悪夢を見た僕達
僕は悪夢から覚め、まず最初に首を確認しました。うん、首は体から離れていませんね。夢だとしても、あれは怖かったですよ。まだ眠いですが、眠るのが怖くなってしまいました。こういう時は教会に行き我等の神主人様に祈りを捧げる事にしましょう!
僕は主人様から貰った大切な帽子を被り5層目に建てられた教会へ向かいました。向かう途中、4層目を通ったので、少しだけ主人様を一目みようと思い、主人様の家に少しだけお邪魔しました。主人様は、布団を蹴飛ばしてお腹を出した状態で爆睡していました。主人様、それじゃあお腹冷えちゃいますよ。
僕は主人様が蹴飛ばしたであろう掛け布団を主人様に掛け、教会へ向かおうとしたら、湖から紫水が泳いで僕の元へやってきました。
「緑癒〜、こんな朝早くからどうしたの〜?」
「えっ、紫水、早起きできるのですか!?」
「ちょっと〜、思い出したくない思い出が夢で出てきてさ〜、眠ろうとしても〜、怖くて眠れないから〜、泳いでた〜」
紫水も悪夢を見たのですね。
「紫水も悪夢を見たのですね。僕も悪夢を見て眠れなくなってしまったので、教会へ行き主人様に祈りを捧げようかと思いまして」
「わざわざ教会に行かなくても〜、主人様の家に行けばいいんじゃない〜?」
「それと、これは少し違うのですよ。それに、主人様はお疲れの様でゆっくりと休んで貰いたいのですよ」
「そうか〜、じゃあ俺も〜、一緒に教会に行ってお祈りしてみようかな〜」
「いいですね。それじゃあ教会へ向かいましょう」
僕と紫水は教会に着くと、普段この時間に教会には誰も居ないはずなのに今日は先客がいらしていました。
「あれれ〜? どうして〜、紅姫さんと〜白桜ちゃんが〜、教会にいるの〜?」
「緑癒さん紫水、おはようございます。 ちょっと怖い夢を見てしまって、私が眠れなくなっているのを白桜が教会へ連れてきてくれたのです」
「あたしも怖い夢見て、最初は主人様の側に居たんだけど、主人様の寝相がいつも以上にひどいからお母様の所に避難したのよ。そしたら、お母様も眠れないっていうから、教会でも行ってみるってなったのよ」
紅姫さんと白桜さんが怖い夢を、こんな偶然ってあるのでしょうか?
「2人とも怖い夢見たんだ〜、俺たちと一緒なんだね〜、俺も思い出したくない思い出が〜、夢で出てきてさ〜。眠りたいのに眠るのが怖くなっちゃったんだよね〜」
「僕も悪夢を見たのですが、こんな偶然ってあるのでしょうか? 皆さんは具体的に何の夢を見たのですか?」
「あたしは汚い人間に殺された夢よ」
「私はその、夢の中の私が築いた国が滅亡するという夢でした」
「俺は〜、自殺する夢〜」
「皆さん、物騒な夢を見たのですね。僕も首を切られて死ぬ夢でしたよ」
「うわ〜、何これ〜、全員死ぬ夢を見たって事〜。怖すぎるんだけど〜」
「あたしなんて、鳥肌がたったわよ」
「緑癒さん、悪夢を見せる魔法ってあるのかしら?」
「藍介さんなら知っているかもしれませんね」
「魚君と魔人君が来たら〜悪夢を見たっていうことはさ〜、2人が俺達に悪夢を見せたんじゃない〜? それなら、俺達が〜、一斉に悪夢を見たのも頷けるんじゃない〜?」
「彼等にその様な魔法を使えるでしょうか?ネルガルさんと戦った事のある紫水は彼が悪夢を見せる魔法が使えると思いますか?」
「いや〜、無理だと思うよ〜。でもさ〜、そう考えないとこの状況意味わからないじゃん〜」
「紫水のいうことも分かりますが、一度本人達に確認してから決めたほうがよろしいかと思いますわ」
「あたしは藍介様に悪夢の魔法について聞いてからのほうがいいと思うわ」
「その前に僕と紫水は主人様へ祈りを捧げに来たので少しだけお祈りをしてもよろしいですか」
「そうだったね〜。祈りが終わったら〜、藍介を起こしに行って話聞こ〜」
僕と紫水は主人様の石像の前に向い、祈りを捧げました。
そして、僕と紫水、紅姫さん、白桜ちゃんと共に藍介さんの住処に向い、藍介さんを叩き起こして悪夢を見る魔法について話を聞きました。
「悪夢を見る魔法ですか? 精神系の魔法なので闇属性の方なら魔法を発動する事ができると思いますが、遠くでそれぞれ寝ていてのに悪夢を見る。これ程の魔法範囲を指定するとなると、莫大な量の魔力が必要なので、1人では不可能です。ましてや、ネルガルさんとライネルさんは魔力量は普通だと思うので、彼等の魔力量を考えてみると彼等が100人いたとしても、魔力切れで長く悪夢を見せる事などできないと思いますし、そもそも、私は悪夢なんて見てませんよ」
「う〜ん。じゃあ〜、藍介は俺達が〜、偶然死ぬ夢を見たって事〜?」
「そうとしか考えられないのですよね。それか、魔王軍との戦いで怖い思いをしたらその反動で悪夢を見たっていう可能性も」
「あたしとお母様は戦いに参加してないのよ」
「白桜の言う通りね」
「主人様が目覚めたらお話してみましょうか。そうだ、怖くて眠れないのであれば折角ですし、体を動かしてみませんか?」
「藍介〜、追いかけっこでもするの〜?」
「畑の収穫を手伝ってほしいのですよ。それと、鳥を捕まえてほしいなと」
「もしかして、藍介様唐揚げ作ってくれるの!!!」
「えぇ、ネルガルさんとライネルさんに私の手料理を振る舞いたいと思いましてね。お前なんかに料理なんてできるのかやっとでも言う様な顔つきでしたので、2人をギャフンと言わせたいのですよ」
「その話のったわ!!!」
「私も唐揚げ食べてみたいですわ」
「やる事ないからいいか〜、今日の主人様の護衛は〜、灰土に任せる事にしよ〜」
「僕は主人様の側に行こうかと思います。灰土さんは動ける範囲が限られていますので、僕が主人様の護衛をしますね」
「緑癒じゃ〜、すぐに敵にやられちゃうよ〜。不安だな〜」
「紫水、何を言っているのですが、僕は護衛と言っても主人様を叩き起こして、主人様に敵と戦ってもらえばいいのですよ」
「ねぇお母様、もしかして、緑癒様ってあたしよりも弱いの?」
「えっと、緑癒さんは戦えませんが、傷を癒す事のできる唯一と言って良いほどの力をお持ちなので、弱いとかではないような」
「でも、戦えないんでしょ?」
「まぁ、違う形で戦っていると言っても」
紅姫さんは必死に僕を庇ってくれていました。
「戦えないんじゃ護衛失格よ!」
グハァッ!!!
僕の心に純粋な子供の言葉が深く刺さったのでした。
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