姫、藍介、花茶、白桜が蜘蛛糸で編まれた大きな網に狩で捕まえたであろう、鳥を引き摺りながら庭へやってきた。
「こんなに沢山の鳥どうしたのよ!」
「これは、朝食で作る唐揚げで使う為に狩で捕まえた鳥です」
「朝から唐揚げは胃もたれしそうだわ」
「花茶沢山鳥さん倒したよ!!!」
「花茶様、あたしより弱いと思ってたけど、まぁまぁ、強いじゃない」
「丁度いいですね。皆さん、バーラーガと言う名前の人間を知っていますか?」
「バーラーガ!? 夢の中であたしを殺した人間じゃない!!!」
「えっ!? 白桜ちゃんの夢にバーラーガが現れたのですか!?」
「もしかして、緑癒様はバーラーガに殺された夢だったの!?」
「えぇ、バーラーガに首を切り落とされて夢の中の僕は死んだのです」
「うそっ、こんなことってあるの!? 緑癒と白桜の夢の中に同じ人物しかも、命を奪った人間が同一なんて。藍介、こんな事ってあり得るの?」
「うーん、流石に私でも分かりませんよ。少しだけですが、夢について調べてみたのですが、この現象と同じ事例は書かれていなかったのですよね」
「藍介でも分からないか」
「でも、緑癒さんと白桜が同じ人物に殺された。うーん、例えば、悪夢を前世の自分と置き換えると、バーラーガに殺された人達が一斉に殺させた時の夢を見たと言うことになりませんかね?」
「私は殺されてはいなかったのですか」
「バーラーガに国を滅ぼされたと言うことでしたら話が繋がりませんか?」
「う〜ん、それだと〜、俺だけは当てはまらないな〜」
「うーん、でも、僕と白桜ちゃんが一緒の人間に殺されたとなると藍介さんの例えも良い線だと思うのですか」
「そうね、考えても分からないなら今は分からないままで良いんじゃないかしら? もし、その悪夢が自分の前世だったとしても、今の自分には関係のないことだと思わない?」
「それも、そうですが、気にはなるのですよね」
「まぁ、まぁ、前世を深く考えすぎるよりも、前向きに今の人生を楽しんだ方がいいわ!」
「それも、そうですね。今の人生を歩んでいるのは私達自身、それなら、前世の自分よりも楽しい人生を送った方がいいですもんね」
「花茶は何の話かよく分からないけど、楽しいのは大好きだよ!!!」
「そうですわね。それなら、私は前世の私みたいにならないように努力いたします!」
「あたしは変な男には絶対に関わらないようにするわ! 主人様、側にいてもいい?」
「いいわよ。来なさい」
白桜は私の肩に糸を飛ばすと、私の肩に登ってきた。
「怖い話はこれにて終了と言うことで、ネルガルさんとライネルさんにギャフンと言わせるとっても美味しい唐揚げの準備をするので、皆さん料理を作るのを手伝ってもらえませんか」
「花茶手伝う!!!」
「あたしも唐揚げ食べたいから手伝うわ」
「唐揚げ、どんな味なのでしょうか」
「紅姫さん食べたことないんでしたよね。鳥のお肉がとっても美味しいのですよ」
「えっ、黄結姫さん唐揚げ食べたことあるの?」
「藍介さんの料理の味見をした時に頂きました」
「俺は〜、魚君と魔人君を〜、起こしに行ってくるね〜」
「僕も呪いが完璧に解呪できたか確認したいので、紫水、ついて行ってもいいですか?」
「いいよ〜」
紫水と緑癒はネルガルとライネルが暮らしいている家へと向かった。彼等は今私の家から少し離れた場所に家があり、ここにいる間はそこで暮らしてもらうことになっていた。
「それじゃあ! 料理をみんなで作りましょうか!」
庭で調理できるように屋外用キッチンを作ってみた。みんなで料理作るってキャンプみたいでワクワクしてきちゃうわよね!
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